第31講  養育費を払ってもらえないときはどうするか|強制執行と履行確保の実務

第31講
養育費を払ってもらえないときはどうするか|強制執行と履行確保の実務

養育費は、離婚後に子どもを監護していない親が、子どもの生活や成長のために分担する費用です。もっとも、離婚時には約束したのに、その後支払が止まるというケースは少なくありません。実務では、「払わない相手をどう説得するか」だけでなく、「払われないことを前提にどう回収可能性を高めるか」という視点が重要になります。

まず大切なのは、養育費を口約束で終わらせないことです。協議離婚であっても、養育費の金額、始期、終期、支払日、振込先などを明確にし、できれば公正証書にしておくべきです。特に、強制執行認諾文言付き公正証書にしておけば、改めて判決を取らなくても、一定の場合には差押えに進みやすくなります。調停や審判で養育費が定められている場合も、これらの調書や審判書が執行の土台になります。

相手が支払わないとき、最初から直ちに強制執行に進むとは限りません。まずは未払額を整理し、支払催告を行い、任意履行を促すことが通常です。しかし、口先では払うと言いながら履行しない例も多いため、相手の勤務先、収入源、預金口座などをある程度把握しておくことが重要です。養育費は毎月発生する継続的給付であるため、給与差押えが実務上強力な手段になります。

近年は、養育費不払への対応として、裁判所の履行勧告や履行命令、財産開示手続、第三者からの情報取得手続など、履行確保の制度も整備されています。ただし、制度があるからといって自動的に回収できるわけではありません。結局は、どの名義を持っているか、どの財産を狙うか、どの順番で動くかという実務判断が重要です。

養育費の問題は、感情的には「約束を破られた」という怒りが前面に出やすい分野ですが、子どもの生活費という性質上、最も大事なのは冷静に回収可能性を高めることです。離婚時に執行可能な形で定めておくこと、払われなくなったら早めに対応すること、この二つが実務上の要点です。

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