最判昭和46年11月30日民集25巻8号1437頁

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最判昭和46年11月30日民集25巻8号1437頁

相続と民法185条にいう「新権原」

       主   文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。

       理   由

上告代理人大西芳雄の上告理由について。
所論の事実関係に関する原審の認定判断は,原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できないものではなく,右認定判断の過程に所論の違法は認められない。
そして,原審の確定した事実によれば,訴外甲は,かねて兄である被上告人から,その所有の本件土地建物の管理を委託されたため,本件建物の南半分に居住し,本件土地及び本件建物の北半分の賃料を受領していたところ,同訴外人は昭和二四年六月一五日死亡し,上告人らが相続人となり,その後も,同訴外人の妻上告人乙において本件建物の南半分に居住するとともに,本件土地及び本件建物の北半分の賃料を受領してこれを取得しており,被上告人もこの事実を了知していたというのである。しかも,上告人丙及び同丁が,右訴外人死亡当時それぞれ六才及び四才の幼女にすぎず,上告人乙はその母であり親権者であって,上告人丙及び同丁も上告人乙とともに本件建物の南半分に居住していたことは当事者間に争いがない。
以上の事実関係のもとにおいては,上告人らは,右訴外人の死亡により,本件土地建物に対する同人の占有を相続により承継したばかりでなく,新たに本件土地建物を事実上支配することによりこれに対する占有を開始したものというべく,従って,かりに上告人らに所有の意思があるとみられる場合においては,上告人らは,右訴外人の死亡後民法一八五条にいう「新権原ニ因リ」本件土地建物の自主占有をするに至ったものと解するのを相当とする。これと見解を異にする原審の判断は違法というべきである。
しかし,他方,原審の確定した事実によれば,上告人乙が前記の賃料を取得したのは,被上告人から右訴外人が本件土地建物の管理を委託された関係もあり,同人の遺族として生活の援助を受けるという趣旨で特に許されたためであり,右上告人は昭和三二年以降同三七年まで被上告人に本件家屋の南半分の家賃を支払っており,上告人らが右訴外人の死亡後本件土地建物を占有するにつき所有の意思を有していたとはいえないというのであるから,上告人らは自己の占有のみを主張しても,本件土地建物を,時効により取得することができないものといわざるをえない。従って,上告人らの取得時効に関する右主張を排斥した原審の判断は,結局相当であり,原判決の前記の違法はその結論に影響を及ぼさない。
その余の点については,原判決に所論の違法はなく,論旨は採用できない。
よって,民訴法四〇一条,九五条,八九条,九三条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官下村三郎,裁判官田中二郎,同松本正雄,同関根小郷

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