2026年1月施行「改正下請法(取適法)」とは?対象取引・売買との区別・実務対応まとめ

2026年1月1日から、いわゆる「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」は、通称「取適法(中小受託取引適正化法)」として運用されます。名称が変わるだけでなく、対象範囲の考え方や、取引実務で刺さりやすいポイント(価格協議・支払手段・運送委託など)が整理・強化されています。

本記事では、(1) 適用対象(5類型+規模要件)、(2) 「委託」と「売買」の区別、(3) 適用がある場合の効果(4つの義務+11の禁止事項)、(4) 実務対応のチェックポイントを、最低限の粒度でまとめます。


1. 何が変わった?(改正の全体像)

(1)名称・用語が変わります

従来の「親事業者/下請事業者/下請代金」といった用語は、「委託事業者/中小受託事業者/(製造委託等)代金」といった整理になっています。

(2)適用対象の考え方が明確化・拡充

適用対象は、**①取引の内容(後述の5類型)× ②規模要件(資本金基準または従業員基準)**で判断する構造です。
改正の目玉として、従業員基準の追加や、特定運送委託の追加などが整理されています。


2. 適用対象:5つの取引類型(委託)

取適法の「受託取引」として整理されるのは、次の5類型です。

  1. 製造委託

  2. 修理委託

  3. 情報成果物作成委託(例:プログラム、デザイン、映像等)

  4. 役務提供委託(例:各種サービス)

  5. 特定運送委託(一定の取引に付随する運送の委託)

※「契約名が売買・業務委託だから大丈夫」という発想は危険です。中身が“委託”なら委託として判断され得ます(次項で区別のコツを解説)。


3. 「委託」と「売買」をどう区別するか(実務の要点)

結論から言うと、境界線はシンプルです。

  • 売買:相手方が用意した既製品・汎用品を「買う」取引(取引の芯が“物の購入”)

  • 委託:こちらが仕様等を指定し、相手に「作業(行為)」をさせて成果を納めさせる取引(取引の芯が“仕事の外注”)

委託寄りになりやすいサイン(重要)

次が揃うほど「売買」ではなく「委託」評価になりやすいです(契約名は関係なく実質)。

  • 仕様書/図面/入稿データ/検査基準/校了がある

  • 成果物があなた専用で、他社転売が難しい

  • 試作→量産、工程管理、支給材がある

  • 変更・やり直し(追加作業)が発生しやすい設計になっている
    (※「やり直し」等は、適用後は禁止事項にも直結します)


4. 適用がある場合の主な効果(ここが“実務の本体”)

適用されると、委託事業者(発注側)には、4つの義務と**11の禁止事項(遵守事項)**が乗ります。

4-1. 委託事業者に課される「4つの義務」

  1. 発注内容等を明示する義務(書面またはメール等の電磁的方法で、給付内容・代金額・支払期日等を明示)

  2. 書類等を作成・保存する義務(2年間)

  3. 支払期日を定める義務(受領日から60日以内、できる限り短い期間)

  4. 遅延利息を支払う義務(年率14.6%)

4-2. 「11の禁止事項(遵守事項)」

取適法では、以下が典型的に問題になります。

  1. 受領拒否

  2. 支払遅延(支払手段として手形払等を用いることを含む)

  3. 減額

  4. 返品

  5. 買いたたき

  6. 購入・利用強制

  7. 報復措置

  8. 有償支給原材料等の対価の早期決済

  9. 不当な経済上の利益の提供要請

  10. 不当な給付内容の変更、やり直し

  11. 協議に応じない一方的な代金決定(価格協議の求めに応じない/必要な説明をしない等)

「やり直し」「追加作業」「価格協議をスルー」は、日常実務で“うっかり発生”しやすいので要注意です。

4-3. 行政対応(調査・指導等)

中小企業庁側でも、取適法に基づき調査、立入検査、改善指導、公取委への措置請求などの枠組みで取引適正化に取り組む旨が示されています。
また、公取委の運用基準では、支払遅延の典型例(請求書未提出を理由に払わない等)も整理されています。


5. 会社が今すぐ整えるべき「実務チェックリスト」(発注側)

(1) 発注の入口(発注書・発注メール)を統一

  • 必須項目(給付内容、代金額、支払期日等)を抜けなく明示できるフォーマットに固定。

(2) 検収・受領日を“証拠化”

  • 「いつ受領したか」で60日ルールが動くため、受領日を客観的に残す運用へ。

(3) 支払サイト(60日以内)を棚卸し

  • 慣行で長いサイトになっていないか。支払手段も含め、現行の経理ルールを点検。

(4) 仕様変更・追加作業の“手続”を作る

  • 変更が起きたときに、無償で押し付けないための「変更依頼書」「追加見積」「合意フロー」を作る(ここが最も炎上しがち)。

(5) 価格協議のログを残す

  • 受託側から協議を求められた場合の対応(検討・説明・記録)をルール化。


6. よくある質問(FAQ)

Q1:契約書が「売買」なら取適法は関係ない?
A:契約名より実質です。仕様を指定して作らせているなら「委託」評価になり得ます。

Q2:口頭発注・チャット発注でもOK?
A:発注内容(給付内容・代金額・支払期日等)の明示が必要です。メール等の電磁的方法でもよいと整理されています。

Q3:検収が終わらないと支払期日は延ばせる?
A:支払期日は「受領日から60日以内」で定める整理です(検査の有無を問わないと明記)。

Q4:支払遅延になると何が起きる?
A:遅延利息(年率14.6%)の支払義務が整理されています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA