法定後見制度

高齢者の法律問題(目次)

Q1 成年後見制度ってどんな制度ですか?

A1
 認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。

 

Q2 成年後見制度どにはどのようなものがあるのですか?

A2
 成年後見制度は,大きく分けると,法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。また,法定後見制度は,「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており,判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっています。
法定後見制度においては,家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が,本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり,本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって,本人を保護・支援します。
◇法定後見制度の概要◇
後見 保佐 補助
対象となる方 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 判断能力が著しく不十分な方 判断能力が不十分な方
申立てをすることができる人 本人,配偶者,四親等内の親族,検察官など
市町村長
成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)の同意が必要な行為
民法13条1項所定の行為(注2)(注3)(注4) 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」(民法13条1項所定しょていの行為の一部)(注1)(注2)(注4)
取消が可能な行為 日常生活に関する行為以外の行為 同上(注2)(注3)(注4) 同上(注2)(注4)
成年後見人等に与えられる代理権の範囲 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判しんぱんで定める「特定の法律行為」(注1) 同左(注1)
制度を利用した場合の資格などの制限 医師,税理士等の資格や会社役員,公務員等の地位を失うなど(注5) 医師,税理士等の資格や会社役員,公務員等の地位を失うなど
(注1)  本人以外の者の請求により,保佐人に代理権を与える審判をする場合,本人の同意が必要になります。補助開始の審判や補助人に同意権・代理権を与える審判をする場合も同じです。
(注2)  民法13条1項では,借金,訴訟行為,相続の承認・放棄,新築・改築・増築などの行為が挙げられています。
(注3)  家庭裁判所の審判により,民法13条1項所定の行為以外についても,同意権・取消権の範囲を広げることができます。
(注4)  日常生活に関する行為は除かれます。
(注5)  公職選挙法の改正により,選挙権の制限はなくなります(。

「後見」制度ってどんな制度ですか?

A3

 精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により,判断能力が欠けているのが通常の状態にある方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると,家庭裁判所が選任した成年後見人が,本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人または成年後見人が,本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。ただし,自己決定の尊重の観点から,日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については,取消の対象になりません。(Q2法定後見制度の概要をご参照下さい。)

Q4「後見」を利用した事例を教えてください。

A4
 次のような事例があります。
 ○ 後見開始事例
 本人の状況:アルツハイマー病 イ 申立人:妻 ウ 成年後見人:申立人
 概要
本人は5年程前から物忘れがひどくなり,勤務先の直属の部下を見ても誰かわからなくなるなど,次第に社会生活を送ることができなくなりました。日常生活においても,家族の判別がつかなくなり,その症状は重くなる一方で回復の見込みはなく,2年前から入院しています。
ある日,本人の弟が突然事故死し,本人が弟の財産を相続することになりました。弟には負債しか残されておらず,困った本人の妻が相続放棄のために,後見開始の審判を申し立てました。
家庭裁判所の審理を経て,本人について後見が開始され,夫の財産管理や身上監護をこれまで事実上担になってきた妻が成年後見人に選任され,妻は相続放棄の手続をしました。

 

Q5「保佐」制度ってどんな制度ですか?

A5
 精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により,判断能力が著しく不十分な方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると,お金を借りたり,保証人となったり,不動産を売買するなど法律で定められた一定の行為について,家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得ることが必要になります。保佐人の同意を得ないでした行為については,本人または保佐人が後から取り消すことができます。ただし,自己決定の尊重の観点から,日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については,保佐人の同意は必要なく,取消しの対象にもなりません。また,家庭裁判所の審判によって,保佐人の同意権・取消権の範囲を広げたり,特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることもできます(※)。
 保佐人の同意権・取消権の範囲を広げたり,保佐人に代理権を与えるためには,自己決定の尊重から,当事者が,同意権等や代理権による保護が必要な行為の範囲を特定して,審判の申立てをしなければなりません。また,保佐人に代理権を与えることについては,本人も同意している必要があります。この申立ては,保佐開始の審判の申立てとは別のものです。

Q6「保佐」制度を利用した事例を教えてください。

A6
 次のような事例があります。
 ○ 保佐開始事例
 本人の状況:中程度の認知症の症状 イ 申立人:長男 ウ 保佐人:申立人
 概要
本人は1年前に夫を亡くしてから一人暮らしをしていました。以前から物忘れが見られましたが,最近症状が進み,買物の際に1万円札を出したか5千円札を出したか,分からなくなることが多くなり,日常生活に支障が出てきたため,長男家族と同居することになりました。隣県に住む長男は,本人が住んでいた自宅が老朽化しているため,この際自宅の土地,建物を売りたいと考えて,保佐開始の審判の申立てをし,併せて土地,建物を売却することについて代理権付与の審判の申立てをしました。
家庭裁判所の審理を経て,本人について保佐が開始され,長男が保佐人に選任されました。長男は,家庭裁判所から居住用不動産の処分についての許可の審判を受け,本人の自宅を売却する手続を進めました。

 

Q7 「補助」制度ってどんな制度ですか?

A7 軽度の精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により,判断能力の不十分な方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると,家庭裁判所の審判によって,特定の法律行為について,家庭裁判所が選任した補助人に同意権・取消権や代理権を与えることができます(※)。ただし,自己決定の尊重の観点から,日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については,補助人の同意は必要なく,取消しの対象にもなりません。
 補助人に同意権や代理権を与えるためには,自己決定の尊重の観点から,当事者が,同意権や代理権による保護が必要な行為の範囲を特定して,審判の申立てをしなければなりません。この申立ては,補助開始の審判とは別のものです。なお,補助に関するこれらの審判は,本人自らが申し立てるか,本人が同意している必要があります。

Q8「補助」制度を利用した事例を教えてください。

A8
 次のような事例があります。
 ○ 補助開始事例
 本人の状況:軽度の認知症の症状 イ 申立人:長男 ウ 補助人:申立人
 概要
本人は,最近米を研とがずに炊いてしまうなど,家事の失敗がみられるようになり,また,長男が日中仕事で留守の間に,訪問販売員から必要のない高額の呉服を何枚も購入してしまいました。困った長男が家庭裁判所に補助開始の審判の申立てをし,併せて本人が10万円以上の商品を購入することについて同意権付与の審判の申立てをしました。
家庭裁判所の審理を経て,本人について補助が開始され,長男が補助人に選任されて同意権が与えられました。その結果,本人が長男に断りなく10万円以上の商品を購入してしまった場合には,長男がその契約を取り消すことができるようになりました。

Q9成年後見人等には,どのような人が選ばれるのでしょうか?

A9 成年後見人等には,本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて,家庭裁判所が選任することになります。本人の親族以外にも,法律・福祉の専門家その他の第三者や,福祉関係の公益法人その他の法人が選ばれる場合があります。成年後見人等を複数選ぶことも可能です。また,成年後見人等を監督する成年後見監督人にんなどが選ばれることもあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA