最決昭和40年6月30日民集19巻4号1114頁

離婚コラム【目次】
離婚に関する主要な最高裁判例【目次】

最決昭和40年6月30日民集19巻4号1114頁

①家事審判法第9条第1項乙類第3号の婚姻費用の分担に関する処分の審判の合憲性
②家庭裁判所は審判時より過去に遡つて前項の処分をすることができるか

       主   文

本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。

       理   由

本件抗告の理由は別紙記載のとおりであり,これに対して当裁判所は次のように判断する。
憲法は三二条において,何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われないと規定し,八二条において,裁判の対審及び判決は,公開の法廷でこれを行う旨を定めている。すなわち,憲法は基本的人権として裁判請求権を認めると同時に法律上の実体的権利義務自体を確定する純然たる訴訟事件の裁判については公開の原則の下における対審及び判決によるべき旨を定めたものであって,これにより近代民主社会における人権の保障が全うされるのである。従って,性質上純然たる訴訟事件につき当事者の意思いかんに拘らず,終局的に事実を確定し,当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定するような裁判が,憲法所定の例外の場合を除き,公開の法廷における対審及び判決によってなされないとするならば,それは憲法八二条に違反すると共に同三二条が基本的人権として裁判請求権を認めた趣旨をも没却するものといわねばならない(昭和二六年(ク)第一〇九号同三五年七月六日大法廷決定民集第一四巻第九号一六五七頁以下参照)。
しかし,家事審判法九条一項乙類三号に規定する婚姻費用分担に関する処分は,民法七六〇条を承けて,婚姻から生ずる費用の分担額を具体的に形成決定し,その給付を命ずる裁判であって,家庭裁判所は夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,後見的立場から,合目的の見地に立って,裁量権を行使して,その具体的分担額を決定するもので,その性質は非訟事件の裁判であり,純然たる訴訟事件の裁判ではない。従って,公開の法廷における対審及び判決によってなされる必要はなく,右家事審判法の規定に従ってした本件審判は何ら右憲法の規定に反するものではない。しかして,過去の婚姻費用の分担を命じ得ないとする所論は,原決定の単なる法令違反を主張するにすぎないから,特別抗告の適法な理由とならないのみならず,家庭裁判所が婚姻費用の分担額を決定するに当り,過去に遡って,その額を形成決定することが許されない理由はなく,所論の如く将来に対する婚姻費用の分担のみを命じ得るに過ぎないと解すべき何らの根拠はない。
叙上の如く婚姻費用の分担に関する審判は,夫婦の一方が婚姻から生ずる費用を負担すべき義務あることを前提として,その分担額を形成決定するものであるが,右審判はその前提たる費用負担義務の存否を終局的に確定する趣旨のものではない。これを終局的に確定することは正に純然たる訴訟事件であって,憲法八二条による公開法廷における対審及び判決によって裁判さるべきものである。本件においても,かかる費用負担義務そのものに関する争であるかぎり,別に通常訴訟による途が閉されているわけではない。これを要するに,前記家事審判法の審判は,かかる純然たる訴訟事件に属すべき事項を終局的に確定するものではないから,憲法八二条,三二条に反するものではない。
よって民訴法八九条を適用して主文のとおり決定する。
この裁判は,裁判官横田喜三郎,同入江俊郎,同奥野健一の補足意見,裁判官山田作之助,同横田正俊,同草鹿浅之介,同柏原語六,同田中二郎,同松田二郎,同岩田誠の意見(略)があるほか,裁判官全員の一致した意見によるものである。
昭和四〇年六月三〇日 最高裁裁判長裁判官横田喜三郎,同入江俊郎,同奥野健一,同石坂修一,同山田作之助,同五鬼上堅磐,同横田正俊,同草鹿浅之介,同長部謹吾,同城戸芳彦,同石田和外,同柏原語六,同田中二郎,同松田二郎,同岩田誠

TOP

個人のお客様

法人のお客様

弁護士費用

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA