第9講 短時間勤務制度の設計

第9講 短時間勤務制度の設計

――3歳未満の子を養育する労働者への措置と例外対応

短時間勤務制度は、3歳に満たない子を養育する労働者が、育児と仕事を両立しやすくするための制度です。育児休業が一定期間仕事を休む制度であるのに対し、短時間勤務制度は、職場に復帰した後も、育児の負担が大きい時期に勤務時間を短縮して働くことを可能にする制度です。企業実務では、育児休業からの復職時に利用希望が出されることが多く、復職後の勤務条件をどう整えるかが重要になります。

育児・介護休業法上、会社は、3歳未満の子を養育する労働者について、原則として短時間勤務制度を設ける必要があります。典型的には、1日の所定労働時間を原則6時間とする制度が想定されます。もっとも、会社の業種、職種、勤務体制によっては、単に「毎日6時間勤務」とするだけでは現場運用が難しい場合もあります。そのため、就業規則や育児介護休業規程において、対象者、申出方法、適用期間、勤務時間帯、賃金控除の方法、賞与・評価への影響などを明確にしておくことが重要です。

短時間勤務制度で紛争になりやすいのは、まず勤務時間帯の設定です。労働者としては、保育園の送迎時間に合わせて、始業時刻を遅くしたい、終業時刻を早めたいと希望することがあります。他方、会社としては、始業時の朝礼、顧客対応、会議、シフト体制などとの調整が必要になります。この場合、会社が一方的に「この時間帯でなければ認めない」とするのではなく、本人の希望、業務上の必要性、代替措置の可能性を踏まえて、合理的な勤務時間帯を検討する必要があります。

次に、賃金の取扱いも重要です。短時間勤務により実際の労働時間が短くなる場合、短縮された時間に対応して賃金を控除すること自体は、直ちに問題となるものではありません。しかし、控除方法が不明確であったり、基本給以外の手当、賞与、退職金への影響が規程上整理されていなかったりすると、後に賃金トラブルが生じるおそれがあります。会社としては、ノーワーク・ノーペイの考え方を前提にしつつも、控除計算の方法を明確にし、従業員に説明できる状態にしておく必要があります。

評価や昇進との関係にも注意が必要です。短時間勤務を利用していることを理由に、当然に低評価とする、重要な業務から外す、昇進対象から除外する、といった対応は、不利益取扱いとして問題となり得ます。もちろん、勤務時間が短いことにより担当できる業務量に差が生じることはあります。しかし、その場合でも、時間当たりの成果、担当業務の内容、勤務可能な範囲での貢献を踏まえ、制度利用そのものをマイナス評価しない評価設計が求められます。

一方で、すべての労働者に短時間勤務制度をそのまま適用しなければならないわけではありません。労使協定を締結している場合には、入社1年未満の労働者や、業務の性質・実施体制に照らして短時間勤務が困難な業務に従事する労働者などについて、対象外とできる場合があります。ただし、「忙しい部署だから」「代わりがいないから」「営業職だから」といった抽象的な理由だけで対象外にすることは危険です。対象外とするには、法律上許される範囲で労使協定を整備し、業務の性質や体制を具体的に説明できる必要があります。

短時間勤務が困難な業務については、会社は代替措置を講じる必要があります。たとえば、育児休業に関する制度に準ずる措置や、始業時刻変更等の措置などが考えられます。重要なのは、「短時間勤務は無理です」で終わらせないことです。制度の趣旨は、育児中の労働者が退職せずに働き続けられるようにする点にあります。会社としては、短時間勤務の可否だけでなく、他の働き方で両立支援ができないかを検討する必要があります。

また、現場の業務負担への配慮も欠かせません。短時間勤務者の業務がそのまま他の従業員に上乗せされると、不公平感が生じ、職場内の不満やハラスメントにつながることがあります。会社としては、業務量の見直し、担当範囲の再整理、会議時間の調整、情報共有の仕組み、管理職による業務配分を整える必要があります。制度利用者本人の問題として扱うのではなく、職場全体の業務設計として捉えることが重要です。

短時間勤務制度は、育児休業から復職した労働者の定着に大きく関わる制度です。制度があっても、勤務時間帯、賃金、評価、業務分担が曖昧なままでは、本人にとっても職場にとっても不安定な運用になります。企業としては、育児介護休業規程、賃金規程、人事評価制度、労使協定、復職時面談シートを点検し、短時間勤務制度を現場で無理なく運用できる形に整えておくことが重要です。

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