平成30年事業承継税制

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事業承継税制について

事業承継税制とは「先代経営者から事業を引き継ぐ中小企業経営者が、先代から自社の株式の相続や贈与を受ける場合には、一定の条件を満たす場合に相続税や贈与税の納税を免除してもらえる」というルールのことです。今回の事業承継税の改正により、平成30年1月以降は、この株式の贈与や相続に関する税負担を最終的にすべて(つまり100%)免除してもらうことが可能となります(平成29年までは80%までの免除でした)。

中小企業の事業承継に関する現状

中小企業庁が平成28年に発表した報告によると、60歳以上の中小企業経営者のうち、5割以上の人が自分の代での廃業を検討していることが明らかになっています(特に個人事業主では7割以上)。廃業を予定している企業の中には業績的には好調を維持している企業も少なくなく、世代交代によって失われる雇用やノウハウの流出は大きな問題です。政府はこうした状況の改善を目指し、事業承継のタイミングで負担する必要がある税金(相続税、贈与税)の負担を大幅に下げることを検討し、施策を行っています(その具体的な施策が事業承継税制の改正です)。

今までの事業承継税制の利用率

事業承継税制を利用する事業者の数は大規模な改正(役員退任要件の緩和)が行われた平成27年1月以降は大幅に増加傾向にあります。平成26年では相続税に関する事業承継税制の利用は151件、贈与税に関する事業承継税制の利用は46件の合計197件でしたが、平成27年の利用は相続税219件、贈与税273件(合計492件)と2倍以上の増加となりました。特に、贈与税に関する事業承継税税制の利用が大幅に増加していることは、先代経営者の生前に経営者交代の問題をクリアしておこうという経営者が増えていることをうかがわせます。平成30年の改正ではさらに事業承継税制を利用するメリットが大きくなることが見込まれるため、今後も早めの対策を行う中小企業経営者が増加することが予想されます。特筆すべきことは、2020年には団塊の世代に該当する中小企業経営者が引退時期に差し掛かることです。
今回の事業承継税制に関する法律の改正は、こうした流れを反映したものとみることができるでしょう。

平成30年事業承継税制の改正内容

今回の改正では、具体的には次の7点が変更となります。

改正ポイント 改正前 改正後
①納税猶予の対象となる株式の拡充 3分の2まで すべて
②納税猶予される割合の拡充 80% 100%
③雇用の確保に関する条件 5年平均80%を維持 撤廃
④先代経営者側の人的要件緩和 先代経営者1人から 複数人から
(代表者以外も含む)
⑤後継経営者側の人的要件緩和 後継者1人へ 複数人へ(最大3名)
⑥株式譲渡、合併、解散による
場合の納付金額の減免
贈与時・相続時の
株式の評価額を基に計算
株式譲渡、合併、解散時の
株式の評価額を基に計算し、
差額あれば免除
⑦相続時精算課税制度の対象拡大 直系卑属のみ 推定相続人以外の
特例後継者にも適用

以下、順番に解説させていただきます。

納税猶予の対象となる株式の拡充(3分の2まで→すべて)

納税を猶予してもらうことができる株式の条件が従来の「3分の2」から「すべて」に変更されます。なお、ここでいう「株式」とは「議決権のある発行済み株式総数」のことで、後継者が相続開始前に取得していたものも含みます。

納税猶予される割合の拡充(80%→100%)

従来は対象となる株式の80%までの税金が猶予とされていたところ、平成30年改正では100%の税金が猶予されることとなりました。上の①で対象となる株式が3分の2からすべてに変更されたこととあいまって、大幅に税負担が小さくなりました。

※従来は株式総数の3分の2が対象であったため、実質的には53%までが猶予の対象(3分の2×80%)でしたが、改正後には100%猶予を受けることが可能になりました。

雇用の確保に関する条件(打ち切り要件の緩和)

従来は、納税猶予を受けるためには事業承継が行われた後、5年間は従業員の雇用(つまり雇用している従業員の人数)を平均で80%維持しなければならないとされていましたが、この要件が撤廃されました。これにより、事業承継と前後してダイナミックなリストラや人員の整理をしやすくなったといえます。ただし、事業承継後5年間平均の雇用している従業員数が事業承継前の80%を下回ることとなる場合には、都道府県に対して報告を行わなくてはなりません。この際、雇用を維持できなくなった理由が事業の経営悪化である場合には、認定支援機関による指導や助言を受けなくてはなりません。

先代経営者側の人的要件緩和

従来は「先代経営者1人から後継経営者1人」への事業承継が行われる場合だけが事業承継税制の対象となっていました。平成30年改正以降は、複数の株主から株式の贈与や相続を受ける場合についても事業承継税の適用を受けることが可能となります。中小企業では社長自身とその配偶者などが株式を分け合ってオーナーとなっていることが珍しくありませんから、この点でも事業承継税制を使いやすくなったといえます。

後継経営者側の人的要件緩和

後継者側の人的要件についても緩和されます。従来は「先代経営者1人から後継経営者1人」への事業承継のみが事業承継税制の対象となっていましたが、平成30年以降は複数の後継者がいる場合も対象となります。後継者の人数の上限は3名で、後で説明する「特例承継計画」に記載されている代表権を有している人に限られます。

株式譲渡、合併、解散による場合の納付金額の減免

従来、事業承継税制による贈与税、相続税納付税額の計算は、株式移転の原因が株式譲渡、合併、解散による場合でも、株式の贈与や相続時の相続税評価額をもとに行われていました。今回の改正後は、株式譲渡や合併、解散によって事業承継が確定した場合には、株式の譲渡もしくは合併の対価の額、または解散の時点での相続税評価額をもとにして納付金額を再計算し、この計算による納付金額が当初の納税猶予税額を下回る場合、その差額については免除してもらうことができるようになりました。

相続時精算課税制度の対象拡大

従来の事業承継税制においては、相続時精算課税制度の適用を受けるためには、贈与者の直系卑属である必要がありました(贈与者は60歳以上、受贈者は20歳以上である必要があります:改正後も同じ)。平成30年改正では贈与をする人の推定相続人となる人以外であっても相続時精算課税制度の適用を受けることができるようになります。この改正により、子供や孫といった血縁関係以外の人を後継者とする場合にも事業承継税制の適用の道がひらかれることとなりました。

事業承継税制の適用を受けるために必要な手続き

事業承継税制は、対象となる会社の代表権を有していた経営者が、対象となる後継者に対して当該会社の株式を取得させた場合に適用されます。「対象となる会社」「対象となる後継者」という表現を使っていますが、これらは「特例承継計画」という計画書に記載された会社や人のことを指します。お、正式には事業承継税制の対象となる会社のことを「特例承継会社」、対象となる後継者のことを「特例後継者」と呼ぶことが予定されています。

都道府県へ『特例承継計画』を提出する必要

事業承継税制の適用を受けるための「特例承継計画」は、都道府県に対して提出しなくてはなりません。この特例承継計画には事業承継が行われる会社の、承継までの経営見通しや後継者となる人の情報を記載することになるものと思われます。特例承継計画に記載するべき内容については、現時点では確たる情報はありませんが、その作成に当たっては中小企業庁が認定する「認定経営革新支援機関」からアドバイスを受けることができます。(認定経営革新支援機関というのは多くは民間の税理士事務所や経営コンサルティング業者です。)この特例承継計画の提出は平成30年4月1日から行われる予定です。もし平成30年の1月~3月のまでに贈与、相続が生じた場合には、4月以降に提出を行えばよいとされる見込みです。

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