フランチャイズ契約違反に関する判例

平成27年12月22日東京地裁判決

主  文
1 被告Aは,原告に対し,被告B及び被告Cと連帯して,1037万5584円及びこれに対する平成26年11月5日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員を支払え。
2 被告Bは,原告に対し,1037万5584円及びこれに対する平成26年11月1日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員を(1037万5584円及びこれに対する同月3日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員の限度で被告Cと連帯して,また,1037万5584円及びこれに対する同月5日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員の限度で被告Aと連帯して)支払え。
3 被告Cは,原告に対し,1037万5584円及びこれに対する平成26年11月3日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員を(全額について被告Bと連帯して,また,1037万5584円及びこれに対する同月5日から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員の限度で被告Aと連帯して)支払え。
4 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
5 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

被告らは,原告に対し,連帯して2008万6024円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Aについて平成26年11月5日,被告Bについて同月1日,被告Cについて同月3日)から支払済みまで年1割2分5厘の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

原告は,別紙商標目録1ないし4記載の各登録商標(以下,これらを併せて「本件各商標」といい,本件各商標に係る各商標権を「本件各商標権」という。)の商標権者から本件各商標の独占的通常使用権の許諾を受けて使用しているところ,被告Aとの間において平成23年12月27日付けライセンス契約(以下「本件契約」という。)を,また,被告B及び同Cとの間において同日付け連帯保証契約(以下「本件各連帯保証契約」という。)を,それぞれ締結した。被告Aは,本件契約に基づき,ゴーゴーカレー大宮東口スタジアム(以下「本件店舗」という。)において,本件各商標を使用してカレー店の営業を行っていた。

本件は,原告が,被告Aにおいて本件契約が定めるロイヤリティの支払を複数回にわたり懈怠したため,被告Aの債務不履行を理由に本件契約を解除したにもかかわらず,被告Aにおいて本件契約の解除後も本件各商標の使用及び本件店舗におけるカレー店の営業を継続したことが,本件契約の定める競業避止義務及び商標等取扱義務に違反し,また,商標権侵害(不法行為)及び不正競争(不正競争防止法2条1条1号)に当たると主張して,被告らに対し,次のとおりの連帯支払を求める事案である。

(1) 被告Aに対し,①本件契約が定める競業避止義務に違反したことに基づく違約金として518万7792円,②本件契約が定める本件各商標等の取扱義務に違反したことに基づく違約金として518万7792円,③商標権侵害の不法行為(民法709条,商標法38条2項)ないしは不正競争(不正競争防止法4条,2条1項1号)に基づく損害賠償金として971万0440円,以上の合計額である2008万6024円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで約定利率である年1割2分5厘の割合による遅延損害金の支払を求める。

(2) 被告B及び同Cに対し,本件各連帯保証契約に基づき,上記(1)と同額の各支払を求める。

2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)
(1) 当事者

原告は,飲食店業,カレーの製造・加工販売,飲食店のフランチャイズ本部の運営等を目的とする株式会社(平成15年12月設立,資本金5500万円)である。原告は,本件各商標権を有している有限会社みやぢ(代表者は原告代表者と同一である。)から本件各商標の独占的通常使用権の許諾を受けている。本件各商標は,原告の営業表示として消費者の間で広く認識されている。

被告Aは,被告のフランチャイジーとして,平成24年2月から本件店舗で本件各商標を使用してカレー店の営業をしていた者であり,被告B及び被告Cは,いずれも,被告Aが原告に対して負担する債務につき,原告に対し,連帯保証した者である。(甲1,弁論の全趣旨)

(2) 本件契約等の締結及び営業の開始
ア 原告は,平成23年12月27日,被告Aとの間において本件契約を締結し,これによって,被告Aが本件店舗(住所は省略)において,原告のライセンシーとして,カレー店の営業を行うことを許諾した。なお,本件契約には,次の内容の条項が定められている。
(ア) 原告は,被告Aに対し,被告Aが原告の指定する商品を販売するために,本件店舗において,原告の商標・サービスマーク・その他の標章を使用することができる。(3条1項)

(イ) 被告Aは,原告に対し,本件店舗の総売上に5.5%を乗じた金額に,消費税を加算した金額をロイヤリティとして支払う。ロイヤリティの算定期間は,暦月の1日から末日までの総売上を基礎に算出し,被告Aは,翌月20日までに原告指定の口座に振り込む方法により支払う。ただし,金融機関が休日の場合は,翌営業日までに入金するものとする。(5条1項,2項,別紙1)

(ウ) 被告Aは,原告に対し,業務連絡,通達及び管理業務(売上管理,発注仕入管理,勤怠管理)に用いるシステムの使用料として,月額1万5750円(消費税込み)を支払う。システムの使用料は暦月の1日から末日までの分を,翌月20日までに原告指定の口座に振り込む方法により支払う。(6条)

(エ) 原告は,被告Aに対し,原告指定の商品を継続的に販売し,被告Aはこれを購入する。被告Aは,暦月の1日から末日までに原告が納品した商品の代金を,翌月20日までに原告指定の口座に振り込む方法により支払う。(7条1項,2項)

(オ) 被告Aは,本件契約終了後に原告の商標等を使用してはならない。(19条4項)

(カ) 「乙(判決注:被告A)が本条(判決注:19条)の定めに反した場合は,乙は,通常のロイヤリティとは別に少なくても違約金として違反が発生した直近月のロイヤリティの24ヶ月分を甲(判決注:原告)に対して支払うものとする。当該違約金は,甲から乙への損害賠償及び本条以外に定められた違約金の請求を妨げるものではない。」(19条5項。以下「本件違約金条項1」という。)

(キ) 「乙(判決注:被告A)(中略)は,本契約中並びに本契約終了後5年間は,甲(判決注:原告)の書面による承諾がない限り,甲と競合する事業に,経営,出資,従事等により関与してはならない。なお,乙が本条の定めに反した場合は,乙は,違約金として少なくてもロイヤリティの24ヶ月相当額を甲に対して支払うものとする。当該違約金は,これを上回る甲から乙への損害賠償及び本条以外に定められた違約金の請求を妨げるものではない。」(20条。以下,上記第2文及び第3文の定めを「本件違約金条項2」といい,本件違約金条項1と併せて「本件各違約金条項」という。)

(ク) 被告Aが次の各号の一つに該当するときには,原告は催告を要せず直ちに本件契約を解除することができる。(27条1項)
(8)号 本件契約に基づく金員の支払を怠ったときその他本件契約及びこれに付随する契約の各条項に違反したとき

(ケ) 被告Aは,本件契約及びこれに付随する契約により負担する債務の支払を期日までに履行しなかったときには,その遅延分につき年利12.5%の割合の遅延損害金を原告に支払うものとする。(30条)

イ 原告は,平成23年12月27日,被告B及び同Cとの間で,本件契約から生ずる被告Aの一切の債務について,被告B及び同Cがそれぞれ連帯して保証する旨の本件各連帯保証契約を締結した。

ウ 被告Aは,本件契約に基づき,平成24年2月15日から本件店舗において「ゴーゴーカレー」の店舗として本件各商標を使用してカレー店の営業を開始し,原告は,本件契約に基づき,被告Aに対し,システムの提供,指定商品の販売及び販促活動等を行った。(甲4)

(4) 未払ロイヤリティ等
被告Aは,本件契約に基づく平成26年1月分以降のロイヤリティ,商品代金及びシステム使用料等につき,次のとおり,その全部又は一部を支払っていない。
ア 平成26年1月分 163万0764円
イ 同年2月分 152万1892円
ウ 同年3月分 126万8716円
エ 被告Aは,同年3月31日,原告に対し,同年1月分及び2月分のロイヤリティ等の一部である33万0764円を支払い,同年4月21日,原告に対し,同年1月分ないし3月分のロイヤリティ等の一部である50万円を支払った。

(5) 本件契約の解除
原告は,平成26年4月23日,被告らに対して,同年1月分から3月分までのロイヤリティ,商品代金及びシステム使用料等合計409万0608円の不払を理由に本件契約を解除するとともに(本件契約27条1項8号による解除。以下「本件解除」という。),同額の支払を求める書面を送付し,同書面は,同月24日,被告A及び同Bに到達した。

(6) 本件解除後における営業等の継続等
被告Aは,本件契約の解除後も,平成26年8月26日まで,本件店舗の内外に本件各商標と同一の標章を多数表示し,本件店舗において「ゴーゴーカレー」の店舗としてカレー店の営業を継続した。
原告は,同年7月17日,東京地方裁判所に対し,商標法及び不正競争防止法に基づき,被告Aによる本件各商標と同一の標章の使用差止等を求める仮処分を申し立て,同裁判所は,同年8月14日,被告に対し,カレー店を営むに当たって本件各商標と同一の標章を付した店舗の看板等の使用を差し止めることなどを内容とする仮処分決定をした。原告は,さいたま地方裁判所執行官に対し,同仮処分決定に基づく保全執行を申し立て,同月27日,同保全執行が実施された。
(甲15,16,20~22。枝番のあるものは枝番を含む。以下同じ。)

3 争点
被告らは,①本件解除が無効であるから,被告Aによる本件各商標の使用等は本件契約に基づき原告から許諾されたものであるとして,本件契約上の義務違反(競業避止義務違反,商標等取扱義務違反),商標権侵害及び不正競争の各成立を争うとともに,②原告の損害額及び③本件各違約金条項の法的性質をそれぞれ争い,さらに,④被告Aの原告に対する不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とする相殺を主張する。
したがって,本件の争点は次の(1)ないし(4)である。
(1) 本件解除の有効性(争点1)
(2) 原告の損害額(争点2)
(3) 本件各違約金条項の法的性質(争点3)
(4) 相殺の成否(争点4)

4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(本件解除の有効性)について

[原告の主張]
被告Aは,自己の資金繰りが悪化したため,原告による再三の催告にもかかわらず,平成26年1月分ないし3月分のロイヤリティ等の支払をしなかったのであるから,本件契約27条1項(8)号に該当し,本件契約の解除事由となる。なお,フランチャイザーとフランチャイジーはいずれも独立の事業者であるから,本件解除の有効性を判断するに際して,契約当事者間の信頼関係が契約解除を正当ならしめるほど破壊されたかどうか,という基準によることは妥当ではない。

仮に,被告らの主張するとおり,本件契約の解除に契約当事者間の信頼関係を破壊するに足る事情が必要であるとしても,ロイヤリティ等の支払義務が本件契約における根幹をなす重要な義務であること,原告は被告Aに対し解除前に再三催告をしていることに鑑みれば,原告と被告Aの間の信頼関係が破壊されていることは明らかであって,本件解除は有効である。

しかるに,被告Aは,本件契約の解除後も本件各商標の使用及び本件店舗におけるカレー店の営業を継続したから,本件契約上の義務違反(競業避止義務違反,商標等取扱義務違反),商標権侵害及び不正競争(本件各商標の周知性には争いがなく,混同のおそれも存在する。)がそれぞれ成立する。

[被告らの主張]
本件契約は継続的契約であり,契約当事者間の信頼関係にその基礎をおいているから,契約当事者間の信頼関係が契約解除を正当ならしめるほど破壊されたかどうかという観点から契約解除の有効性が判断されるべきであるところ,次のような事情に照らせば,被告Aによるロイヤリティ等の不払が,被告Aと原告間の契約解除を正当ならしめるほど両者間の信頼関係を破壊したとまではいえず,本件解除は無効である。したがって,被告Aによる本件各商標の使用等は本件契約に基づき原告から許諾されたものであるから,被告Aには,本件契約上の義務違反(競業避止義務違反,商標等取扱義務違反),商標権侵害及び不正競争のいずれも成立しない。

ア 本件店舗は,開店当初から売上げが見込みを大きく下回り,そのことについて被告Aが原告のサポートを要請しているにもかかわらず,原告はそれに対して何も対応しないばかりか本部に関する情報をシャットアウトするなど,営業妨害に近い行為すら行った。また,原告は,原告に対して提起された別件訴訟における和解条項(乙8の第4項)を遵守しなかった。被告Aが原告に対して平成26年1月分以降のロイヤリティ等を支払わなかったのは上記のような原告の対応を理由とするものであって,正当な目的による不払である。

イ 原告が被告Aの要請に対応しない以上,他に対抗手段を持たない被告Aとしては,もはやロイヤリティ等の不払で原告の対応を引き出そうとするしか方法がない。被告Aは,開店から平成25年12月までの約1年10か月間はロイヤリティ等をきちんと支払ったのであり,支払わなかったロイヤリティ等の額及び期間は,原告がそれ以前に支払った額と期間に比して過大なものではなく,不払が原告の対応に対抗する手段として不相当であるとはいえない。

(2) 争点2(原告の損害額)について
[原告の主張]
本件店舗における平成26年3月の売上は393万0152円である一方,同月の原材料費はカレールーの代金とサテライトからの出荷食材代金を合計した143万0987円に当時の消費税(5%)を乗じた150万2536円であるから,1か月当たりの利益は上記売上から上記原材料費(税込)を控除した242万7616円であり,1日当たりの利益は7万8310円となる。

そして,被告Aの故意又は過失による商標権侵害行為又は不正競争行為がなければ,原告は,自らが営業するカレー店において利益を得ることができたのであるから,被告Aの商標権侵害行為又は不正競争行為による原告の損害額は,本件解除の翌日である平成26年4月25日から同年8月26日までの124日間に,1日当たり7万8310円を乗じた額である合計971万0440円となる。

[被告らの主張]
争う。

(3) 争点3(本件各違約金条項の法的性質)について
[原告の主張]
ア 本件違約金条項1の目的は,商標等取扱義務違反の制裁を定めることによって,商標等の適正な取扱いを確保して商標等が無断で使用され自他商品識別機能が害されることを防ぐことにあり,違約金とともに損害賠償の請求ができることも明示的に規定されている。また,本件違約金条項2の目的は,競業避止義務違反の制裁を定めることによって,競業避止義務の履行を確保し,営業秘密の保護を含むフランチャイザーとしての正当な利益を保護する点にあり,違約金以外に損害賠償請求ができることも明示的に規定されている。したがって,本件各違約金条項は,いずれも違約罰の定めであると解すべきである。

なお,本件違約金条項1においては,違約金の額につき「少なくても(中略)24ヶ月分」という定め方がされているが,違反の程度や行為の悪質性によって請求額を変動させることも考えられるのであり,定額又は固定された算定方法でないという一事をもって違約罰でないと解することはできない。

イ 原告が,訴状において,原告及び被告Aが本件契約を締結したこと,及び本件各違約金条項の定める違約金の性質が違約罰であることを明示的に主張したのに対し,被告らは,平成27年1月15日の本件弁論準備期日において「認める。」と認否している。ある性質の条項を含む契約を締結したことを認める陳述は,あくまで合意の事実についての自白であるから,自白の成立は妨げられないし,被告らによる自白の撤回は認められないから,裁判所は,違約罰の合意が存在したという事実に拘束される。

ウ 本件各違約金条項による各違約金額は,それぞれ,違反が発生した直近月である平成26年3月分のロイヤリティ額21万6158円の24ケ月分である518万7792円となるから,違約金の合計額は1037万5584円となる。

[被告らの主張]
争う。本件各違約金条項の定める違約金の性質は,違約罰ではなく,損害賠償の予定を定めたものと解すべきである。但し,平成26年3月分のロイヤリティ額が21万6158円であることは認める。
なお,原告は,本件各違約金条項がいずれも違約罰の定めであることを被告らが自白したと主張するが,被告らはあくまで本件各違約金条項の存在を認めたにすぎず,その解釈まで認めたものでないから,自白は成立していない。仮に自白が成立したとしても,錯誤に基づき真実に反してされたものであるから撤回する。

(4) 争点4(相殺の成否)について
[被告らの主張]
被告Aは,次のア,イのとおり,原告に対し,原告による「ぎまん的顧客誘引」又は「情報開示・提供義務違反」を原因とする不法行為に基づく損害賠償債権を有しているところ,後記ウのとおり,同債権を自働債権として,原告が本件訴訟において訴求する債権と対当額で相殺したから,原告に対する債務は消滅した。また,被告B及び同Cについても,保証債務の附従性により,原告に対する保証債務は存在しない。
ア 原告の被告Aに対する不法行為
(ア) 本件契約の実質はフランチャイズ契約であるところ,フランチャイズ契約においては,本部が,加盟者を勧誘するに際して,信義則上,フランチャイズ・システムの内容,契約上の権利義務関係,当該フランチャイズが対象とする商品・役務の市況動向の見通し等について,客観的かつ的確な情報を開示・提供すべき義務を負う。それにもかかわらず,原告は,被告Aに対し,売上や収益の予測を提示するに際し,被告Aが実際にそのような売上・収益を上げられるのかを検討せず,根拠ある事実や合理的な算定方法等に基づかない合理性の乏しい売上や収益の予測に関する情報を提供した。具体的には,原告は,当初,初期投資額は多くても2000万円と伝えながら,本件契約締結後,しかも本件店舗の賃貸借契約も済ませた後になって,当該金額を大幅に上回る3200万円以上という投資額を伝えているのであり,明らかな虚偽発言をしている。また,原告従業員は,被告Aが本件店舗の賃貸借契約を締結した後,被告Aに対し「この立地であれば月の売上は600万円は確実だ」と告げたが,売上は月額400万円程度が精いっぱいであった。

また,本件店舗の売上が原告従業員の述べた水準を大きく下回り,そのことについて被告Aが原告のサポートを要請しているにもかかわらず,原告は,ほとんど何もしようとしなかったばかりか,被告Aらを「ライセンスオーナー会」から一方的に締め出し,本部に関する情報をシャットアウトするなど,営業妨害に近い行為すら行っている。

(イ) 以上のとおり,原告が被告Aを勧誘した手法は,ぎまん的顧客誘引に該当し,また,原告には被告Aに対する情報開示・提供義務違反が認められるのであって,いずれの違法性も極めて大きいから,被告Aに対する不法行為が成立する。

イ 被告Aの損害額
被告Aは,原告が本件店舗の売上・収益予測をしっかりと行った上,その結果を開示・提供していたならば,本件店舗を開店することは決してなかった。したがって,原告による上記アのぎまん的顧客誘引ないし情報開示・提供義務違反と被告Aによる本件店舗の開店との間には相当因果関係があり,本件店舗を開店するために支出した費用(後記(ア))が被告Aにとっての損害に当たる。また,被告Aは,本件店舗を開店していなければ他の職について収入を得ていたはずであるから,当該逸失利益(後記(イ))も,原告のぎまん的顧客誘引ないし情報開示・提供義務違反と相当因果関係を有する損害である。したがって,これらを合算した4535万0248円が,被告Aの損害額である。

(ア) 本件店舗を開店するために支出した費用
下記①ないし⑱の合計額であり,2889万0248円である。

① 加盟申込金 52万5000円
② 加盟金 315万円
③ 本件店舗の保証金のうち償却費相当額 52万5000円
計算式は,保証金500万円×5.25%(年間償却率)×2年間(賃借期間)
④ 本件店舗の賃料のうち当初の1か月分 65万円
⑤ 本件店舗の賃借に係る礼金 65万円
⑥ 本件店舗の賃借に係る不動産仲介手数料 68万2500円
⑦ 開店のための工事費用 1260万円
⑧ 設計管理業務委託料 52万5000円
⑨ 什器備品及び券売機のリース料 733万9500円
計算式は,12万2325円(リース料月額)×12か月×5年(リース期間)
⑩ 卓上用品・厨房用品等購入費 85万4646円
⑪ 支援費用・移動交通費 17万9871円
⑫ チラシ・トッピングチケット購入費 28万3000円
⑬ 現場人件費・業務関係費 20万1437円
⑭ 厨房備品一式購入費 19万8924円
⑮ ゴーゴーTシャツ,ゴーゴー帽子等購入費 17万8500円
⑯ PC・FAXプリンター・ウイルスソフト購入費 14万6470円
⑰ 害虫駆除費 12万6000円
⑱ のぼり等購入費 7万4400円

(イ) 逸失利益
被告Aは,本件契約を締結してから本件店舗を閉店するまでの32か月間(平成24年1月から平成26年8月まで),他の職に就くことができなかった。被告Aは,本件契約締結時において37歳であったから,この32か月間の逸失利益は,1646万円(平成23年賃金センサス大学・大学院卒35~39歳の617万2500円に32か月/12か月を乗じた金額)となる。

ウ 相殺の意思表示
被告Aは,平成27年1月15日の本件弁論準備期日において,原告に対する上記ア,イに係る不法行為による損害賠償債権と,本件訴えにおいて原告が訴求する被告Aに対する債権とを対当額で相殺する意思表示をした。

エ 相殺禁止に当たらないこと
原告の本件訴訟における請求債権は,①競業避止義務違反に基づく違約金債権,②商標等取扱義務違反に基づく違約金債権,③商標の不正使用(商標権侵害,不正競争)に基づく損害賠償債権である。少なくとも上記①及び②は不法行為によって生じた債権ではないから,被告Aによる相殺のうちこれらを受働債権とするものについては,民法509条によって相殺を禁止されることはない。

[原告の主張]
ア 原告の被告Aに対する不法行為が成立しないこと
(ア) ぎまん的顧客誘引に当たらないこと
原告は,被告Aに本件契約の内容を説明し,被告Aはその内容を承諾して本件契約に係る契約書に署名押印しているのであって,原告が,被告Aに対し,事実に反する説明をし,又は不確定な事実を確定的に説明したことはない。また,被告Aは,本件契約と同日付けで,不動産の選定,店舗イメージ業務(総投資額を含む。),店舗の経営及び運営についての決定を自ら行い責任を負う旨の承諾書3通を作成し,原告に提出している。

したがって,原告の被告Aに対する勧誘等の行為がぎまん的顧客誘引に当たらないことは明らかである。

(イ) 情報提供義務違反がないこと
公正取引委員会のガイドライン(「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」)によれば,「加盟者募集に際して,予想売上げ又は予想収益を提示する本部もあるが,これらの額を提示する場合には,類似した環境にある既存店舗の実績等根拠ある事実,合理的な算定方法等に基づくことが必要であり,また,本部は,加盟希望者に,これらの根拠となる事実,算定方法等を示す必要がある。」とされており,フランチャイザーに対する予想売上又は予想収益に関する情報提供義務は規定されていない。したがって,原告は,被告Aに対し,売上・収益に関する情報提供義務を負っていない。

イ 被告Aの損害の有無及び額
(ア) [被告らの主張]イ(ア)記載の費用のうち,被告Aが,原告に対し,①加盟申込金及び②加盟金を支払ったことは認めるが,その余は不知。被告ら提出に係る見積書(乙11,14~22)は,いずれも実際の支出を示すものではないし,乙11の宛名は被告Aではなく株式会社コンツとなっている。

(イ) [被告らの主張]イ(イ)記載の逸失利益について,被告Aは,これまで行ってきた事業と本件店舗の営業を兼業して行うと述べていたから,本件店舗の営業を行っていたことによる損害は生じていない。仮に逸失利益が生じるとしても,被告Aは確定申告をしているから,確定申告書類を基準とし,営業開始直前の収入と本件店舗営業期間中の収入との差額を逸失利益算定の基礎とすべきである。

ウ 相殺禁止に当たること
仮に被告ら主張に係る自働債権が存在するとしても,本件訴訟で原告が請求する被告Aに対する債権(受働債権)には,不法行為に基づく損害賠償債権が含まれるから,少なくともこの部分については,民法509条により相殺が許されない。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前記前提事実に証拠(甲23,24,27,28,乙30,31,被告A本人,被告B本人)及び弁論の全趣旨を併せれば,以下の事実が認められる。
(1) 本件説明会

被告Aは,原告を取り上げたテレビ番組を見て原告に興味を持ち,平成23年9月15日,原告が原告の運営するフランチャイズシステムへの加盟希望者向けに実施した説明会(以下「本件説明会」という。)に被告Bと共に参加した。同説明会では,原告の関係者3名が説明を行ったが,フランチャイズシステムに関する説明は,このうち,原告から説明業務を委託された会社の従業員であるD(以下「D」という。)が担当した。

本件説明会において,原告は,参加者に対し,乙1と同一又はほぼ同一の資料を配布し,これをスライドに投影しながら,原告のフランチャイズシステムや店舗経営における売上や経費等についての説明を行った。本件説明会の終了後,被告AはDに対し,加盟から開店までの期間や開業資金の調達方法等について質問するなどした。

(2) 本件説明会後から本件契約締結までのやり取り
被告Aは,平成23年10月ころ,原告に対し,原告の運営するフランチャイズシステムに加盟する意思を伝えた。
被告Aが,これ以降,本件契約を締結するまでの間にDに送信した電子メールには次のとおりの記載がある。
ア 平成23年10月27日
「お電話でアドバイスいただいたように,予算的に厳しい部分があるので,関内石川町は,断ることになりそうですが,Dさんに相談させていただき」,「できれば横浜から出店したいのですが,よい物件に縁がなかった場合は大宮を最初の1店舗にしたいなと強く考えています。」

イ 同年11月29日
「昨日は面接をセッティングしていただきまして,ありがとうございます。」,「とても大変だったり苦しい時期もあるということを最悪のケースを踏まえて,きちんとご説明いただけたのかな,と思い,心にとめておきたいと思いました。」

ウ 同月30日
「既存のものを使えば,改装費を抑えて開業できるのかな?(かかっても2,500万円程度,うまくすれば2,000万円程度)と感じました。」,「別の仲介業者さまに,川口徒歩3分の物件も内覧させてもらいました。」

エ 同年12月20日
「投資計画表ですが,融資をうけるための見積りだと思うのですが,実際の金額はもう少し抑えることは可能でしょうか?(できれば3,000万円以下)」

(3) 本件契約の締結及び営業の開始
ア 原告は,平成23年12月27日,被告Aとの間において本件契約を締結し,これによって,被告Aが本件店舗(住所は省略)において,原告のライセンシーとして,本件各商標を使用してカレー店の営業を行うことを許諾した。なお,本件契約には,前記前提事実(第2,2(2)ア)で認定したとおりの内容の条項が定められている。

イ 被告Aは,本件契約に基づき,平成24年2月15日から本件店舗において「ゴーゴーカレー」の店舗としてカレー店の営業を開始し,原告は,本件契約に基づき,被告Aに対し,システムの提供,指定商品の販売及び販促活動等を行った。

(4) 未払ロイヤリティ等
被告Aは,本件契約に基づく平成26年1月分以降のロイヤリティ,商品代金及びシステム使用料等につき,次のとおり,その全部又は一部を支払っていない。

ア 平成26年1月分 163万0764円
原告は,平成26年2月10日ころ,同月20日を支払期限として上記金額を支払うよう求めた。しかし,被告Aは,同月20日,原告に対し「大雪の影響で予想を大きく下回る売り上げとなってしまいましたので,用意できませんでした」,「今月末日までにはお支払できる予定ですので,もうしばらくお待ちください」と連絡し,同日に支払をしなかった。原告は,「貴社の入金の遅れにつきましては当社の資金繰りにも影響を与える結果となっております。取り急ぎ支払い可能分をご入金願います。残額につきましては入金後に金額,時期についてお知らせ願います」と回答して支払を催促したものの,被告Aは,同月末日を経過しても支払をしなかった。

イ 平成26年2月分 152万1892円
原告は,平成26年3月8日ころ,同月20日を支払期限として,同年2月分のロイヤリティ等152万1892円に未払の上記アを加えた金額を支払うよう求めた。さらに,原告は,セキュリティサービス料金の減額やセキュリティサービスの解約等についても案内し,再度,上記金額の支払を求めたが,被告Aは,同月20日を経過しても支払をしなかった。

ウ 平成26年3月分 126万8716円
原告は,平成26年4月10日ころ,同月20日を支払期限として3月分のロイヤリティ等176万8716円に未払の上記ア,イを加えた金額を支払うよう求め,また,同月11日付内容証明郵便を送付して,再度,その支払を求め,同書面は,同月13日に被告Aに,同月19日に被告Bに,それぞれ到達した。しかし,被告Aは,同月20日を経過しても支払をしなかった。

エ 被告Aは,平成26年3月31日,原告に対し,同年1月分及び2月分のロイヤリティ等の一部である33万0764円を支払った。
原告は,被告らに対して,同年4月2日付け内容証明郵便を送付して,再度,同年1月分ないし3月分のロイヤリティ等の未払分を同年4月10日までに支払うよう催告し,同書面は,同月3日,被告A及び同Bに到達した。被告Aは,同月21日,原告に対し,同年1月分ないし3月分のロイヤリティ等の一部である50万円を支払った。

(5) 本件契約の解除
原告は,平成26年4月23日,被告らに対して,同年1月分から3月分までのロイヤリティ,商品代金及びシステム使用料等合計409万0608円の不払を理由に本件契約を解除する旨の書面を送付し,同書面は,同月24日,被告A及び同Bに到達した(本件解除)。

2 争点1(本件解除の有効性)について
被告は,本件契約が継続的契約であることから,その解除には契約関係の継続を困難ならしめる事由が必要であると主張するが,被告の主張を前提としても,ロイヤリティ等の支払義務が本件契約における重要な義務であること,被告Aの不払(一部不払も含む。)が3か月間にわたり,不払額の総額も400万円超(ただし,保証金充当前の金額)と多額であること,被告Aが原告の再三の支払催告に応じなかったばかりか,本件解除前には具体的な資金繰りの見込みを示すことさえしなかったこと(被告A本人)に照らせば,被告Aによるロイヤリティ等の不払が,本件契約の継続を困難ならしめる事情に当たることは明らかである。

なお,被告らは,被告Aのロイヤリティ等の不払の理由について,原告側の対応に問題があったため,その改善を促す目的でやむなく支払を停止したなどと主張するが,被告Aが,本件解除に至るまでの間,原告に対し,そうした主張を一切していなかったばかりか,かえって「本日,2013年12月分のゴーゴーシステム様宛の支払いの期限かと思うのですが,こちらの都合でもうしわけありませんが,資金の調達などの関係で,2014年1月25日までに振込みさせてもらいます。こちらの都合で申し訳ありませんが,よろしくお願いいたします。」「オープン時より,売上げのあがる努力や今年にはいって本格的に経費削減を進めておりますが,そろそろより本格的に対策しなければ今後も支払いが若干遅れる可能性が大きくなってきました。」(甲5),「本日中にお支払できる予定だったのですが,大雪の影響で予想を大きく下回る売り上げとなってしまいましたので,用意できませんでした。申し訳ありません。」「今月末日までにはお支払できる予定ですので,もうしばらくお待ちください。」(甲7の1)などと,資金繰りが付かないことを理由に,再三にわたってロイヤリティ等の支払の延期を求めていたことに照らせば,上記主張は到底採用することができない。

したがって,本件解除は有効である。それにもかかわらず,被告Aは,本件契約の解除後も,本件各商標の使用及び本件店舗におけるカレー店の営業を,仮処分決定に基づく保全執行が実施されるまで4か月間以上も継続したものであるから(前記前提事実),被告Aには,本件契約上の義務違反(競業避止義務違反,商標等取扱義務違反),本件各商標権の侵害及び不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争の成立(本件各商標の周知性には争いがない。また,被告Aが本件各商標を本件店舗において使用したことにより,原告の営業との混同のおそれも認められる。)がそれぞれ認められる。

3 争点2(原告の損害額)について
原告は,本件店舗における1か月当たりの利益について,393万0152円(平成26年3月の売上)から150万2536円(同月の原材料費(税込))を控除した242万7616円であると主張するところ,証拠(甲12の1)によれば,原告の上記主張に沿う事実が認められる一方,本件店舗における利益額がこれを上回る,又は下回ると認めるに足りる証拠はない。したがって,本件店舗における利益の額は原告の主張どおりと認めるのが相当である。
そして,被告Aは,本件契約の解除後に本件各商標と同一の商標を使用して本件店舗の営業を継続したことによって,本件解除の翌日である平成26年4月25日から同年8月26日までの124日間,上記利益を受けているから,これが原告(本件各商標の独占的通常使用権者)の損害額と推定されるところ(商標法38条2項類推,不正競争防止法5条2項),同推定を覆す事情を認めるに足る証拠は見当たらないから,原告の損害額は合計971万0463円(計算式は242万7616円÷31日×124日)と認めるのが相当である。

4 争点3(本件各違約金条項の法的性質)について
(1) 原告は,本件各違約金条項がいずれも違約罰の定めであるとして,本件各違約金条項が定める各違約金に加え,これとは別に,損害賠償の支払を求める。
そこで検討するに,違約金は損害賠償額の予定と推定されるところ(民法420条3項),本件各違約金条項について,同推定を覆すに足る事情は見当たらない。かえって,本件各違約金条項が,いずれも違約金の額を「少なくても」ロイヤリティの24か月分とし,これを超える額の違約金が発生する場合があり得ることを前提としていることに照らせば,本件各違約金条項は損害の有無にかかわらず直近のロイヤリティの24か月分を損害賠償額と定めた損害賠償額の予定(ただし,これを上回る損害が生じた場合にはその額を基準として損害賠償の請求をすることができる。)を定める旨の条項と理解するのが自然であり,本件違約金条項2が,違約金「を上回る」損害賠償の請求を妨げない旨を定めていることも同解釈を裏付ける事情といえる。

これに対し,原告は,本件各違約金条項がいずれも違約罰の定めである旨主張するが,原告の主張によれば,違約金は確定額となるべきところ,本件各違約金条項において,違約金が確定額とされていないことは前記のとおりであること等に鑑みると,原告の主張は採用することができない。

以上のとおり,本件各違約金条項は,いずれも損害の有無及び額と関係なくロイヤリティの24か月分を請求することができる(ただし,同額を上回る損害が生じた場合には同額の損害賠償請求が可能である。)ことを内容とする損害賠償額の予定であると認めるのが相当である。そして,本件解除がされた日の直近月である平成26年3月分のロイヤリティ額は21万6158円であるから(当事者間に争いがない。),本件各違約金条項の定める各違約金の最低額はその24か月分である518万7792円となり(本件違約金条項2も本件違約金条項1と同額であると解すべきである。),各違約金の最低額を合計すると1037万5584円となって,上記3で認定した原告の実際の損害額の合計である971万0463円を上回るから,原告は被告らに対し,1037万5584円を請求できることとなる。

(2) なお,原告は,被告らが,平成27年1月15日の本件弁論準備期日において本件各違約金条項に係る各違約金の性質が違約罰であることを認めたから,自白が成立し,その撤回も許されない旨主張する。
しかしながら,違約金条項の性質に関する主張は法的評価に関するものであって,具体的事実に関するものではないから,上記陳述をもって直ちに自白が成立するとはいえないし,この点を措くとしても,本件各違約金条項が,違約罰の定めであると認めることができないことは上記(1)のとおりであるから,上記陳述は,真実に反するものと認められ,そうである以上,錯誤によるものと推定されるから(なお,同推定を覆す事情を認めるに足る証拠はない。),仮に自白が成立するとしてもその撤回が許される。したがって,原告の主張は採用できない。

5 争点4(相殺の成否)について
(1) 被告らは,Dが,本件説明会において,被告Aに対し,「初期費用が2000万円を超えることはない」と述べ,また,原告従業員が,本件契約締結後,被告Aに対し,「この立地であれば月の売上は600万円は確実だ」と告げるなど,根拠のない不合理な初期費用・売上予測・予想収益を断定的に提示したとして,これが,原告の被告Aに対する欺まん的顧客誘引又は情報開示・提供義務違反に当たり,原告の被告Aに対する不法行為が成立するから,被告Aは原告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求債権を有しているとして,同債権を自働債権として,原告が本件訴訟で求める債権と対当額で相殺する旨主張する。

(2) そこで検討するに,本件で提出された全証拠を精査しても,原告について被告らの主張する不法行為が成立すると認めることはできない。かえって,
①原告作成に係る本件説明会において配布されたものと同一又はほぼ同一の資料(乙1)に「キャッシュフローシミュレーション 都内駅前型(15坪15席)」と記載され,あくまで試算であることが明らかにされた上で,同資料の「初期費用合計」欄に「¥21,953,000」と記載され,さらに,これ以外に当初5年間のリース費用として合計678万円を要する旨の記載もあるなど,初期費用が2000万円を超えることが具体的に示されていること,
②被告Aは,上記1(2)ア,ウ及びエのとおり,Dに対し,本件契約の締結前に初期費用が2000万円を上回る可能性があることを前提としたメールを送信しており(なお,上記アのメールは,横浜のエリアでは2000万円の範囲内でやるのは難しいのではないかとのDからの助言を受けたものである[乙30]。),特に上記1(2)エのメールは,本件契約の締結に先立ってDから送信された,初期費用が3235万2150円であるとの見積りを示すメール(甲29,30)に対する返信として送られたものであり,「投資計画表ですが,融資をうけるための見積りだと思うのですが,実際の金額はもう少し抑えることは可能でしょうか?(できれば3,000万円以下)」と記載して,実際の初期費用をできれば3000万円以下に抑えられないかと尋ねる内容であること,
③上記1(2)イのとおり,被告Aが,Dに対し,リスクについても具体的に説明を受けたことを認める内容のメールを送信していること,
④被告Aが,本人尋問において,「プラス思考の方向で考えて,1か月当たり500万円程度の売上があげられると想定したが,実際には約422万円にとどまった」旨供述していること(被告A本人),
⑤本件説明会やその後のDとの面談に同席した被告Bは,被告Aに対し,もっと慎重になるようにと忠告したものの,被告Aが高揚感に包まれて聞く耳を持たなかった旨供述していること(乙31,被告B本人)
などに照らせば,原告において,被告らが主張するような不合理な初期費用・売上予測・予想収益を断定的に提示して勧誘した事実はなかったものと認めるのが相当である。

(3) したがって,被告らの上記主張は到底採用することができない。なお,被告らが主張するその余の事情(原告が被告Aのサポート要請に対応せず,原告に関する情報を渡さないなどの営業妨害に近い行為を行ったことなど)についてもこれを認めるに足る証拠はない。

6 結論
以上によれば,原告の請求は,主文第1項ないし第3項の限度で理由があるから認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

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