賃貸借保証会社賃料支払があっても解除が認められた地裁判例

平成25年5月29日神戸地裁尼崎支部判決

主  文

1 被告は,原告X1に対し,別紙物件目録記載の建物を明け渡せ。
2 被告は,原告X2に対し,39万5000円を支払え。
3 訴訟費用は,被告の負担とする。

事 実 

第一 当事者の求める裁判
一 請求の趣旨

主文1ないし3項と同旨
仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二 当事者の主張
一 請求原因

1 原告X1(以下X1という。)は,被告との間で,平成23年12月15日,X1を賃貸人,被告を賃借人として,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)について,次の約定で賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,本件建物を引き渡した。
① 賃貸借契約 平成23年12月25日から2年間
② 賃料 月額7万1000円
③ 共益費 月額5000円
④ 水道代 月額2000円
⑤ 支払方法 上記②ないし④を毎月末日までに翌月分を振り込む
⑥ 契約解除 賃料,共益費または電気・ガス・水道等の諸料金を2ヶ月以上滞納したときは,賃貸人は契約を解除することができる。

2 原告X2(以下X2という。)は,被告との間で,本件賃貸借契約に基づき被告が負う債務について,平成23年12月25日,原告X2に次の約定で保証することを委託する契約(以下「保証委託契約」という。)を締結し,原告X2は,同日これを受託した。
① 保証する範囲 賃料,共益費,管理費,水道光熱費等
② 代位弁済 被告が本件賃貸借契約に基づく金銭債務の履行を遅延したときは,原告X2は,被告に対して通知することなく,その全部または一部を代位弁済することができる。
③ 保証事務費用等 被告は,原告X2が代位弁済を行ったときは,直ちに代位弁済金のほかに,代位弁済1回につき1000円の保証事務手数料を支払わねばならない。

3 原告X2は,原告X1に対し,平成23年12月25日,本件賃貸借契約に基づく被告の債務について保証する契約を結んだ。

4 被告は,原告らが再三にわたり催告しているにもかかわらず,本件賃貸借契約に基づく賃料等のうち,平成24年4月分から同年8月分を支払わない。
被告は,平成24年2月分から毎月滞納を繰り返し,原告らは催告を繰り返すが,賃料滞納は常態化したままであり,未払賃料は増加の一途をたどる。
原告X1は,被告に対し,平成24年4月11日に書面受領後5日以内に滞納賃料等の支払を催告し,支払がない場合は本件賃貸借契約を解除する旨通告する内容証明郵便を送付したが,被告は同郵便を受領しなかった。原告X1は,同月21日に,同内容の書面を普通郵便で送付し,同月28日本件賃貸借契約は解除された。

5 仮に,上記解除が無効であっても,原告X1は,被告に対し,本訴状をもって解除する。

6 また,原告X1は,本訴の提起後も被告から賃料の支払いがなく,被告は,平成24年9月分から平成25年3月分までの7ヶ月分の賃料を支払わない。被告は,保証人であるZ(以下Zという。)に賃料を請求しろと主張し,自ら賃料を支払う意思がないことは明らかである。
したがって,原告X1と被告との間の信頼関係は完全に破綻した。
そこで,原告X1は,平成25年3月4日の第2回口頭弁論期日で陳述した第1準備書面において,本件賃貸借契約解除の意思表示をする。

7 原告X2は,保証委託契約に基づき,原告X1に対し,被告のために平成24年4月9日,同年5月10日,同年6月7日,同年7月9日及び同年8月7日に,各7万8000円ずつ合計39万円を代位弁済した。
原告X2は,被告に対し,再三代位弁済金を支払うよう催告するが,支払がない。

8 よって,原告X1は,被告に対し,本件賃貸借契約の終了に基づき,本件建物の明渡を求め,原告X2は,被告に対し,保証委託契約に基づき,代位弁済金39万円と保証事務手数料(5回分)5000円の支払を求める。

二 請求原因に対する認否
請求原因1及び2は認め,同3は不知。同4のうち再三催告がなされたこと及び普通郵便で解除の通知がなされたことは否認し,その余は不知。家賃は保証人であるZが支払うことになっており,被告は支払状況がわからないため,原告X2から電話があった際にZに請求して欲しいと述べたのみである。同5及び同6は争い,同7のうち被告に対して再三催告したことは否認し,その余は不知。

三 抗弁
1 信頼関係破壊に至らない特段の事情の存在

原告X1は,被告に対し,一度電話したのみでその後督促をしようとせず,被告が精神疾患を有しており,訴訟に対応できないことを知りながら,いきなり本件賃貸借契約の解除及び明け渡しを請求して本訴を提起しており,被告の賃料不払いによって信頼関係が破壊されたとはいえない。

2 権利濫用
仮に信頼関係が破壊されていたとしても,上記1のような事情があるので,被告が精神疾患を患っていることを奇貨として一方的に行う解除及び明け渡し請求については,権利の濫用であって許されない。

四 抗弁に対する認否
信頼関係破壊に至らない特段の事情については否認し,権利の濫用は争う。

理  由
第三 当裁判所の判断
一 請求原因1及び2は,当事者間に争いがない。


1 甲第3号証によれば,請求原因3の事実は認めることができる。

2 被告は,賃料を支払った事実を主張立証せず,弁論の全趣旨によれば,請求原因4及び6のうち,被告が平成24年4月分から平成25年3月分まで1年分の賃料を支払っていないことが認められる。
甲第7号証の1及び2と弁論の全趣旨によれば,請求原因7の事実を認めることができる。

3 甲第5号証及び6号証によれば,請求原因4のうち,原告が催告及び解除を記載した内容証明郵便を送付したことは認められるが,被告はこれを受領しておらず,他に,被告が原告から未払賃料について本訴提起前に催告を受けた事実を認めることはできない。
しかしながら,本訴で原告らは未払賃料を請求しており,平成24年9月13日に訴状の送達を受けたことにより,被告は,未払賃料について催告を受けたと認めることができる。
そうすると,原告X1の第2回口頭弁論期日で陳述した準備書面によってなされた本件賃貸借契約の解除の意思表示は有効になされたことになる。

三 抗弁について
1 弁論の全趣旨によれば,被告は,パニック障害に罹患しており,パニック発作,対人恐怖,抑うつ状態が存在し,外出困難で日常生活にかなり支障があること,裁判への出頭は困難と診断されていることが認められる。

2 しかしながら,口頭弁論終結時において,被告の賃料不払いは1年間にも及んでおり,保証人であるZに請求するよう求めるなど,自ら賃料を支払うことは今後も難しいと認めるのが相当である。
なお,原告らが,被告の疾患について,本訴提起前に知っていたことを認めるに足る証拠はない。
そうすると,原告X1と被告との間の信頼関係は,破綻したものといわざるを得ず,破綻に至らない特段の事情の存在は認められない。

よって,抗弁1には理由がない。

3 抗弁2については,被告が転居することになると,被告の病気との関係でいろいろ不都合が生じることが予想されるが,被告の疾患は原告らに起因するものではなく,不都合については福祉の領域で対応を検討すべき問題であり,原告らの請求が権利の濫用に該当するということはできない。

四 よって,請求原因は認めることができ抗弁には理由がないから,原告らの被告に対する請求には理由があり、請求をすべて認容することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。なお,仮執行宣言は,相当ではないから付さないこととする。

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