最判平成13年3月13日家月53巻9号34頁

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最判平成13年3月13日家月53巻9号34頁

遺言者の住所で表記された不動産の遺贈につき同所の土地建物のうち建物のみを目的としたものと解することはできないとされた事例

      主   文

原判決中第1審判決別紙物件目録一記載の土地の共有物
分割請求に係る部分を破棄する。
前項の部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。

      理   由

上告代理人池原毅和,同森岡信夫の上告理由について
1 本件訴訟は,亡甲の相続人である上告人が,母である甲からの遺贈によって第1審判決別紙物件目録一,二記載の土地建物(以下「本件土地建物」という。)の共有持分を取得したと主張して,本件土地建物の他の共有持分者である被上告人らに対して,本件土地建物の共有物分割を求めるものである。原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 本件土地建物について,甲は2分の1の共有持分を有し,被上告人らは各8分の1の共有持分を有していた。本件建物は本件土地上に建っており,甲は,本件土地建物の外に不動産を有していなかった。
(2) 甲は,平成4年4月20日付けで,その全文,日付及び氏名を自署し,これに印を押した遺言書(以下「本件遺言書」という。)を作成した。本件遺言書の本文には,甲所有の不動産である東京都荒川区西尾久7丁目60番4号を上告人に遺贈する旨の記載がある。
(3) 甲は,平成6年1月3日に死亡した。
(4) 甲の相続人は,乙(長女),丙(二女),丁(三女),戊(四女),上告人(二男),己(五女)並びに亡庚(長男,昭和48年6月13日死亡)の子である被上告人辛,同壬及び同癸の9名である。被上告人庚子は,亡庚の妻である。
(5) 本件遺言書作成当時,本件土地建物は,甲の自宅として用いられると共に,上告人らの同族会社で廃品回収業を営む有限会社竹内商店(以下「竹内商店」という。)の事業所としても用いられ,竹内商店の借入金を担保するために金融機関の抵当権が設定されており,本件土地建物なしに竹内商店の経営が成り立たなかったことは明らかであった。そして,本件遺言書作成の前後において,竹内商店の経営の実権を有していた被上告人庚子とこれに反発する上告人とは反目し合っており,被上告人ら家族と上告人との間には確執が続いていた。
(6) 上告人と被上告人らの間では,本件土地建物の分割協議が調わない。
2 原審は,以下のとおり判示して,上告人の本件土地の共有物分割請求を却下した。
(1) 本件遺言書に記載された「西尾久7丁目60番4号」は,住居表示であり,文字どおりに解するならば,同所所在の建物と解すべきことになる。
(2) 前記1(5)の本件遺言書作成当時の事情によれば,甲が本件土地の共有持分を上告人に遺贈する真意を有していたと解することはできない。
(3) これらを総合すると,甲は本件建物の共有持分のみを上告人に遺贈したものと解すべきである。
3 しかし,原審の上記判断は是認できない。その理由は,次のとおりである。
遺言の意思解釈に当たっては,遺言書の記載に照らし,遺言者の真意を合理的に探究すべきところ,本件遺言書には遺贈の目的について単に「不動産」と記載されているだけであって,本件土地を遺贈の目的から明示的に排除した記載とはなっていない。一方,本件遺言書に記載された「荒川区西尾久7丁目60番4号」は,甲の住所であって,同人が永年居住していた自宅の所在場所を表示する住居表示である。そして,本件土地の登記簿上の所在は「荒川区西尾久7丁目」,地番は「158番6」であり,本件建物の登記簿上の所在は「荒川区西尾久7丁目158番地6」,家屋番号は「158番6の1」であって,いずれも本件遺言書の記載とは一致しない。以上のことは記録上明らかである。
そうすると,本件遺言書の記載は,甲の住所地にある本件土地及び本件建物を一体として,その各共有持分を上告人に遺贈する旨の意思を表示していたものと解するのが相当であり,これを本件建物の共有持分のみの遺贈と限定して解するのは当を得ない。原審は,前記1(5)のように本件遺言書作成当時の事情を判示し,これを遺言の意思解釈の根拠としているが,以上に説示したように遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈し得る本件においては,遺言書に表われていない前記1(5)のような事情をもって,遺言の意思解釈の根拠とすることは許されないといわなければならない。
4 以上のとおり,甲が本件建物の共有持分のみを上告人に遺贈したものと解すべきであるとした原審の判断には,遺言に関する法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この趣旨をいう論旨は理由があり,原判決中上告人の本件土地の共有物分割請求を却下した部分は破棄を免れない。そして,本件土地の分割方法につき審理を尽くさせる必要があるから,同部分を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

最高裁裁判長裁判官千種秀夫,裁判官元原利文,同金谷利廣,同奥田昌道


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