再婚相手と子が養子縁組した場合の養育料免除時期に関する抗告審決定

平成28年12月6日東京高裁決定

主   文

1 原審判を次のとおり変更する。
(1)当事者間の横浜地方法務局所属公証人○○○○作成の平成25年×月×日付け平成25年第××号「離婚給付等契約公正証書」第2条及び第3条の平成27年4月1日以降の部分を次の(2)とおり変更する。
(2)抗告人の相手方に対する未成年者らの養育費の支払義務を免除する。
2 手続費用は,原審及び当審とも各自の負担とする。

理   由

第1 抗告の趣旨及び理由等
抗告の趣旨及び理由は,別紙抗告状(写し)及び抗告理由書(写し)各記載のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙答弁書(写し)記載のとおりである。

第2 事案の概要等
1 抗告人と相手方は元夫婦であるが,両者間の子である未成年者らの親権者を相手方と定めて離婚した。本件は,相手方が再婚し,再婚相手と未成年者らとが養子縁組をしたことを理由として,抗告人が,相手方に対し,離婚の際に作成された公正証書により合意された抗告人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費を零とすることを求める事案である。

原審判は,抗告人が相手方に対して支払うべき平成28年3月分以降の未成年者らの養育費を零(支払義務の免除)と変更したところ,抗告人が,その減額の始期を不服として本件抗告をした。

2 前提事実及び当事者の主張は,原審判の「理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原審判を次のとおり訂正する。
(1)原審判3頁17行目の「すなわち,」の次に「未成年者らが相手方の再婚相手である相手方の夫と養子縁組をしたという養育費の減額事由の発生は,親権者である相手方には明らかである一方,非親権者である抗告人にとっては戸籍等を調査しなければ判らない事情であり,養育費の減額の協議は、親権者及び非親権者の双方から申入れが可能であるところ,上記のような養子縁組に関する情報の不平等性に鑑みれば,養育費の減額の申入れをしなかった場合の責めは,親権者が負うのが公平である。また,」を加える。

(2)原審判3頁19行目の「また,相手方は,」を削る。

第3 当裁判所の判断
1 判断の前提となる認定事実は,原審判の「理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1のとおりであるから,これを引用する。

2 両親の離婚後,親権者である一方の親が再婚したことに伴い,その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合,当該子の扶養義務は,第一次的には,親権者及び養親となった再婚相手が負うべきものであるから,かかる事情は,非親権者が親権者に対して支払うべき子の養育費を見直すべき事情に当たり,かつ,非親権者が親権者に対して支払うべき子の養育費は零となる。したがって,本件公正証書により合意した抗告人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費は零となる。

3 次に,抗告人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費を零に減額すべき始期について検討すると,かかる点についての判断は,家事審判事件における裁判所の合理的な裁量に委ねられているところ,累積した過去分を一度に請求される危険(養育費請求又は増額請求の場合)や既に支払われて費消した過去分の返還を求められる危険(養育費減額請求の場合)と明確性の観点から,原則として,養育費の請求,増額請求又は減額請求を行う者がその相手に対してその旨の意思を表明した時とするのが相当である(なお,本件公正証書には「双方の協議により,前項の養育費額を変更することができる」(第2条2項)と記載があり,その文言からすると,双方の協議が成立して初めて養育費額が変更されるようにも解されないではないが,養育費額を変更すべき客観的な事情が発生し,当事者の一方がその変更を求めたにもかかわらず,他方がこれを承諾しない限り養育費額が変更されないというのは,合理的ということはできないから,家事審判事件において養育費額を変更すべき事情があると判断される場合,上記のとおり,養育費の増額請求又は減額請求を行う者がその相手に対してその旨の意思を表明した時から養育費額を変更するのが相当である。)。

本件では,相手方が再婚したことに伴って未成年者らが相手方の夫と養子縁組をしたのは平成26年5月×日であるところ,前記認定のとおり,抗告人は,同年7月頃には,かかる事実を知りながら養育費の支払を継続しているものの,同年11月×日付け準備書面において,同年5月×日付けの上記養子縁組以降は本来抗告人に養育費の支払義務がない旨の主張をしており,平成27年4月には,その支払を打ち切っていることが認められ,抗告人は,相手方に対し,その後,養育費の支払をしていないことに照らすと,同月には養育費の額を零とすることを求める抗告人の意思が明確に示されたものというべきであり,抗告人は,相手方に対し,遅くとも同月には,養育費の額を零とすることを黙示的に申入れたと認めることができる。

したがって,本件においては,同月から抗告人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費を零(支払義務の免除)に減額するのが相当である。

4 以上によれば,本件公正証書第2条及び第3条の平成27年4月1日以降の部分について,抗告人の相手方に対する未成年者らの養育費の支払義務を免除すると変更するのが相当であるところ,これと異なる限度で原審判は相当でないから,上記のとおり原審判を変更することとして,主文のとおり決定する。

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