交通事故後のPTSD発症認容裁判

平成24年4月18日京都地裁判決(自保ジャーナル・第1878号)

主  文

1 被告は、原告に対し、1219万8885円及びこれに対する平成15年3月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。
4 この判決の1項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、3962万443円及びこれに対する平成15年3月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 仮執行宣言
(被告は、担保を条件とする仮執行免脱宣言を求めた。)

(中略)

第三 当裁判所の判断
1 事故態様(責任原因、過失割合)

(中略)

(7) 逸失利益(原告主張額は前記第二、2、(6)、①、イのとおり)
① 後遺障害の内容、程度

ア 頸部・腰部由来の症状及び顔面部の醜状痕
前記第二、1、(5)、①の損害保険料率算出機構の認定のうち、同ア、イ、ウの認定判断が不当であることを窺わせる証拠はない。同アについては、後記のとおり、労働能力喪失の有無、程度が問題となり得るが、少なくとも自賠責保険における障害 等級認定として、これを別表第二の12級14号と判断することに誤りはない。

イ PTSD
(ア) 証拠(略)によれば、Fクリニックの丙川三郎医師(精神科)は、原告のPTSDに関し、次のとおり診断したことが認められる。
a PTSD症状は本件事故直後からそろっていたが、明らかなフラッシュバックは同事故から半年経過後に出現した。車の音によって強い恐怖感、動悸、体の硬直等の生理的反応が出現する。事故の時の感覚のフラッシュバック等の侵入的回想が続いている。事故のことを考えるのを強く避け、事故以来、自転車に乗らないなどの回避も続いている。事故後、不安と悲哀感はあるが、幸福感や充実感が感じられなくなり、感情の鈍化がある。集中力低下、過度の心配等過覚醒も続いている。些細なことで不安が強くなり、気分が落ち込みやすい。自分の身体の調子や車の不安ばかりに注意が行きがちで他への関心が不足している。集中力が低下しているため作業の持続が困難である。通院はしばしば遅れがちである。対人関係では他者への不信感、不安が強くなっており、上手くいかないことがある。外出時は、車のために気持ちが動揺し、考えが混乱しがちで危機対応が困難である。事故や車以外のストレスに対しても自力での解決が困難となっている。

現在の症状は、抑うつ気分、不安・焦燥、侵入的回想、回避、感情の鈍化、過覚醒で、残存症状の中核は、再体験、回避、過覚醒である。

b 能力低下の状態は次のとおりである。
(a) 適切又は概ねできるもの
適切な食事摂取、身辺の清潔保持
(b) 時々助言、援助が必要なもの
仕事、生活、家庭に関心を持つこと。仕事、生活、家庭で時間を守ること。仕事、家庭において作業を持続すること。仕事、生活、家庭における他人との意思伝達。仕事、生活、家庭における対人関係・協調性。
(c) 頻繁に助言、援助が必要なもの
屋外での身辺の安全保持・危機対応。仕事、生活、家庭における困難・失敗への対応。

c PTSDは、2年以上経つと改善が困難になる。原告の場合、3年以上症状が持続しており、薬物療法を試みたが効果は限られており、現在の症状と機能障害が今後も残ると考えられる。

(イ) 検討
上記のとおり、原告には、抑うつ気分、不安、侵入的回想、回避、感情の鈍化等の精神症状があり、屋外での身辺の安全保持・危機対応及び困難・失敗への対応の2項目につき頻繁に助言、援助が必要であり、仕事、生活、家庭に対する関心、仕事、生活、家庭における時間の遵守、仕事、家庭における作業の持続、仕事、生活、家庭における他人との意思伝達及び仕事、生活、家庭における対人関係・協調性の5項目について時々助言、援助が必要な状況にある。これを障害等級認定基準(昭和50年9月30日基発第565号。平成15年8月8日改正基発第0808002号)別添1「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」における非器質性精神障害の認定基準に当てはめると、「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」として、労基法施行規則別表第2及び労災保険法施行規則別表の障害等級12級の12とされることなどにかんがみると、原告は、PTSDのため日常生活において頻繁に支障を生じる状況にあり、就労に当たっては相当の配慮を要し、別表第二の12級13号(本件事故当時は12号)に該当するものと認めるのが相当である。

ウ 上記ア、イによれば、原告の後遺障害は、別表第二の併合11級に相当するものというべきである。

② 労働能力喪失率及び喪失期間
労働能力喪失率の判断に関しては、外貌醜状の評価が問題となり得るが、原告が子どもを対象とする英語教室を長く経営し、今後も再開する可能性があると考えられることからして、原告の前額部の挫創痕は労働能力に影響するというべきであり、外貌醜状による労働能力喪失の程度につき被告も積極的に争っていないことも考慮し、原告の後遺障害による労働能力喪失率は20%と認める。

頸部由来及び腰部由来の障害による労働能力喪失期間は数年程度と見るのが相当であるが、それを経過した後も全体の労働能力喪失率が回復するとは解されない。後記のとおり、PTSDは、一般には予後が良好で、将来症状が大幅に改善する可能性があるとされるが、原告の場合、発症から症状固定までに3年半以上経過しており、大幅改善の蓋然性が高いとはいえない。
以上により、症状固定時(47歳)から67歳まで20%の労働能力の喪失を認める。

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