最判昭和33年9月18日民集12巻13号2040頁

賃貸不動産トラブル【目次】
借地借家の最高裁判例【目次】

最判昭和33年9月18日民集12巻13号2040頁

借家法1条の賃貸借の承継とその通知の要否

       主   文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

       理   由

上告代理人弁護士和田正平の上告理由第一点について。
しかし原判決は証拠により,訴外甲が本件建物及び敷地の売却方を実兄乙及び丙に一任したこと及び訴外丁は右乙ら立会の下に残代金を右丙に支払いそれと引換に同人より権利証,甲の署名捺印ある委任状その他登記に必要な書類の交付を受けた事実を認定し,このような事実関係において,甲が本件建物の譲渡行為に全然無関係であったとは認められない旨判示しているのであって,この認定及び判断は,挙示の証拠に照し当裁判所にも正当として是認されるから,原判決には所論の如き違法はない。
第二点について。
しかし,借家法七条による賃料増額の請求権は,いわゆる形成権たる性質を有するものであるから,その行使の効果として賃料は当然相当額に増額され,争ある場合の額の確定に関する裁判は,すでに客観的に定まった増額の範囲を確定するに過ぎず,そしてその履行期は,客観的に定まった相当賃料全額につき,その賃貸借の内容によって定まるべき時期に到来するというのが従来の判例であって,(昭和三二年九月三日判決,集一一巻九号,一四六七頁,昭和一七年一一月一三日大審院判決,集二一巻九九五頁参照)上告人の引用する大審院明治四〇年七月九日の判決は,借家法施行前のものであり,本件に適切でない。
而して原判決は,証拠により,被上告人が昭和二五年七月上告人戊に対して本件公定賃料の支払を請求したこと,この支払請求は借家法七条による賃料増額の請求と解されること,及びこの増額請求の額は物価庁告示によって算出すれば統制賃料の範囲内で相当額と認められる旨を認定判示しているのであり,この認定判示はその証拠に照し首肯するに足りるから,上告人戊は,それ以後右増額による賃料の支払義務あること当然であり,且つ本件契約において賃料が毎月末日払の約定であったことは当事者間に争がないのであるから,増額による賃料も毎月末日払であるべきものと判断した原判決は当裁判所においてもこれを是認される。さすれば原判決には所論の如き審理不尽,理由不備,判例違反等の違法はなく,論旨は採用し得ない。
第三点について。
しかし原判決は,昭和二五年七月本件賃料の増額請求があった事実を証拠によって認定し,同年八月一日以降の増額賃料不払を理由に契約解除の効力を認めたものであること判文上明白であるから,所論の如き違法はない。
第四点,第五点,第六点について。
借家法一条により建物の所有権取得と同時に当然賃貸借を承継するものであって,その承継の通知を要しない旨の原判決の判断並びに被上告人の所為が信義則に反しない旨の原判示は,いずれも当裁判所の正当として是認できる。されば,所論は要するに独自の見解を以て原判決の正当な判断を論難するか,又は,原審の専権に属する証拠の取捨判断及び自由な事実認定を非難するものに過ぎないから採用しがたい。
よって,民訴四〇一条,九五条,八九条,九三条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官高木常七,裁判官斎藤悠輔,同下飯坂潤夫

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