最判昭和32年11月12日民集11巻12号1928頁

最判昭和32年11月12日民集11巻12号1928頁

1個の契約で2棟の独立建物を賃貸した場合と1棟の無断転貸を理由として賃貸借全部を解除することの拒否

       主   文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

上告代理人東鉄維の上告理由について。
論旨は本件二棟の建物は独立した建物であり,その敷地番も異なるのであるから,一棟の建物につき民法六一二条の解除原因が発生,した場合には,解除原因の存在しない他の建物についてまで解除権の行使を認めるべきではないのに,本件二棟の建物全部に対する解除を認めた原判決は,民法六一二条の解釈を誤ったものであると主張する。
しかし,一個の賃貸借契約によって二棟の建物を賃貸した場合には,その賃貸借により賃貸人,賃借人間に生する信頼関係は,単一不可分であるこというまでもないから,賃借人が一棟の建物を賃貸人の承諾を得ないで転貸する等民法六一二条一項に違反した場合には,その賃貸借関係全体の信任は裏切られたものとみるべきである。従って,賃貸人は契約の全部を解除して賃借人との間の賃貸借関係を終了させその関係を絶つことができるものと解すベきである。されば原判決が,賃貸借関係は賃貸人と賃借人との相互の信頼関係に基いて成立するものであるから,賃借人が一個の賃貸借契約で各独立の二棟の建物を賃借し,そのうち一棟についてのみ無断転貸をした場合でも,他に特段の事情のないかぎり,賃貸人に対して著しい背信行為があるものとして,賃貸人は民法六一二条によって右賃貸借契約全部の解除権を取得するものと解すベきであると判示したことは正当であって,原判決には所論の違法はない。
よって,民訴四〇一条,九五条,八九条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官島保,裁判官河村又介,同小林俊三,同垂水克己

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