会社破産と破産管財業務――破産管財人は何をするのか

会社破産は、単に「会社をたたむ手続」ではありません。破産法1条は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算手続を定めることにより、債権者その他の利害関係人の利害や債務者・債権者間の権利関係を適切に調整し、債務者財産の適正かつ公平な清算を図ることを目的としています。裁判所も、破産手続を、裁判所が開始決定をし、破産管財人を選任し、その破産管財人が債務者の財産を金銭に換えて、法律の定める優先順位に従って債権者に配当する手続であると説明しています。会社破産とは、経営破綻した企業の「終わり方」を、法のルールに従って整理する制度なのです。
破産手続開始原因について、破産法15条は一般に「支払不能」を定め、さらに会社などの法人については、同法16条1項が「法人は、支払不能又は債務超過にあるとき」は破産手続開始の原因があるとしています。株式会社は、会社法471条5号により破産手続開始決定によって解散しますが、破産法35条1項は、破産手続の目的の範囲内で、破産者である法人をなお存続するものとみなしています。つまり、会社は開始決定で形式的には解散しつつも、換価・配当・調査・責任追及といった清算目的のためには法的に存続を擬制されるわけです。加えて、清算中に財産が債務を完済するのに足りないことが明らかになった場合には、清算人は直ちに破産手続開始の申立てをしなければならないとされており、会社法上も「清算で足りないなら破産へ」という接続が予定されています。
では、破産管財人は何をするのでしょうか。破産法31条1項は、裁判所が破産手続開始の決定と同時に破産管財人を選任しなければならない場合を定め、同法78条1項は、破産財団の管理及び処分をする権利が破産管財人に専属すると規定しています。また、破産法34条1項は、破産者が破産手続開始時に有する一切の財産を破産財団とし、同法79条は、破産管財人が就職後直ちにその管理に着手すべきことを定めています。さらに、破産管財人は善良な管理者の注意をもってその職務を行わなければならず(破産法85条1項)、単なる事務処理担当者ではなく、裁判所の監督下で財産の保全・換価・配当を担う中核的機関です。裁判所も、破産手続においては、破産管財人として破産した会社の財産を強制的に金銭に換えて債権者に分配する役割を弁護士が担うことが多いと案内しています。
実務において破産管財業務の中心になるのは、徹底した調査と回収です。帳簿、通帳、会計資料、契約書、在庫、売掛金、未収金、保険、リース、担保設定の有無などを洗い出し、どこまでが破産財団に属するかを確認し、換価可能な財産を確保していきます。そのために、破産法40条は、破産者本人のみならず、法人であれば取締役、執行役、理事、監事、清算人等に対して、破産管財人の求めに応じ必要な説明をする義務を課しています。さらに、破産法81条1項は、必要があるときは裁判所が破産者宛て郵便物等を破産管財人に配達すべき旨を嘱託できるとし、同法83条は、破産管財人が説明要求や帳簿書類等の検査を行うことができると定めています。会社破産における管財業務とは、まさに「財産の所在を明らかにし、散逸を防ぎ、債権者全体のために可視化する」仕事です。
会社破産では、契約関係や従業員対応も重要です。破産法36条1項は、破産管財人が裁判所の許可を得て破産者の事業を継続することができると定めており、散発的にではあっても、在庫処分や事業譲渡準備のため一定期間の事業継続が問題になることがあります。また、破産法53条1項は、双方未履行の双務契約について、破産管財人が解除するか、あるいは破産者の債務を履行して相手方の反対給付を請求するかを選択できるとしています。加えて、従業員保護の観点では、破産手続開始前3か月間の給料請求権は財団債権とされ(破産法149条1項1号)、財団債権は破産債権に先立って弁済されます(破産法151条)。会社破産において、労務・賃金・契約処理が早い段階から重要になるのは、こうした条文構造によるものです。
さらに、破産管財業務の見せ場は、偏頗弁済や不当な財産流出を巻き戻す局面にあります。破産法160条1項は、破産債権者を害する行為など一定の行為を否認できる旨を定め、同法173条1項は、その否認権を破産管財人が訴え、否認の請求又は抗弁によって行使できるとしています。加えて、法人破産では役員責任の追及も問題となり、破産法177条1項は役員の財産に対する保全処分を、178条1項は役員等の責任に基づく損失補填や原状回復請求権について査定裁判を申し立てる制度を置いています。会社破産は、単なる「後始末」ではなく、直前の資産移動や役員の行為を法的に点検し、必要に応じて回収・責任追及まで行う手続でもあります。
このように、会社破産における弁護士の役割は、申立代理人として適時適切に申立てを行う段階にとどまりません。開始決定後は、破産管財人として財産の保全・調査・換価・配当、契約整理、従業員対応、否認権行使、役員責任追及までを担い、会社の最終局面を法的に整序することになります。会社破産に強い弁護士とは、単に申立書を書ける弁護士ではなく、「会社の最後を、公平かつ可視的に処理できる弁護士」であるといえるでしょう。