2026年労働法関連法改正ポイント
2026年の労務関連法改正まとめ:結局、会社が「やること」が増える年です
2026年は、労務担当者にとって「新しい罰則が増える年」というより、**“手当て(体裁)を整えておくべき領域が増える年”**です。
カスタマーハラスメント、就活セクハラ、女性活躍情報の公表、安全衛生(高年齢者・化学物質)、そして給与天引きに影響する新たな負担——。やや方向性が散っているように見えますが、共通するのは 「放置すると説明不能になる」 という点です。
2026年に動く主なトピック(早見)
1)カスハラ/就活セクハラ:防止措置が“事業主の義務”へ
カスタマーハラスメント(顧客等の著しい迷惑行為)と、求職者等(就活生・インターン等)に対するセクシュアルハラスメントについて、防止措置が事業主の義務になります。施行日は「公布日から1年6か月以内に政令で定める日」とされ、遅くとも2026年12月頃までには施行される枠組みです。
2)女性活躍推進:情報公表の必須項目が拡大(101人以上企業)
従業員数101人以上の企業に対し、男女間賃金差異に加えて、女性管理職比率の公表が義務化されます(2026年4月1日施行)。また、法律の有効期限が2036年3月31日まで延長されます。
3)安全衛生:高年齢労働者対策が“努力義務”として明文化(2026年4月1日施行)
改正労働安全衛生法により、高年齢者の特性に配慮した作業環境改善や作業管理等を行うことが、事業者の努力義務となり、2026年4月1日から施行されます。
4)化学物質管理:ラベル・SDS・リスクアセスメントの対象が大幅拡大(段階施行の山場が2026年4月)
化学物質管理は「自律的管理」へ舵が切られており、リスクアセスメント結果に基づくばく露低減措置、記録の作成・保存、化学物質管理者等の選任などが求められます。対象物質は国のGHS分類等により約2,900物質規模へ拡大する想定で、段階施行の一環として2026年4月施行予定の追加も示されています。
5)子ども・子育て支援金:2026年度は0.23%(5月納付分から追加)
被用者保険の「子ども・子育て支援金率」について、2026(令和8)年度は**0.23%**が示され、5月納付分から追加とされています。給与計算・控除設計に実務影響が出ます。
実務対応:何を整えるべきか(“会社の宿題”チェックリスト)
1)カスハラ対策:定義と“現場を守る運用”を先に作る
カスタマーハラスメントは、行政整理として「①顧客等が行い、②社会通念上許容される範囲を超え、③労働者の就業環境を害する」行為、と説明されています。
具体的措置は指針で示される予定ですが、先に整えておくと強いのは次の3点です。
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基本方針(ゼロ容認ではなく“線引き”):何をカスハラと捉え、どう対応するか
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相談・報告ルート:現場→上長→人事/法務のエスカレーション、記録のテンプレ
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対応マニュアル:電話・対面・SNS等の場面別に、対応者が孤立しない設計
ポイントは「正しい対応」よりも、**“対応の一貫性”と“記録可能性”**です。現場は毎回、判断を迫られます。判断を個人に押し付ける設計は、だいたい事故ります。
2)就活セクハラ対策:採用活動を“職場の外”だと思わない
求職者等(就活生・インターン等)へのセクハラについても、必要な防止措置を講じることが事業主の義務になります。
採用は「社外イベント」ではなく、会社の雇用管理の延長として整備が必要です。
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面接・説明会・懇親会・インターン指導者に対する事前教育
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禁止事項の明文化(容姿・交際・私生活への踏み込み等)
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被害申告を受ける窓口(社内/外部)と、調査・再発防止の流れ
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採用担当だけでなく、面接官・現場受入担当も含めた運用徹底
3)女性活躍の情報公表:数値は“出せる形”にするのが仕事
2026年4月1日から、101人以上企業は少なくとも
男女間賃金差異+女性管理職比率の公表が必須になります。
加えて、一定数以上の項目公表が求められる枠組み(企業規模により異なる)が示されています。
実務で詰まりやすいのは「理念」ではなく、ここです。
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データ定義の統一(賃金の範囲、対象者区分、期間、出向等の扱い)
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算定と公表の担当割り(人事・総務・経理・システムの境界)
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“説明文”の用意(数字だけ出すと、説明責任が後から来る)
なお、初回公表のタイミングについて、施行後最初に終了する事業年度の実績を、概ね3か月以内に公表する必要がある旨が示されています(例:3月決算なら6月末目安)。
4)治療と仕事の両立支援:努力義務は“やらなくていい”ではない
2026年4月1日施行で、治療と仕事の両立を促進するために必要な措置を講じることが努力義務化されます。
努力義務は“罰則がないから放置”になりがちですが、実務上は トラブルの火種を先に消す仕組みです。
最低限、整えると強いのは以下です。
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相談窓口(人事/産業保健/外部)の設置と周知
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主治医・産業医との連携の型(情報の取り扱い、同意書、配慮事項の整理)
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配慮の選択肢(勤務時間、業務内容、休暇、テレワーク等)のメニュー化
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個人情報・健康情報の管理(アクセス権、保管、共有範囲)
5)安全衛生:高年齢者対策と化学物質は“現場の手触り”が問われる
高年齢労働者の労災防止(2026年4月1日施行)
高年齢者の特性に配慮した作業環境改善等が努力義務となり、2026年4月1日から施行されます。
「努力義務だから何もしない」は、事故が起きた瞬間に説明不能になります。現場で効くのは、手すり・段差・照度・作業姿勢など、小さい改善の積み上げです。
化学物質管理(対象拡大・記録・選任)
対象物質の拡大(約2,900物質規模)や、リスクアセスメント結果に基づくばく露低減、記録保存、化学物質管理者等の選任などが示されています。
化学物質は「専門部署が頑張る」だけでは回りません。購買・現場・安全衛生委員会・教育を含めて、会社として回る仕組みにする必要があります。
6)給与計算:2026年度の“新しい控除”を落とさない
子ども・子育て支援金率は、2026年度0.23%(5月納付分から追加)とされています。
実務としては、給与ソフト設定、控除項目の説明、労使コミュニケーション(「勝手に増えた」にならない)を、早めに段取りするのが安全です。
当事務所の支援メニュー
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規程・マニュアル整備(カスハラ/採用・インターン対応/相談窓口)
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社内研修(管理職・採用担当・現場向け)
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情報公表(男女賃金差異・女性管理職比率)の算定支援と公表文案
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安全衛生(高年齢者対策・化学物質管理体制)の整理支援
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給与計算・労使説明資料の作成支援
免責・注記
本稿は一般的な情報提供を目的とするもので、個別事案への法的助言ではありません。施行日や指針・省令の詳細は今後更新される可能性があります(特にカスハラ/就活セクハラ分野)