第1段階 株主性の確認

第1段階 株主性の確認

――「自分は本当に株主なのか」を固める

少数株主権の出口戦略において、最初に行うべきことは、自分が会社法上の株主として扱われるべき立場にあるかを確認することです。

非上場会社・同族会社では、ここが意外に曖昧です。
「父が株を持っていたはずだ」
「昔から株主だと聞いている」
「株主総会の案内が来たことがある」
「配当を受けたことがある」
「会社側は親族としては扱うが、株主としては扱わない」
といった状態のまま、長年放置されていることがあります。

しかし、出口戦略を進めるためには、単なる親族、元役員、従業員、創業家の一員というだけでは足りません。
会計帳簿の閲覧請求、株主総会招集請求、株主提案、役員責任追及、株式買取交渉などを行うためには、まず、**「私はこの会社の株主である」**という地位を確認する必要があります。

特に問題になりやすいのは、相続株です。
先代が亡くなったあと、株式の名義変更がされていない、遺産分割協議が未了である、相続人の一部だけが会社経営に関与している、会社側が特定の相続人だけを株主として扱っている、というケースがあります。

また、古い会社では、名義株の問題もあります。
設立時や増資時に、実際には別の人物が出資していたにもかかわらず、親族や従業員の名義を借りて株主名簿に記載していた、ということがあります。
この場合、株主名簿上の名義人が株主なのか、実際に出資した人物が株主なのか、過去の出資経緯、配当の受領状況、総会通知の送付先、会社側の取扱いなどを確認する必要があります。

さらに、株券発行会社かどうかも重要です。
古い非上場会社では、定款上は株券発行会社のままになっていることがあります。株券発行会社では、株式譲渡や権利行使の場面で、株券の有無が問題になることがあります。
「株券を見たことがない」
「亡父の金庫に株券らしきものがある」
「会社は株券を発行していないと言っている」
といった事情は、株主性確認の重要な出発点になります。

この段階で確認すべき資料は、主に次のものです。

定款、株主名簿、株主総会議事録、取締役会議事録、計算書類、過去の配当資料、株券、出資関係資料、贈与契約書、売買契約書、遺産分割協議書、相続関係説明図、戸籍、会社登記簿、過去の税務申告資料などです。

ここで大切なのは、最初から会社と全面対決することではありません。
まずは、会社に対し、株主としての立場を前提に、株主名簿や定款、計算書類等の確認を求めます。
会社側が素直に資料を開示すれば、次の段階に進めます。
一方で、会社側が「あなたは株主ではない」「相続人にすぎない」「名簿上の名義人ではない」「資料は見せられない」と対応してくる場合には、株主性そのものを争点化する必要があります。

この第1段階の目的は、単に株主かどうかを知ることではありません。
最終的に株式を買い取らせる、配当や説明を求める、会社の不透明な経営を是正させるための交渉上の立ち位置を作ることです。

会社側にとっても、相手が単なる親族として不満を言っているだけなのか、会社法上の株主として正式に権利行使してくるのかでは、受け止め方が変わります。
弁護士が入り、資料を確認し、株主性を整理したうえで通知を出すだけでも、会社側には一定の圧力が生じます。

したがって、少数株主権の出口戦略における第1段階は、
「自分が株主であることを確認し、会社に対して株主として扱わせる段階」
といえます。

ここを曖昧にしたまま買取交渉を始めると、会社側から、
「そもそもあなたは株主ではない」
「誰の株式を売るつもりなのか」
「相続人間で話をまとめてから来てください」
と反論され、交渉が入口で止まってしまいます。

逆に、株主性を固めておけば、その後の情報開示請求、総会対応、代表訴訟リスク、買取交渉が一本の線でつながります。

少数株主権の出口戦略は、最初から派手な訴訟を起こすものではありません。
まずは、静かに、しかし確実に、
「私はこの会社の株主である」
という足場を固めるところから始まります。

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