改正債権法10 (詐害行為取消権3)

行使の方法

被告とすべき者

受益者または転得者を被告とし、債務者は被告にできません(改正案424条の7第1項)。しかし,この判決の影響は債務者にも及ぶので、手続保障のため、債務者に訴訟告知をする義務があります(同条2項)。

請求の内容

債務者のした行為の取消(形成訴訟の面)と、財産の返還または価額の償還(給付訴訟の面)を両方請求することができます(改正案424条の6)。返還方法は現物返還が原則であって、価額償還は現物返還が困難なときに限られます。

取消しの範囲

金銭など可分な財産について贈与や売却など詐害行為が行われた場合、債権者は自己の債権額の限度でしか取消権を行使できません(改正案424条の8)。たとえば、200万円の債権を有している債権者が、債務者が行った400万円の贈与を債権者取消する場合、200万円分だけ取消して返還を求めることになります。他方、不動産など不可分の財産について贈与や売却などの行為が行われた場合、詐害行為全部を取り消します。受益者又は転得者が返還すべき財産が金銭または動産の場合、債権者は、受益者または転得者に対して、直接自己へ、金銭の支払や動産の引渡しを求めることができます(改正案424条の9)。この結果、債権者は受け取った金銭と自分の債権とを相殺することができます。債権者への直接取立てを認めると、債権者取消権は強制執行に備えるための制度のはずが、債務名義も取らずに債権回収完了となってしまいます。このため、改正案のこの結論には批判も強かったところですが、実際上、この効果が債権者取消権行使の誘因となっていることから、債権者の直接取立てを禁止することは見送られました。ただし、相殺権濫用の法理により、個別に禁止されることはありえます。

詐害行為取消権の効果

債権者取消権の効果について、現行民法は、425条で「前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる」とのみ規定しています。この規定でだけでは、効果が不明確であるため、判例と学説が展開してきました。そして、従来の判例は、詐害行為取消権の効果について「相対的取消」という立場を採っていました。取消判決の効力は原告である債権者と被告である受益者・転得者との間でのみ生じ、債務者には及ばないという考え方です。しかしこれでは、取り戻して債務者名義になった不動産に強制執行できることや、弁済が詐害行為として取り消された場合に受益者の債権が復活することを説明できないという問題点がありました。こで、改正案では相対的取消の立場を否定し、取消判決の効力は債務者にも及ぶことにしました(改正案425条)。

取消判決の効力が債務者にも及ぶとされたことによって、財産を返還させられた受益者や転得者の保護が前進しました。具体的には、次のように改正されます。

① 反対給付と引き換えに取得した財産を返還させられた受益者は,債務者に対し反対給付の返還、またはそれが困難であるときは価額償還を請求できます(改正案425条の2)。

② 弁済等が取り消されて受け取った財産を返還させられた受益者については,弁済等で消滅した債務者に対する債権が復活します(改正案425条の3)。

③ 上記2類型の受益者から財産を転得した転得者各類型に応じ、受益者が取得するはずの反対給付返還請求権または復活した債権を、転得者が代位行使できます(改正案425条の4)ただし、転得者自身が前者に対してした反対給付や消滅した債権の価額が上限となります。

出訴期間

債権者取消権について、現行民法は、426条で「債権者が取消しの原因を知った時から2年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と規定しています。つまり、債権者が詐害行為を知った時から2年の消滅時効と、詐害行為の時から20年の除斥期間の2種類です。改正案は、これを次の通り改めました(改正案426条)。債権者が詐害行為を知った時から2年の出訴期間と、詐害行為の時から10年の出訴期間の2種類です。債権者取消権に関する訴訟は、2年経過したときは「提起できない」と規定され、「時効」の規定はなくなりました。時効の中断・停止(改正案では完成猶予・更新)はできなくなる点、長期の期間制限が10年に短縮されています。

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