職務執行停止・職務代行者選任仮処分

会社関係訴訟

職務執行停止の仮処分とは

解任の訴えは、現在取締役の地位にある者を、裁判所を通じて辞めさせる手続です。これ以外にも取締役を事実上辞めさせる手段としては、取締役選任決議をした株主総会の決議取消しの訴え、株主総会の決議無効・不存在確認の訴えなどがあります(詳しくはコラム「会社法トラブルその5 株主総会決議取消しの訴え他」参照)。これらの訴えは、認容判決が確定してはじめて取締役の地位が失われたものとして扱われます。裏を返すと、判決が確定するまでの間は、本来取締役には相応しくない者が経営に参加し、好き勝手することができることを意味します。株主としては、株式会社に損害が発生してから判決が認容されるのでは困ります。そこで、いち早く取締役の職務執行を止めさせるために利用されるのが、「職務執行停止の仮処分」です。

「職務執行停止の仮処分」とは、当該取締役が一時的に一切の職務執行を行うことができなくなる地位を仮に設定するものです(民事保全法23条2項)。そして、仮処分は、訴えに比べると簡易かつ迅速にその効力が生じる点にメリットがあります。

手続

仮処分が認められるためには、①被保全権利と②保全の必要性が、「一応存在する」と裁判官に推測(「疎明」、民事保全法13条1項)させる必要があります。ここに言う①被保全権利は、解任の訴えや株主総会決議取消しの訴えのことです。したがって、仮処分を申し立てる株主は、この①被保全権利が存在することを疎明する資料を提出しなければなりません。

②保全の必要性とは、「債権者に生じる著しい損害」または「急迫の危険」を避ける必要性があることを言います。取締役の職務執行停止の仮処分が申し立てられる場面は、その取締役に任せていたのでは株式会社に損害が発生する危険性が高い状況だと考えられます。そうすると株主は、②保全の必要性を基礎付ける資料として、そのまま取締役に職務の執行を継続すべきでない事由を疎明することになります。具体的には、業務執行の不適切な執行状況や経営能力不足、不正行為を行うおそれがあること等を推測させる資料を提出することになります。

効果

職務執行停止の仮処分がなされると、その旨の登記がなされます(民事保全法56条)。これによって、「取締役は(一時的に)職務を執行することができない」という仮処分の効力が、世の中全ての人との関係で生じると解されています(対世効)。したがって、例えば仮処分を受けた取締役が、株式会社の取締役として第三者と契約をした場合には、その契約は職務執行権限のない者によって行われたとして無効となります。

なお職務執行停止の仮処分によって、株式会社の業務を行う者が事実上不在になることがあります。このような場合には、株主や株主が推薦する者を、取締役に代わり職務執行を行う者として選任するのが一般的です。これを「職務代行者選任の仮処分」と言います。

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