第41講 帳簿不備・資料不足の事案でどう進めるか|“ない会社”の管財実務
第41講 帳簿不備・資料不足の事案でどう進めるか|“ない会社”の管財実務

法人破産の中には、帳簿が揃っておらず、通帳も契約書も請求書も十分に残っていない事案がある。いわば“ない会社”の管財である。このような事案では、完全な復元を目指すのではなく、限られた資料からどこまで合理的に全体像を再構成できるかが問われる。
まず重要なのは、残っている資料を散発的に見るのではなく、種類ごとに整理することである。通帳、会計データ、税務資料、郵便物、メール、スマートフォン、クラウド上の情報など、断片的でも情報源を横断的に集めることが必要である。代表者の記憶も資料の一つではあるが、必ず客観資料で裏付けを取るべきである。
資料不足事案では、郵便物や行政通知、金融機関照会、取引先への確認など、外部情報の重要性が高まる。内部資料がなくても、外部とのやり取りから契約関係や債務の存在、資産の所在が見えることがある。
また、資料がないこと自体が論点となる場合もある。帳簿不備が偶然の散逸にすぎないのか、管理懈怠なのか、財産流出隠しの一部なのかによって、役員責任の問題にもつながる。
“ない会社”の管財では、資料不足を理由に直ちに思考停止するのではなく、外部情報と断片資料をつなぎ合わせて最低限の輪郭を描くことが重要である。