審判前の保全処分としての仮の監護者の指定と子の引渡を求めるた保全処分

平成24年8月9日前橋家裁太田支部審判

主文

一 未成年者の監護者を申立人と仮に定める。
二 相手方は、申立人に対し、未成年者を仮に引き渡せ。

理由

第一 申立ての趣旨
主文と同旨

第二 事案の概要
本件は、申立人が、未成年者を連れて自宅を出て、相手方と別居したところ、相手方から未成年者との自宅宿泊を伴う面会交流を求められ未成年者を相手方に一時的に預け、翌日相手方が連れ戻った未成年者が申立人の実家の玄関先で「パパがよい」と泣きながら言ったためそのまま未成年者を連れ戻ったとして、相手方に対し、未成年者の監護者の指定及びその引渡しを求めた事案である。

第三 当裁判所の判断
一 一件記録によれば、次の事実が認められる。
(1) 申立人(昭和54年○月○日生)と相手方(昭和52年○月○日生)は、平成19年4月28日婚姻し、平成20年○月○日長男A(未成年者)をもうけた。
申立人は、出産後から未成年者を母乳で育てた。

(2) 申立人と相手方は、相手方住所地に新居を購入し、平成21年2月1日から、未成年者とともにそこで生活をしていた。
なお、未成年者の養育及び監護について、非番の時等に相手方がすることもあったが、主として申立人が行ってきた。
平成22年7月24日から同月30日まで及び平成23年2月28日から同年3月2日まで未成年者が入院した間、申立人は、病院につきっきりで未成年者を看病した。

(3) 相手方は、太田市所在のa株式会社において、次のとおり三交代制の勤務をし、基本的には土曜日日曜日は休みである。年収は440万円ほどの見込みである。住宅ローンの残高は2739万7968円で、毎月の返済額は7万2192円で、賞与月は16万7577円である。
一直(Mシフト) 08:15~16:40
二直(Aシフト) 16:15~00:40
三直(Nシフト) 00:15~08:40
申立人は、○○店において、午前8時30分から午後3時までパート勤務をし、一か月16日ないし21日程度勤務している。一か月8万円程度の収入を得ている。

(4) 申立人は、相手方から一人で行動することにつき束縛されたことや育児方針を異にしたこと等から、相手方に対する信頼や愛情が薄れ、相手方が自己の言動を改めなかったため、我慢の限界を感じた。平成24年4月上旬にパート先で世話になっている人の送別会に参加したい旨相手方に相談したところ、そういうところにいくのはおかしいと反対され、以前から揉めごとが絶えなかったこともあり、平成24年3月27日、離婚届に署名押印したものを置いて、未成年者を連れて申立人の実家に帰り、以後別居している。
申立人と相手方とは、未成年者を別居期間中は申立人が監護することをお互いに了解した。
申立人の実家には、申立人の父(60歳)母(58歳)及び兄(35歳)が同居している。

(5) 未成年者は、平成22年5月1日から、b保育園に通園し、平成24年4月から同保育園の三歳児クラスに通っている。申立人と相手方とが別居する以前は未成年者の通園には殆ど申立人が付き添った。
申立人は、毎朝、未成年者を同保育園に送り、その後○○でアルバイトをし、夕方お迎えの時間に未成年者を迎えに行った。別居後も、平成24年5月25日までの間は送迎はすべて申立人が行っていた。
平成24年4月21日、相手方は、未成年者と外出を伴う面会をした。

(6) 平成24年5月23日午後8時ころ、相手方は、申立人の実家を訪れ、申立人の父に対し、「申立人の口からきちんとしたことが聞きたい。Aと遊びたい。」と述べた。相手方は、そこで、未成年者と会って抱いた。

(7) 平成24年5月26日正午ころ、相手方は、未成年者と遊ぶ約束をしているからと言って、未成年者を申立人の元から連れ出した。
相手方は、申立人に対し、電話で、同日夕方、「Aは今寝ているのでまだ帰れない。」と、同日夜、「子供が、『パパがいい、帰りたくない。』と言っている。」と連絡した。これに対し、申立人は、「それなら泊まってきてもよいよ。」と言った。

(8) 平成24年5月27日、何時になっても未成年者が帰ってこないので、申立人の父が相手方に連絡すると、「Aが遊んでいるから帰れないです。」と相手方から言われた。
同日昼ころ、申立人の父が相手方に「Aを連れてきてください。」というと、少しして、相手方は、未成年者を申立人の実家に連れてきた。その際、未成年者が玄関先で「パパが良い。」と泣きながら言い、相手方も玄関先で涙を流して未成年者を手放さないようにしていた。
申立人の父は、そんな姿を見て、「1日2日面倒を見てやりなさい。」と声をかけた。
その後、相手方は、申立人の父に対し、申立人が使用しているデリカを貸して下さいと連絡し、デリカを借りた。
申立人は、相手方に対するそれまでの恐怖心から、もう未成年者を返してもらえないと思いこみ、タンスに入っている洋服類と未成年者に関わるものを書いて渡した。
相手方は、未成年者を、相手方の静岡の実家に連れて行った。

(9) 平成24年5月28日から平成24年6月10日まで、未成年者は、b保育園を欠席した。ただし、6月7日の歯科検診には出席した。同月11日以降、同月26日発熱で欠席した以外は、出席した。

(10) 平成24年5月29日午後6時30分ころ、デリカと相手方の父の車が自宅にきているのを発見して、申立人は、両親とともに、鍵のかかっていなかった自宅の中に入ったところ、相手方から「連絡もしないで何をしにきたんですか。」と言われたので、「Aに会いに来ました。」と言ったところ、相手方から申立人の両親に対し「あなたたちは出て行って下さい。」と言われたため、申立人も相手方の両親に対し「両親を出すのであればあなたの親も出て行ってください。」と言った。
すると、相手方は、申立人及びその両親に対し、「Aが怯えているじゃないですか。」と言ったので、その後、両親がでて、申立人のみが残った。相手方の父は、申立人に対し、「家の支払はどうするんです。」と言い、「Aは片親になるんですよ。」と言い続けた。

そこで、申立人は、「私はあなたたちと話に来たのではなくて子供と話に来たんです。」と言った。申立人は、未成年者を4年間ほとんど一人で育ててきたのに、未成年者が「ママ」と言わず、笑顔の一つすら見せなかったことに衝撃を受けた。
申立人は、自宅から帰る際、荷物がまだあるにもかかわらず、相手方から、「もうだいたいの荷物は持っていったでしょ、家の鍵は返してよ。」と言われたが、まだ荷物が残っていることなどから、鍵を返さないで自宅から申立人の実家に帰った。
現在、相手方は、両親(父65歳、母63歳)を静岡の実家から呼び、相手方不在のときは未成年者の面倒をみてもらっている。母は、平成24年7月6日まで太田市に滞在していたが、現在一時的に静岡にもどった。

(11) 平成24年6月1日、相手方の代理人弁護士は、申立人に対し、「受任のご連絡」を送付し、直接相手方と連絡をとることを控えるよう求め、未成年者を預かったこと、未成年者が戻りたくないとの意思を有しているので、離婚となった場合には相手方において養育したい旨等を通知した。

(12) 平成24年6月7日、申立人の代理人弁護士は、相手方の代理人弁護士に対し、「受任通知書及び要望書」を送付し、未成年者について面会交流として相手方に預けたに過ぎないこと、未だに返してもらえないこと、相手方が自分で育てるとまでは言っていないこと等から、直ちに未成年者を申立人に引き渡すことを要望した。

(13) 平成24年6月8日、相手方の代理人弁護士は、申立人の代理人弁護士に対し、申立人側の要望には応じられないこと、相手方において離婚調停を申立て、その手続の中で解決を図るべきものと思料している旨回答した。

(14) 平成24年6月14日、申立人は、当裁判所に、本件保全処分を申し立てた。

(15) 平成24年7月9日、当裁判所は、申立人及び相手方について審問した。

二 監護者の指定について
上記認定事実によれば、未成年者の主たる監護者は、生後一貫して申立人であること、別居期間中の監護者について申立人とすることが申立人及び相手方間で了解されたことが認められ、その監護に支障があったことをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はない。
したがって、未成年者の監護者を申立人と仮に定めるのが相当である。

三 子の引渡しについて
上記認定事実によれば、未成年者の主たる監護者は、生後一貫して申立人であり申立人が殆ど未成年者を養育してきたこと、別居期間中の監護者について申立人とすることが申立人及び相手方間で了解されたこと、未成年者を相手方が申立人から預かったのは面会交流のためであったこと、しかるに相手方は面会交流の目的が終了した後も、未成年者を返すことを拒んでおり、連れ去りに等しい状況にあること、未成年者が四歳と幼く母親による養育を必要としており申立人のもとで養育することが未成年者の福祉にかなうこと、相手方は三交代制の勤務をしているため未成年者を監護養育することは困難であることが認められ、上記面会交流以前に申立人による未成年者の養育に不都合があったことや、未成年者を申立人に返すことにより未成年者の健康が損なわれたり未成年者の福祉に反することをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はない。なお、相手方は未成年者が相手方との生活を望んでいると主張するが、未成年者は4歳と幼くその言動は周囲に影響を受け、自立した自由意思での発言と認めることは困難であり、その言動のみをもって上記認定判断を覆すのは未成年者の福祉の見地からして相当でない。

また、上記認定事実によれば、未成年者の福祉のため、未成年者を申立人に引き渡す緊急の必要が認められる。
したがって、相手方は申立人に対し、未成年者を仮に引き渡すべきものである。

四 よって、主文のとおり審判する。

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