保全命令手続

1 保全命令手続の開始

(1) 民事保全手続は、債権者の申立てによって開始します(民事保全法2条1項)。本案訴訟が確定するまでは申立ての時期に制限はなく、訴え提起の前でも後でもどちらでも申立てすることができます。通常は、本案訴訟前が効果的だと思いますが、新たな資産が発見された場合など本案の訴え提起後でも保全の申立ては可能です。
(2) 保全命令の申立てに際しては、①保全すべき権利又は権利関係、②保全の必要性、を疎明しなければなりません(民事保全法13条1項・2項)

ア 被保全権利

被保全権利の存在とは、債権者が「自分が債務者に対して有しており、その権利の保全のために仮差押えをしたい」と主張している権利が実際に存在していることをいいます。民事保全の目的は現状と将来の権利確定・実現のタイムラグを埋めることにありますので、被保全権利が存在しない場合すなわち将来権利が確定・実現しないことが明らかな場合には保全措置を認める必要がないのです。

イ 保全の必要性

保全の必要性とは、今仮差押えをしなければ将来強制執行することが不可能になったり、著しく困難になったりするおそれがあることを意味します。つまり、なぜ民事保全という暫定的な措置をする必要があるのかを具体的事情を用いて主張することが必要です。具体的には、債務者に財産がないことや、財産を隠匿・消費するおそれがあることなどを主張していくことになります。

(3) 疎明

疎明とは、即時に取り調べられる証拠によって(民事訴訟法188条)、一応確からしいという心証を裁判官に与えることをいいます。保全命令は、債権者が、①被保全権利の存在、②保全の必要性があること、を疎明することで、発令されます(民事保全法13条2項)。実務上は、証人を呼んで話を聞くことはほとんどなく、債権者その他の関係者が事実関係等の事情を記したもの(陳述書や報告書)を提出することが多いです。

2 保全命令手続の審理

民事保全手続というのは迅速かつ債務者に知られないように進める必要があります。そこで民事保全手続の審理は、口頭弁論を開いて裁判官が債権者・債務者双方の話を聞く、という手続は必要ないとされています(民事保全法3条参照)。もっとも、仮の地位を定める仮処分の場合は、例外的に、「口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日」を経ること、すなわち債務者の言い分も聞く機会を設けなければならないとされています(民事保全法23条4項本文)。仮の地位を定める仮処分は、債務者へ与える影響が大きい一方で、保全命令手続の存在を債務者に知られても不都合が小さいため、このような債務者への配慮が必要だと説明されています。

3 担保の提供

保全命令が発令される場合、担保を立てることを要求されるのが一般的です(民事保全法14条)。債権者は自分に権利があると思っていますが、本案訴訟でその権利が認められないこともあります。そのようなときに、民事保全によって債務者が受けるかも知れない損害を担保することを目的としてあらかじめ担保の提供を要求しているのです。担保の額は裁判所が決定しますが、たとえば不動産の仮差押えの場合だと、目的不動産の10%~30%程度とされているようです。担保を立てる方法としては、金銭又は有価証券を供託する方法と金融機関と支払保証委託契約を締結する方法があります(民事保全法4条1項、民事保全規則2条)。

4 仮差押解放金・仮処分解放金

債権者から、担保を立てた証拠として供託書や支払保証委託契約締結証明書が提出されて担保提供の確認ができると、保全命令が発令されます。仮差押命令の発令に伴い、仮差押解放金が必ず定められます。これは、債務者が仮差押解放金を供託すれば保全命令の執行の停止またはすでにした執行の取消しを受けることができるという制度です(民事保全法22条1項、51条1項)。仮差押えは金銭債権の保全を目的としていることから、仮差押解放金を供託することで債務者の財産が確保できれば債務者の財産を仮差押えしておく必要はありあません。そこで、債務者を仮差押えから解放するためにこの制度が定められているのです。また、仮処分命令の発令に伴い、被保全権利が金銭債権の場合に限り仮処分解放金を定めることができます(民事保全法25条1項、57条1項)。仮処分命令でも、被保全権利が金銭債権ならば、仮差押えと同じような状況であるといえるので、債務者を買い処分から解放する制度が準備されているのです。


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