第4講 有期雇用労働者と育児休業
第4講 有期雇用労働者と育児休業
――契約社員・パート・アルバイトを対象外にしてよいのか

育児休業というと、正社員を前提に考えられがちですが、育児・介護休業法上、有期雇用労働者であっても、一定の要件を満たせば育児休業を取得することができます。契約社員、パート、アルバイト、嘱託社員など、期間の定めのある雇用契約で働く労働者についても、「正社員ではないから育児休業は取れない」と一律に扱うことはできません。
企業実務でまず確認すべきなのは、雇用形態ではなく、法律上の対象者に当たるかどうかです。有期雇用労働者については、子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでないことが基本的なポイントになります。つまり、契約期間に定めがあっても、更新の可能性があり、子が一定の年齢に達するまで雇用が継続する見込みがある場合には、育児休業の対象となり得ます。
ここで注意すべきなのは、「契約期間が短い」というだけで直ちに対象外になるわけではないという点です。たとえば、3か月更新、6か月更新、1年更新といった有期契約でも、これまで更新が繰り返されている場合や、契約書・就業規則・実際の運用上、更新可能性がある場合には、単に形式上の契約期間だけを見て判断することはできません。会社が「次回更新しない予定だから対象外」と説明する場合でも、その不更新の理由や時期が育児休業申出と関係していないか、慎重に確認する必要があります。
また、以前は「引き続き雇用された期間が1年以上であること」が有期雇用労働者の育児休業取得要件とされていましたが、法改正により、この要件は法律上は撤廃されています。ただし、会社が労使協定を締結している場合には、入社1年未満の労働者を育児休業の対象外とできる場合があります。したがって、実務では、就業規則だけでなく、労使協定の有無と内容を確認することが不可欠です。
パート・アルバイトについても同様です。週の所定労働日数が少ない、短時間勤務である、補助的業務に従事しているといった事情だけで、育児休業の対象外とすることはできません。もっとも、労使協定により、一定の日数以下の労働者などを対象外とできる場合があります。そのため、会社としては、雇用形態名ではなく、法律と労使協定に基づいて個別に判断する必要があります。
有期雇用労働者の育児休業で紛争になりやすいのは、契約更新や雇止めとの関係です。育児休業を申し出た直後に契約を更新しない、復職予定時期の前に雇止めをする、育休取得を理由に次回契約条件を不利に変更する、といった対応は、不利益取扱いとして問題になり得ます。会社としては、育児休業申出前からの勤務評価、業務量、契約更新の方針、過去の更新実績などを客観的に説明できるようにしておく必要があります。
また、現場担当者が制度を誤解して、「パートだから無理です」「契約社員は対象外です」と即答してしまうことも危険です。そのような説明を受けた労働者が退職した場合、後に会社の説明義務や不利益取扱いが問題とされることがあります。申出や相談があった段階では、まず人事担当者に確認し、法律上の要件、労使協定、契約更新見込みを踏まえて回答する運用にしておくべきです。
有期雇用労働者は、職場によっては重要な戦力であり、育児を理由に退職されると業務運営に大きな影響が出ることもあります。だからこそ、育児休業を「正社員だけの制度」と捉えるのではなく、多様な雇用形態を前提に制度を整備することが重要です。
企業としては、育児介護休業規程、労使協定、雇用契約書、契約更新基準、申出時の説明資料を確認し、有期雇用労働者から育児休業の申出があった場合にも、誤った対応をしない体制を作っておく必要があります。制度を正しく案内し、契約更新との関係を丁寧に整理することが、紛争予防と人材定着につながります。