取締役地位確認請求事件

会社関係訴訟

地位確認訴訟の当事者となる者

 民事訴訟法上は、当事者として訴訟追行をして、判決を得ることが相応しいと言える人であれば、誰でも当事者となることができます。地位確認訴訟であれば、取締役としての地位を争うことが相応しい者、具体的には①株式会社、②自ら取締役である又は取締役ではないと主張する者、③その他の法律上の利害関係者(主に株主)が当事者として考えられるでしょう。これらの者の組み合わせ(誰が原告となり、誰が被告となるか)は、ケースバイケースです。

ただし、どのようなケースであっても、株式会社は必ず原告・被告いずれかの当事者にならなければならないとされています。その理由は、次の通りです。取締役という地位は、株式会社との関係で発生します(会社法330条参照)。そして、誰が取締役であるかは株式会社にとって重要な事項です。そこで株式会社が地位確認訴訟の当事者にならなければならないこととされています。例えば、株式会社以外の者が、「この人は取締役ではない」という確認を求めた場合(取締役の地位不存在確認請求)、株式会社を被告としないものは不適法として却下されます(民事訴訟法140条)。 なお、代表的な組み合わせは、以下のようになります。

訴訟類型 原告となる者 被告となる者
取締役の地位確認 取締役であると主張する者 株式会社
取締役の地位不存在確認 株主など、その者が取締役の地位にはないと主張する者 株式会社
取締役の地位にあるとされている者
株式会社 取締役であると主張する者

 

争われ方

 取締役としての地位の存否は、①そもそも就任したのか否か、②取締役としての地位を喪失したか否かで判断します。以下、それぞれについて詳述します。

取締役の就任について

 取締役としての地位は、株式会社との関係では、民法上の委任に準じる関係だとされています(会社法330条)。そうすると、取締役としての地位は、株式会社と取締役との間の委任契約によって発生する、と考えることができます。取締役の地位の存在を根拠づけるためには、この委任契約が存在すること、具体的には、①株式会社が「取締役になってほしい」という申込をして、②これに取締役となる者が承諾することが必要となります。そして、取締役としての地位にあると主張する者は、この2つの要素を基礎づける具体的な事実を主張。立証することになります。

誰を取締役に選任するのかは、株式会社の所有者である株主が決定します(正確には株主総会決議(会社法329条1項、309条1項))。したがって、①申込みの存在を基礎付ける事情としては、株主総会の議事録の記載が重要となります。

②承諾の存在を基礎付ける事情・制度は、会社法上特に定められていません。実務上は、株主総会の議事録に記載があったり、取締役が就任承諾書を差し入れたりしています。これらの書面が、②承諾の存在を基礎付けるものとなります

 取締役の地位の喪失について

取締役としての地位を喪失したかが争われる事情としては、辞任、任期満了、解任が考えられます。以下、それぞれについて説明します。

① 辞任

取締役はいつでも自己の意思で辞任することができます(会社法330条、民法651条1項)。したがって、取締役としての地位の喪失を主張する者は、取締役による辞任を基礎付ける事情として、①取締役が辞任の意思を表明したことと、②その意思が株式会社(正確には株式会社を代表する者)に到達したことを主張・立証することになります。例えば、辞任届の存在は、①辞任の意思の表明を基礎付ける重要な事情となります。

② 任期満了

取締役の任期は、選任されてから2年以内(委員会設置会社の場合は1年以内)に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までが原則です(会社法332条1項本文)。もっとも、定款や株主総会の決議がある場合には、その任期を短縮することができます(会社法332条1項但書)。また、非公開会社の場合は、定款によって任期を2年から最長10年に延長することが出来ます(会社法332条2項)。したがって、取締役が任期を満了したかに争いがある場合、①任期のスタート時点である選任された日がいつなのか、②原則2年の任期を変更する定めがあるのか、という点が重要となります。

①選任された日は、株主総会の議事録や登記、②任期の定めは定款や株主総会の議事録を見れば分かります。したがって、取締役としての地位の喪失を主張する者は、任期満了を基礎付ける事情として、これらの書面をもって主張・立証することになります。

③ 解任

  取締役としての地位の喪失を主張する者は、取締役が解任されたことを基礎付ける事情として、取締役の解任決議の存在を主張・立証することになります。そして、解任決議の存在は、株主総会の議事録によって明らかにすることができます。

第4 判決がなされるとどうなるか

判決がなされた場合の効力について、会社法上根拠となる規定はありません。この点、民事訴訟法によれば、判決の効力は当事者にのみ発生するのが原則です(民事訴訟法115条1項1号)。しかし、訴訟当事者との関係ではAさんが取締役である(又はAさんは取締役ではない)のに、他の人との関係では他の人が取締役である(又はAさんが取締役である)と扱われるのでは困ります。そこで、学説及び実務では、原告の請求が認容された場合には、判断された内容が世の中全ての人に及ぶと解されています(対世効)。

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