改正債権法8 (詐害行為取消権1)

詐害行為取消権

債権者取消権とは、債務者の責任財産を保全するための制度です。抵当権や保証人などの担保を持っていない一般債権者が、債務者が無資力になって自分の金銭債権を回収できなくなる事態を防ぐため、債務者の財産管理権に介入、詐害的な行為を取り消して散逸した財産を取り戻して、それによって債務者の財産を守り、自己の債権の強制執行に備えることができるというものです。

 

 経緯

「否認権」と詐害行為取消権

似た制度として、破産手続における否認権(破産法160条以下)があります。否認権とは、破産管財人の行使できる権利であり、破産者が本来債権者たちに公平に分配されるべき財産を贈与等の否認行為によって流出させた場合に、否認行為を否定して、その財産を取り戻すことができる権利です。詐害行為取消権が、債務者の詐害行為を取り消して散逸した財産を取戻し、債権者の責任財産とするものであるのに対し、否認権は、破産者の否認行為を否定して散逸した財産を取戻し、債権者全員に分配するための財産とする点で、働きがよく似ています。また、詐害行為取消権が債務者が無資力であるときに行使される権利であり、否認権が破産者が破産したときに行使される権利である点で、実際に適用される場面も隣接しています。

「否認権」とのバランス

詐害行為取消権と類似の制度である「否認権」は、平成16年破産法改正に伴い整理され、要件が明確化・厳格化されました。破産法改正が行われたのは、経済的危機にある債務者の取引相手が否認権のせいで萎縮し、債務者の再建の道が閉ざされてしまうことがないようにという考慮からでした。類似の制度ですから、この考慮は、詐害行為取消権の場面でも同じように必要です。また、類似の制度であるにもかかわらず、手続きや効果の点で否認権との平仄も欠いているという問題も生じました。具体的には、詐害行為取消権は一人の債権者の主導権で行使される手続であるのに対し、否認権は、破産手続において破産管財人が行使するという厳格な手続きです。また、否認権は、否認行為の否定という効果であるのに対し、詐害行為取消権は、詐害行為の取消しという重大な効果を認めていることも好ましくないと考えられました。

 

方向性

今般の民法改正では、破産法の否認権の規定を強く意識した内容への変更が行われました。また,判例法理の体系も整理しながら明文化されています。効果面でも、制度の本質的な性格に関する重要な変更が見られ,否認権も参考にしながら、受益者・転得者・転々得者の利益保護も図られています。改正の骨子は以下のようなものです。

 

  1. 要件    否認権を意識して類型化・厳格化

  2. 行使方法  判例法理の明文化

  3. 効果    判例法理の問題点を修正

 

 

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