第7講  返品・受領拒否・やり直し要請|発注後に問題化しやすい禁止行為

第7講
返品・受領拒否・やり直し要請|発注後に問題化しやすい禁止行為

取適法では、発注後のトラブルとして特に問題になりやすいものとして、受領拒否返品、そして不当なやり直し要請が明確に意識されています。公正取引委員会の2026年施行リーフレットでも、委託事業者がしてはならない行為として、受領拒否と返品が明示され、中小企業庁の改正説明資料では、これに加えて不当な給付内容の変更及び不当なやり直しが整理されています。

まず受領拒否とは、中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品や役務の受領を拒むことです。典型例は、納期どおり・仕様どおりに納品されているのに、「在庫が増えた」「販売計画が変わった」「社内承認がまだ下りていない」といった発注側の事情で受け取らない場面です。取適法の発想は明快で、発注側の都合を受注側に転嫁してはならない、ということです。

次に返品です。これは、いったん受領した後で、中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等を返すことをいいます。受領拒否との違いは、受け取る前に拒むか、受け取った後で返すかという点にあります。たとえば、受注側に落ち度がないのに、「やはり不要になった」「客先の都合で案件が止まった」「予定数量をさばけなかった」といった理由で返送するのは、典型的に危険です。

もっとも、受領拒否や返品が常に絶対禁止というわけではありません。中小企業庁の資料が前提にしているのは、あくまで中小受託事業者に責任がないのにという場面です。したがって、仕様不適合、重大な品質不良、合意した納期違反など、受注側に帰責性があり、その内容に応じて受領拒否や返品が相当といえる場合まで一律に禁じるものではありません。ただし、この場合でも、単なる「気に入らない」「期待と違う」といった主観では足りず、どこが契約内容に適合しないのかを具体的に示せることが必要です。これは不当減額の場面と同じく、客観的な説明可能性が重要だということです。

そして実務で最も揉めやすいのが、やり直し要請です。中小企業庁の改正説明資料では、優越的地位の濫用規制の説明の中で、やり直しの要請が問題行為として整理されており、さらに「不当な給付内容の変更及び不当なやり直し」が論点として掲げられています。要するに、受注側に責任がないのに、仕様変更、追加修正、再制作、再作業を無償又は不合理な条件で押し付けることは危ういということです。

ここで重要なのは、正当な手直し要求不当なやり直し要請は別物だという点です。たとえば、発注時に明示された仕様に達していない、検収基準を満たしていない、明らかな欠陥があるといった場合に補修や再制作を求めること自体は当然あり得ます。しかし、発注後に委託事業者の気分や営業都合で内容を変えたり、「ついでにここも直してほしい」と追加作業を無償で求めたり、最初の指示が曖昧だったのに後から完成物を責めたりするのは、不当化しやすい場面です。

現場では、システム開発、デザイン、広告制作、金型、試作品、運送、保守などでこの問題が頻発します。たとえば、システム開発で要件定義が甘いまま走り出し、途中で発注側が仕様を広げたのに追加費用を認めない場面、デザイン業務で「イメージと違う」を繰り返して修正を無制限に求める場面、運送委託で受注側に責任のない再配送コストを当然のように負担させる場面などです。こうした場面では、形式的には「お願い」に見えても、実質的には不当なやり直し要請や経済上の利益提供要請の問題に接近します。実際、2026年の公取委勧告でも、受注者に無償で運送させる行為が「不当な経済上の利益の提供要請」として問題視されています。

発注側の実務対応としては、まず発注内容と検収基準を最初に具体化することが重要です。第4講の発注内容明示義務とつながる話で、何をもって完成とするかが曖昧だと、後で「やり直し」が契約上当然なのか、追加委託なのかが分からなくなります。そのうえで、納品後に問題が見つかった場合には、受注側の責任か、発注側の仕様変更か、双方の認識齟齬かを切り分け、追加対応が必要なら代金・納期を含めて再合意するのが安全です。

受注側から見ると、「受け取ってもらえない」「納品後に戻された」「何度も無償修正を求められる」という場面では、単に我慢するのではなく、まず当初の発注条件と、どこに自社の責任があると相手が言っているのかを文書で確認することが重要です。発注書、メール、検収基準、修正依頼履歴が残っていれば、受領拒否・返品・不当なやり直しのどれが問題なのかを整理しやすくなります。

結局のところ、第7講の要点はこうです。発注側の都合で受け取らない、返す、作り直させる、は危ない。受注側の責任による是正要求と、発注側都合の押し付けは厳密に分けなければならない。 取適法は、納品後に力関係でしわ寄せをかける運用を許さない方向に明確に振れています。

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