非公開会社の株式を売りたいのに、会社に拒まれた方へ
裁判所に「買取価格」を決めてもらえる場合があります
非公開会社の株式は、上場株式のように自由に売れるわけではありません。
親族経営の会社、同族会社、古くからの中小企業では、株式の譲渡に会社の承認が必要とされていることが多く、「売りたいのに売れない」「会社が譲渡を認めない」「相手に足元を見られている」といった相談は珍しくありません。
しかし、会社に譲渡を拒否されたからといって、そこで終わりではありません。
会社法は、一定の場合に、会社または会社が指定する者に株式を買い取らせる仕組みを設けており、さらに価格が折り合わないときは、裁判所に売買価格を決めてもらう手続まで用意しています。これが、会社法144条2項の売買価格決定申立てです。
この手続が力を発揮するのは、たとえば次のような場面です。
退任した役員が保有株を整理したい場合、親族間で経営対立が起きている場合、相続で株式を取得したものの会社との関係が悪化している場合、共同経営者の離脱に伴って持株処理が必要になった場合などです。非公開会社の株式は市場価格がないため、会社側から極端に低い金額を提示されることもありますが、そうした場面でこそ、裁判所の価格決定手続が重要になります。会社法144条2項に基づく手続は、最高裁も、譲渡を希望する株主に対し、譲渡に代わる投下資本回収の手段を保障するためのものと位置づけています。
もっとも、この分野は「後で争えばよい」というものではありません。
最初の譲渡承認請求の段階から、文言の入れ方を誤ると、後の手続に影響が出ます。会社法上は、譲渡制限株式の承認請求をする際、会社が承認しない場合に会社または指定買取人が買い取ることを請求する旨を明らかにすることが予定されています。ここを外したまま進めると、後で価格決定手続を見据えた主張整理が難しくなることがあります。
また、会社側にも厳しい期限があります。
会社が譲渡承認請求に対して2週間以内に決定内容を通知しなければ、承認したものとみなされる場合があります。さらに、不承認にした後も、会社による買取通知や指定買取人による通知には法定期限があり、これを徒過すると、やはり承認したものと扱われることがあります。実際、会社法145条は、不承認後の通知期限を設け、放置を許さない建て付けにしています。
価格についても、会社が一方的に決められるわけではありません。
まずは当事者間の協議になりますが、まとまらなければ、会社または株主のいずれからでも、通知の日から20日以内に裁判所へ申立てができます。申立先は通常の訴訟ではなく、会社非訟事件としての裁判所手続です。裁判所の案内でも、会社法144条2項に基づく株式売買価格決定申立事件が会社非訟事件の一つとして明示されています。
では、裁判所は何を見て価格を決めるのでしょうか。
条文上、裁判所は、譲渡承認請求時の会社の資産状態その他一切の事情を考慮して価格を定めるとされています。つまり、単純に決算書の簿価だけで決まるわけではありません。会社の収益力、保有資産、将来計画、配当状況、支配権との関係、株式の市場性の欠如など、複数の要素を踏まえて評価がされます。令和5年5月24日の最高裁決定でも、DCF法で算定した評価額について、事情によっては非流動性ディスカウントを行うことができると判断されており、価格評価が相当に専門的な争点になることがわかります。
この種の事件で重要なのは、単に「安すぎる」と感覚的に反論することではありません。
会社側の通知が適法か、法定期限を守っているか、承認請求の内容に漏れがないか、会社の評価資料に問題がないか、純資産・収益還元・DCFなどどの評価手法で攻めるべきか――こうした点を、最初から整理して進める必要があります。特に非公開会社の株式は、金額の開きが大きくなりやすく、初動を誤ると不利な価格で固定されかねません。
当事務所では、非公開会社・中小企業の株式をめぐる紛争について、
承認請求の段階から、会社側の通知内容の精査、価格交渉、裁判所への売買価格決定申立てまで、実務に即して対応しています。
「会社から譲渡を拒否された」
「買取価格があまりに低い」
「親族会社なので感情的対立も強い」
「退任後の持株処理をきちんと終わらせたい」
このような場面では、感情論ではなく、会社法の期限管理と価格立証が結果を左右します。
非公開会社の株式処理でお困りの方は、早い段階でご相談ください。適切な初動が、その後の交渉と裁判所手続の見通しを大きく左右します。
