第3講 産後パパ育休の実務対応
第3講 産後パパ育休の実務対応
――男性育休を「制度としてある」から「実際に取れる」へ

産後パパ育休は、正式には「出生時育児休業」と呼ばれる制度で、子の出生後8週間以内に、父親である労働者が取得できる育児休業です。通常の育児休業とは別に設けられており、産後間もない時期に父親が育児や家事に関わることを想定した制度です。企業実務では、単に「男性も育休を取れます」と案内するだけでなく、出生直後の短い期間に、どのような手続で、どのように業務を調整するかが重要になります。
産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に、最大4週間まで取得することができます。また、一定の範囲で分割取得も可能です。そのため、労働者が「出産直後に2週間、その後少し空けてもう2週間」といった取得を希望することもあり得ます。会社としては、休業開始日、終了日、分割取得の有無、通常の育児休業との関係を確認し、復職予定や業務引継ぎを整理する必要があります。
この制度の特徴の一つは、労使協定を締結している場合など、一定の要件のもとで、休業中の就業が認められる場合がある点です。もっとも、これは「会社が休業中の労働者を自由に働かせられる」という意味ではありません。労働者本人の意向、会社との合意、就業可能な日数・時間の制限などを踏まえる必要があります。休業中の就業を当然視したり、取得者に業務連絡を過度に求めたりすると、制度の趣旨に反する運用となりかねません。
実務上、最も注意すべきなのは、管理職や現場の反応です。たとえば、「この時期に休まれると困る」「奥さんが休んでいるのになぜ必要なのか」「男性で育休を取る人はいない」などの発言は、取得をためらわせる言動として問題になり得ます。制度が整っていても、上司の一言で従業員が取得を断念した場合、会社としてハラスメント防止措置や不利益取扱いの問題を問われる可能性があります。
また、産後パパ育休は期間が比較的短いため、会社側が「短期間だから何とかなる」と考え、手続や業務分担を曖昧にしたまま進めてしまうことがあります。しかし、出生直後は予定日どおりに進まないこともあり、急な出産、入院、退院時期の変更などにより、休業開始日や業務引継ぎに影響が出ることがあります。会社としては、事前に申出を受けた段階で、担当業務、顧客対応、決裁権限、緊急連絡の要否を確認しておくことが望ましいです。
さらに、産後パパ育休の取得後に通常の育児休業を取得するケースもあります。この場合、両制度の関係を誤解すると、申出期限、取得可能期間、分割取得の扱いなどで混乱が生じます。人事担当者だけでなく、直属上司にも基本的な制度理解を共有しておく必要があります。
産後パパ育休は、男性育休を現実に利用しやすくするための制度です。企業にとっては、若手・中堅人材の定着、職場の信頼形成、採用面での印象にも関わります。他方で、制度理解が不十分なまま対応すると、不利益取扱い、ハラスメント、復職後の配置や評価をめぐるトラブルにつながるおそれがあります。
会社としては、産後パパ育休の申出があった場合の確認事項、必要書類、業務引継ぎ、休業中の連絡ルール、復職後の勤務体制をあらかじめ整理しておくべきです。「制度としてある」だけではなく、「実際に取得しても職場が回る」状態をつくることが、これからの企業労務に求められます。