最判昭和54年7月10日民集33巻5号562頁

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最判昭和54年7月10日民集33巻5号562頁

特定物の遺贈につき履行がされた場合に民法1041条により受遺者が遺贈の目的の返還義務を免れるためにすべき価額弁償の意義

      主   文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

      理   由

上告代理人江谷英男,同藤村睦美の上告理由第一点について
本件建物が無価値のものでなく,まだかなりの価値を有するものであるとする原判決の認定判断は,その挙示する証拠関係に照らし,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は,畢竟,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するか,又は判決の結論に影響のない点をとらえて原判決を論難するものにすぎず,採用できない。
同第二点について
遺留分権利者が民法一〇三一条の規定に基づき遺贈の減殺を請求した場合において,受遺者が減殺を受けるべき限度において遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れうることは,同法一〇四一条により明らかであるところ,本件のように特定物の遺贈につき履行がされた場合において右規定により受遺者が返還の義務を免れる効果を生ずるためには,受遺者において遺留分権利者に対し価額の弁償を現実に履行し又は価額の弁償のための弁済の提供をしなければならず,単に価額の弁償をすべき旨の意思表示をしただけでは足りない。何故なら,右のような場合に単に弁償の意思表示をしたのみで受遺者をして返還の義務を免れさせるものとすることは,同条一項の規定の体裁に必ずしも合うものではないばかりでなく,遺留分権利者に対し右価額を確実に手中に収める道を保障しないまま減殺の請求の対象とされた目的の受遺者への帰属の効果を確定する結果となり,遺留分権利者と受遺者との間の権利の調整上公平を失し,ひいては遺留分の制度を設けた法意にそわないこととなるからである。
これを本件についてみるのに,原審の確定したところによれば,被上告人は,遺贈者亡甲の長女で唯一の相続人であり,遺留分権利者として右甲がその所有の財産である本件建物を目的としてした遺贈につき減殺の請求をしたところ,本件建物の受遺者としてこれにつき所有権移転登記を経由している上告人は,本件建物についての価額を弁償する旨の意思表示をしただけであり,右価額の弁償を現実に履行し又は価額弁償のため弁済の提供をしたことについては主張立証をしていない,というのであるから,被上告人は本件建物につき二分の一の持分権を有しているものであり,上告人は遺留分減殺により被上告人に対し本件建物につき二分の一の持分権移転登記手続をすべき義務を免れることができないといわなければならない。
従って,これと同趣旨の原審の判断は正当であって,原判決に所論の違法はない。論旨は採用できない。
よって,民訴法四〇一条,九五条,八九条に従い,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官服部高顯  裁判官江里口清雄,同高辻正己,同環 昌一,同横井大三


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