最判昭和36年10月10日民集15巻9号2294頁

賃貸不動産トラブル【目次】
借地借家の最高裁判例【目次】

最判昭和36年10月10日民集15巻9号2294頁

一時使用のための借家権とその期間は1年未満か

       主   文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

上告代理人羽田野忠文,同今福朝次郎,同佐藤安哉の上告理由第一点ないし第三点について。
被上告人は,原審における昭和三二年五月一五日午前一〇時の(最終)口頭弁論期日において,その主張として,本件賃貸借契約は,その締結の経緯及び内容から明らかなように,その期間を三年間に限った一時使用のためのもので,借家法の適用がない。仮にしからずとするも,被上告人は自己使用の必要上,適法な更新拒絶をしているので,右期間満了とともに終了している旨陳述していることは,右期日の口頭弁論調書上明らかである。従って,原審が,被上告人の右主張を容れて,本件賃貸借契約が一時使用のためのものであると判断している以上,さらに所論のように更新拒絶ないしその正当事由の点について判断する必要がないこともいうまでもない。されば,原判決には所論のような違法はなく,論旨はいずれも理由がない。
同第四点,第五点,第六点(一),(二)及び第七点について。
本件賃貸借契約をもって,借家法八条にいわゆる一時使用のための賃貸借とした原審の判断は,原判決挙示の全証拠によれば肯認しうる。原判決には,所論(第六点(一))のような欠点があるものとはいいがたいし,原判決は,所論(第七点(一))上告人の諒解の事実を,所論のように三年の期間内でも賃借家屋を明け渡すことあるべき旨約したとの事実からだけではなく,挙示のその他の証拠を綜合して認定(ことに,原審証人甲の証言中には,判旨認定事実に直接符合する供述がある。)したものであることは,判文上明瞭である。また,所論(第七点(二))指摘の低賃料の事実を,一時使用のための賃貸借であることの認定の一資料とした原判決の判断も,本件の場合には首肯しうるところであり,これに反する所論は独自の見解を述べるにすぎない。以上のとおりであるから,所論は,畢竟原審が適法にした証拠の取捨判断ないし事実認定を非難するにすぎないことに帰し,いずれも採用しえない。
同第六点(三)について。
借家法八条にいわゆる一時使用のための賃貸借といえるためには必ずしもその期間の長短だけを標準として決せられるべきものではなく,賃貸借の目的,動機,その他諸般の事情から,該賃貸借契約を短期間内に限り存続させる趣旨のものであることが,客観的に判断される場合であればよいのであって,その期間が一年未満の場合でなければならないものではない。所論は,これに反する独自の見解を前提とするもので,採るを得ない。
よって,民訴四〇一条,九五条,八九条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官河村又介,裁判官垂水克己,同高橋潔,同石坂修一

TOP

個人のお客様

法人のお客様

弁護士費用

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA