最判昭和39年8月28日民集18巻7号1354頁

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最判昭和39年8月28日民集18巻7号1354頁

家屋所有権の移転と賃貸人の地位の承継

       主   文

原判決を破棄する。
本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

       理   由

上告代理人香田広一の上告理由第五点について。
所論は,被土告人はすでに昭和三四年九月二八日本件建物を訴外甲に売り渡してその所有権を失っているのであるから,右売渡後の同年一〇月五日に同年九月末日までの延滞賃料の催告をなし,右賃料不払に基づいて被上告人のなした本件賃貸借契約解除はその効力を有しない筈であるのに,原審が右解除を有効と判断して被上告人の請求を認容したのは,借家法の解釈を誤まったものであるという。
記録によれば,上告人が昭和三五年二月一六月午前一〇時の原審最終口頭弁論期日において,被上告人は昭和三四年九月二八日本件家屋を訴外甲に売り渡したからその実体的権利はすでに右訴外人に移転し被上告人はこれを失っている旨主張したのに対して,原審は右売却及びこれによる所有権喪失の有無につき被上告人に対して認否を求めないまま弁論を終結したことが明らかであり,原判決が,被上告人の本訴請求は賃貸借の消滅による賃貸物返還請求権に基づくものであるから仮に上告人主張のように被上告人が本件建物の所有権を他に譲渡してもこの事実は右請求権の行使を妨げる理由とはならないとして,被上告人の右請求を認容していることは,論旨のとおりである。
しかし,自己の所有建物を他に賃貸している者が賃貸借継続中に右建物を第三者に譲渡してその所有権を移転した場合には,特段の事情のないかぎり,借家法一条の規定により,賃貸人の地位もこれに伴って右第三者に移転するものと解すべきところ,本件においては,被上告人が上告人に対して自己所有の本件建物を賃貸したものであることが当事者間に争が由ないのであるから,本件賃貸借契約解除権行使の当時被上告人が本件建物を他に売り渡してその所有権を失っていた旨の所論主張につき,もし被上告人がこれを争わないのであれば,被上告人は上告人に対する関係において,右解除権行使当時すでに賃貸人たるの地位を失っていたことになるのであり,右契約解除はその効力を有しなかったものといわざるを得ない。然るに,原審が,叙上の点を顧慮することなく,上告人の所論主張につき,本件建物の所有権移転が本訴請求を妨げる理由にはならないとしてこれを排斥したのは,借家法一条の解釈を誤まったか,もしくは審理不尽の違法があるものというべく,右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから,論旨は理由がある。
従って,上告代理人香田広一のその余の論旨及び上告代理人清水正雄の論旨について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れず,なお右の点について審理の必要があるものと認められるから,民訴四〇七条一項に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官奥野健一,裁判官山田作之助,同城戸芳彦,同石田和外

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