最判昭和46年11月25日民集25巻8号1343頁

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借地借家の最高裁判例【目次】

最判昭和46年11月25日民集25巻8号1343頁

借家法1条の2に基づく解約を理由とする家屋の明渡訴訟において当事者の明示の申立額を超える立退料の支払と引換えに明渡請求を認容することを相当と認めた事例

       主   文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

上告代理人桂辰夫,同津田雄三郎の上告理由第一について。
原判決は,第一審判決の理由を引用することにより,本件賃貸借契約は,被上告人(原告)が期間満了前適法な更新拒絶の意思表示をしないまま期間が満了したため,右期間満了後は,期間の定めのないものに更新されたと判示しているのであって,所論の点につき,判断を遺脱した違法はない。しかして,借家法二条によって更新された賃貸借が,期間の定めのない賃貸借となると解すべきことは,既に当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和二七年一月一八日判決民集六巻一号一頁,同二八年三月六日判決民集七巻四号二六七頁参照)。従って,原判決に所論の違法はなく,論旨は採用できない。
同第二について。
原審は,被上告人(被控訴人)が,本件賃貸借契約の更新後である本訴において,解約申入を原因とする主張を維持していることから推断して,所論の準備書面をもって黙示的に解約申入をしているものと判断しているのであって,右判断は正当である。されば,原判決に所論の違法はなく,所論は原判決を正解せず,これを非難するものであって,採用できない。
同第三について。
被上告人の本件係争店舗の敷地利用計画に関する原審の事実認定は,原判決挙示の証拠によって肯認されえないではなく,この事実を本件賃貸借契約の解約申入に関する正当事由として考慮した原審の判断は正当であって,原判決に所論の違法はない。従って,論旨は採用できない。
同第四について。
原審の確定した諸般の事情のもとにおいては,被上告人が上告人に対して立退料として三〇〇万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し,かつその支払と引き換えに本件係争店舗の明渡を求めていることをもって,被上告人の右解約申入につき正当事由を具備したとする原審の判断は相当である。所論は右金額が過少であるというが,右金員の提供は,それのみで正当事由の根拠となるものではなく,他の諸般の事情と綜合考慮され,相互に補充しあって正当事由の判断の基礎となるものであるから,解約の申入が金員の提供を伴うことによりはじめて正当事由を有することになるものと判断される場合であっても,右金員が,明渡によって借家人の被るべき損失のすべてを補償するに足りるものでなければならない理由はないし,また,それがいかにして損失を補償しうるかを具体的に説示しなければならないものでもない。原審が,右の趣旨において五〇〇万円と引き換えに本件店舗の明渡請求を認容していることは,原判示に照らして明らかであるから,この点に関する原審の判断は相当であって,原判決に所論の違法は存しない。従って,これと異なる論旨は,採用しえない。
よって,民訴法四〇一条,九五条,八九条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官藤林益三,裁判官岩田誠,同大隅健一郎,同下田武三,同岸盛一

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