最判平成11年9月14日裁判集民事193号717頁

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最判平成11年9月14日裁判集民事193号717頁

公正証書遺言と盲人の証人適格

      主   文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

      理   由

上告代理人藤森龍雄,同坂速雄,同曽我乙彦の上告理由第一点及び第二点について
所論の点に関する原審の認定判断は,原判決挙示の証拠関係に照らし,正当として是認することができ,その過程に所論の違法はない。論旨は,採用することができない。
同第三点について
民法九六九条一号は,公正証書によって遺言をするには証人二人以上を立ち会わせなければならないことを定めるが,盲人は,同法九七四条に掲げられている証人としての欠格者にはあたらない。のみならず,盲人は,視力に障害があるとしても,通常この一事から直ちに右証人としての職責を果たすことができない者であるとしなければならない根拠を見出し難いことも以下に述べるとおりであるから,公正証書遺言に立ち会う証人としての適性を欠く事実上の欠格者であるということもできないと解するのが相当である。すなわち,公正証書による遺言について証人の立会を必要とすると定められている所以のものは,右証人をして遺言者に人違いがないこと及び遺言者が正常な精神状態のもとで自己の意思に基づき遺言の趣旨を公証人に口授するものであることの確認をさせるほか,公証人が民法九六九条三号に掲げられている方式を履践するため筆記した遺言者の口述を読み聞かせるのを聞いて筆記の正確なことの確認をさせたうえこれを承認させることによって遺言者の真意を確保し,遺言をめぐる後日の紛争を未然に防止しようとすることにある。ところで,一般に,視力に障害があるにすぎない盲人が遺言者に人違いがないこと及び遺言者が正常な精神状態のもとで自らの真意に基づき遺言の趣旨を公証人に口授するものであることの確認をする能力まで欠いているということのできないことは明らかである。また,公証人による筆記の正確なことの承認は,遺言者の口授したところと公証人の読み聞かせたところとをそれぞれ耳で聞き両者を対比することによってすれば足りるものであって,これに加えて更に,公証人の筆記したところを目で見て,これと前記耳で聞いたところとを対比することによってすることは,その必要がないと解するのを相当とするから,聴力には障害のない盲人が公証人による筆記の正確なことの承認をすることができない者にあたるとすることのできないこともまた明らかである。なお,証人において遺言者の口授したところを耳で聞くとともに公証人の筆記したところを目で見て両者を対比するのでなければ,公証人による筆記の正確なことを独自に承認することが不可能であるような場合は考えられないことではないとしても,このような稀有の場合を想定して一般的に盲人を公正証書遺言に立ち会う証人としての適性を欠く事実上の欠格者であるとする必要はなく,このような場合には,証人において視力に障害があり公証人による筆記の正確なことを現に確認してこれを承認したものではないことを理由に,公正証書による遺言につき履践すべき方式を履践したものとすることができないとすれば足りるものである。このように,盲人は,視力に障害があるとはいえ,公正証書に立ち会う証人としての法律上はもとより事実上の欠格者であるということはできないのである。
そうすると,本件公正証書による遺言につき証人として立ち会った甲は,盲人であったが,証人としての欠格者であるということはできないところ,原審の確定するところによれば,右甲は,公証人が読み聞かせたところに従い公証人による遺言者乙の口述の筆記が正確であることを承認したうえ署名押印したというのであって,その間右乙の口授したところを耳で聞くとともに公証人の筆記したところを目で見て両者を対比するのでなければ公証人による筆記の正確なことを確認してこれを承認することができなかったというべき特段の事情が存在していたことは窺われないのであるから,右甲が証人として立ち会った本件公正証書による遺言に方式違背はなく,右遺言は有効であるといわなければならず,これと同趣旨の原審の判断は正当であって,原判決に所論の違法はない。論旨は,採用できない。
よって,民訴法四〇一条,九五条,八九条,九三条に従い,裁判官本山亨,同中村治朗の各反対意見(略)があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官藤崎萬里 裁判官団藤重光,同本山 亨,同中村治朗,同谷口正孝


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