自賠責14級が頚椎椎間板ヘルニアを理由に12級に認定された判決

平成10年1月29日大阪地裁判決

二 争点3ないし5について(原告の傷病・治療経過、原告の損害額、素因減額)
1 原告の傷病・治療経過

証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(一) 原告(昭和26年3月2日生)は、本件事故当時、主婦業の傍らパートタイムで大阪資生堂株式会社に勤務し、化粧品の荷詰の仕事に従事していた。本件事故前、右主婦業及びパート業の上で特段支障となるものはなかった。本件事故は、原告が自宅から右勤務先へ行く途中に起きたものである。

原告は、本件事故当日の平成4年2月17日、医誠会病院にて受診し、頭部外傷I型、顔面打撲、背部打撲、骨盤打撲、右肘打撲、右足関節打撲、左下肢・右大腿打撲、頸椎捻挫の傷病名で、診療が開始されたが、初診時の頭部、骨盤、仙骨、右肘、左足関節のX線写真ではいずれも異常は認められず、翌日の頸椎のX線写真でも異常は認められず、頸部痛があるが、上肢のしびれはなく、指の微細運動は良好であった。その後も、原告は、頭痛、頸部痛、右肩痛、腰痛等を訴え、同年2月28日、脳外科を受診したが、神経学的所見としては、運動神経脱落症状なく、CT上も異常なく、脳に心配はないであろうと診断された。同日から理学療法が開始され、同年3月12日からは頸椎牽引も開始されたが、同月19日のジャクソンテストはマイナスであり、同月23日に実施されたMRI検査の結果は、第5、第6頸椎間、第6、第7頸椎間に変形性脊椎症性変化及び椎間板ヘルニアの印象ありと報告された。同年4月9日のジャクソンテスト、スパーリングテストはいずれもマイナスであったが、同月15日のスパーリングテストは右がプラスであった。その後も、頭痛、右頸部痛、腰痛等を繰り返し訴え、同年7月4日からは腰椎牽引も開始されたが、同年9月5月には症状固定に近いと診断され、同月10日まで通院した(実通院日数160日)。

(二) その後、原告は、平成4年9月2日から行岡病院に転医し、外傷性頸腕症候群、腰部捻挫の傷病名で通院を開始し、右手のしびれ感を訴え始め、その外、右前腕から肩のしびれ感、放散痛を訴え、右第6、第7頸神経根障害と診断された。翌日から理学療法(簡単)が開始されたが、同年12月25日には左手から前腕尺側しびれ感を訴え、平成5年1月8日にはしびれ感は左手のみであるとされ、同年2月16日に大野記念病院にて実施されたMRI検査の結果は、第5、第6頸椎間左側に椎間板突出がみられ、脊髄をやや圧迫していると報告された。

同月19日における上腕二頭筋反射、上腕三頭筋反射は右左ともに異常はなく、ワルテンベルグ反射はマイナスであり、その後もこれらの反射は概ね正常であり、同年9月6日には、再度大野記念病院にてMRI検査が実施されたが、第5、第6頸椎間及び第6、第7頸椎間に椎間板突出がみられると報告された。同年9月13日から同月16日まで4日間、筋電図、脊髄造影検査等のため検査入院となった。同年10月14日の徒手筋力テスト(上肢、下肢)に関し、担当者から、テストを進行していくにつれて上下肢ともに痛みが増強し、運動不可となり、力を入れさせるとのどがつまると言われる、テスト以外の動作を見ていると可能な運動でもテストになると不可能となることもあり、今回のテストの信頼性もわからない旨の報告がされている。後記症状固定日までの実通院日数は292日である。

(三) この間、原告は、行岡病院で頸椎椎間板ヘルニアを指摘され、手術を念頭に大阪厚生年金病院を紹介されたため、平成5年2月26日、同病院の診察を受け、同年3月25日から同月30日まで6日間入院した(実通院日数2日)。主訴は、両手のしびれと痛み、喉の圧迫感、咳、腰痛であった。同病院の医師によると、原告の症状は多彩で身体検査ではよくわからないが、ただ、右梼骨筋反射の低下は認められるとされた。同月6日実施の脊髄造影検査で、第6、第7頸椎間に不完全ブロックが認められたが、脊髄の圧迫軽度であり、また、CT脊髄造影検査で、第5、第6頸椎間の左に椎間板髄核ヘルニアが認められ、両上肢のしびれと痛みはこのヘルニアによるものと思われるが、前頭部の違和感、咳などはヘルニアによるものではないとされた。そして、神経学的所見と脊髄造影の所見とが一致しないと思われるから、当該時点では手術適応なしと診断され、退院となった。

(四) また、原告は、行岡病院から紹介され、関西労災病院にも、平成5年10月18日と同年11月18日に通院し(実通院日数2日)、さらに、行岡病院から頭部硬膜外ブロック目的で紹介された大阪大学医学部附属病院にも、同年12月8日から平成6年2月9日まで通院したが(後記症状固定日までの実通院日数6日)、頸部硬膜外ブロックの効果はあまりなかった。

(五) 右の外、原告は、佐々木整骨院に、平成4年6月17日から同年8月26日まで通院した。

(六) 行岡病院の速水医師は、平成6年3月31日をもって原告の症状が固定した旨の診断書を作成した。同診断書によれば、自覚的には、頸部痛、腰部痛があり、他覚症状及び検査結果としては、神経学的には右第6、第7頸椎神経領域の知覚鈍麻あり、MRIにて第5、第6頸椎間の椎間板ヘルニア軽度あり、X-P上第5、第6頸椎に後方骨棘ありとされている。

(七) 自算会調査事務所は、原告の後遺障害につき、14級10号に該当する旨の認定を行った。

以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2 症状固定時期、後遺障害等級
右事実を総合すれば、本件事故を原因とする外傷によって生じた原告の症状は、平成6年3月31日に固定し、その後遺障害は、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級表上、12級12号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当するものというべきである。

この点、被告らは、頸椎椎間板ヘルニアは本件事故によって生じたものではなく、本件事故による原告の症状は平成4年9月10日頃には固定していると主張する。

しかしながら、本件事故前には原告は特に支障を感ずることなく化粧品の荷詰の仕事に従事していたこと、原告は本件事故により転倒して路面に頭部等を打ったものであること等前認定事実に照らすと、原告の症状は経年性の頸椎椎間板変性に本件事故の影響が加わって生じたものとみるべきであるし、原告の症状の推移及び治療経過に照らすと、その症状固定時期は前認定のとおり認めるのが相当であるから、被告らの右主張を採用することはできない。

また、被告らは、原告の後遺障害は14級10号(局部に神経症状を残すもの)を越えるものではないと主張するが、原告には椎間板ヘルニアが認められること、両上肢のしびれと痛みはこれを原因とするものであること、両上肢のしびれと痛みが長期にわたって持続していることに照らすと、被告らの右主張も採用することはできない。

3 素因減額
被告らは、原告の後遺障害は経年性の頸椎椎間板変性に本件事故が作用して生じたものであるとして素因減額を主張するが、前認定事実によれば、右変性は加齢に伴って当然にその存在が予定されている程度のものであると認められるから、これを損害賠償の額を定めるにつき斟酌することは相当ではない。したがって、被告らの右主張を採用することはできない。

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