遺留分に関する民法の特例

相続コラム(目次)
特別受益・寄与分の裁判例(目次)
相続に関する主要な最高裁判例(目次)
事業承継のコラム(目次)
相続税法(目次)

経営承継円滑化法における「遺留分に関する民法の特例」

制度趣旨

相続人間で遺留分の規定と異なる合意をしても無効です。遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可がなければすることはできず、放棄の申立は承継者以外の相続人がする必要があり、そのためには、放棄をする当事者に負担がかかってしまうことになります。そこで、一定の要件のもとで遺留分の規定と異なる合意を認め、事業承継者が自ら手続を進めることができるように定め、事業承継の円滑化を図労とするのがその趣旨です。

遺留分

遺留分の放棄

制度概要

(1)円滑法が認める民法の例外には、「除外合意」と「固定合意」という2つの方法があります
(2)特例が認められるためには、おおきく以下の要件を具備することが必要です。
ア 推定相続人(遺留分のない兄弟姉妹を除く)全員の書面による合意
イ 3年以上継続して事業を行っている非上場企業であること
ウ 株式を譲渡する先代経営者は、過去または現在、会社の代表者であること。
エ 後継者は先代経営者の推定相続人であり、合意時に当該会社の経営者であること。
(3)合意後1か月以内に当該合意に関する経済産業大臣の確認の申請する必要があります。
(4)上記確認受領後1か月以内に家庭裁判所に許可の申請をする必要があります。

固定合意と除外合意

除外合意

後継者が旧代表者からの贈与により取得した当該中小企業の株式の全部または一部について、その価額を、遺留分を算定するための価額に算定しない旨を合意することを言います(法4条1項1号)。この対象となる株式は、遺留分の対象から除外されるので、他の相続人から遺留分侵害請求を受けることはありません。そのため、このような合意が成立すれば後継者は株式の分散を防ぐことができます。

固定合意

後継者が旧代表者からの贈与により取得した当該中小企業の株式の全部または一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を当該合意時における価額とする旨の合意です(法4条1項2号)。遺留分の価額の算定時期は相続開始時ですが、後継者が、先代経営者の生前に株式の贈与を受けて事業を承継し、会社の業績を向上させて株価を上昇させた場合には、上記の株価の増加分が遺留分算定財産に加算されてしまい、後継者が努力すればするほど遺留分減殺請求対象財産が増加してしまうという矛盾した結果となってしまいます。そこで、譲渡を受けた株式の価額を後継者とその他の推定相続人との間で合意した価額で固定し、その後の増分を後継者に取得させることとしたのです。もっとも、中小企業の株式の算定は簡単ではありません。そのため、固定合意にかかる株式の価額の公正を期するため、対象となる株式の価額が相当な価額である旨の弁護士、公認会計士、税理士の証明が必要です。

 

非後継者がとることができる措置についての定め

これらの合意をしたときには、後継者が合意対象株式を処分したり、先代経営者生存中に後継者が代表者でなくなった場合に、非後継者がとることができる措置についての定めをする必要があります。具体的には、本特約を解除できる、一定の違約金を課す等が考えられます。なお、後継者が代表者でなくなる場合であっても、より企業価値が向上できる経営に統合する場合を除外する等の合意をすることも可能と解されます。

除外合意または固定合意をする際に併せて定めることのできる合意

「除外合意」も「固定合意」も、推定相続人全員の合意が必要です。そこで、円滑法は、以下のような条項を除外合意に関する合意書に盛り込むことができるものとして後継者と非後継者とのバランスを図ることができるようにしています。

後継者による自社株式以外の財産に関する価額の不参入

後継者は、「除外合意」または「固定合意」がなされることを前提に、先代経営者から当該会社以外の財産についての価額を、遺留分を算定する財産の価額に算入しないことができます(円滑法5条)。ですから、自社株式以外の工場等の土地建物や設備等についても、その価額を遺留分算定財産に算入しないことを合意することができます(円滑法5条)。

推定相続人間の衡平を図るための措置

公平をはかるため,推定相続人に対し、一定額の金銭等を支払う旨の合意等が考えられます(円滑法6条1項)。また、後継者以外の推定相続人が先代経営者から贈与を受けた財産について遺留分算定財産に算入しない合意をすることができます(円滑法6条2項)。 これらの合意も推定相続人全員の合意が必要であり、かつ、書面によってなされることが必要です。

産業経済大臣の確認及び家庭裁判所の許可

遺留分に関する民法の特例の合意の効力が生ずるのは、当事者間で特例にかかる合意書を作成しただけでは足りず、「経済産業大臣の確認」「家庭裁判所の許可」が必要です(円滑法8条1項、9条)。また、経済産業大臣の確認申請は、合意をした日から1か以内に行う必要があり(円滑法7条2項)。また、家庭裁判所への許可申請は、産業経済大臣の確認を受けた日から1か月以内に申立をする必要があります(円滑法8条1項)。

経済産業大臣の確認

経済産業大臣は、次の点について確認するとされています(円滑法7条)。

①当該合意が特例中小企業者の経営の承継の円滑化を図る目的でなされたこと(円滑法7条1項1号)
②申請をした者が当該合意をした日において後継者であったこと
③合意をした日に後継者が所有する特例中小企業の株式のうち合意の対象とした株式を除いたものに係る議決権の数が総株主の議決権の100分の50以下の数であったこと
④後継者が株式を処分した場合等に後継者以外の推定相続人がとることができる措置に関する合意があること

家庭裁判所の許可

家庭裁判所は、特例合意が当事者の全員の真意にでたものであるとの心証を得なければこれを許可することができません(円滑法8条2項)。

 

TOP

弁護士費用

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA