第34講 生前贈与はどこまで遺留分に入るのか|持戻しとの違いも含めて

第34講

生前贈与はどこまで遺留分に入るのか|持戻しとの違いも含めて

遺留分でいちばん揉めやすいのは、「昔の生前贈与をどこまで計算に入れるのか」という点です。今の制度では、遺留分を算定する基礎財産に入る生前贈与は無制限ではありません。法務省の改正説明では、相続人に対する生前贈与は原則として相続開始前10年以内第三者に対する生前贈与は原則として相続開始前1年以内のものが算入対象になると整理されています。 (moj.go.jp) (moj.go.jp)

この点でまず大事なのは、遺産分割の特別受益の持戻しと、遺留分の算定に入る贈与は、同じではないということです。法務省の見直し資料は、遺産分割における特別受益の持戻しと、遺留分算定の基礎に入る贈与の範囲は別問題であることを前提に議論しており、改正後の遺留分では、相続人に対する贈与について10年という期間制限を明示しています。つまり、「特別受益になりそうな贈与だから、当然に遺留分でも全部入る」という整理にはなりません。遺留分では、まず算入期間のルールが先にかかります。 (moj.go.jp) (moj.go.jp)

なぜこんな違いがあるのか。法制審の議事録では、相続人に対する生前贈与を10年に限定した理由として、あまりに過去まで遡ると争いが長期化し、資料収集も困難になることが挙げられています。実務感覚でもそのとおりで、20年前、30年前の援助まで全部遺留分に入れるとなると、証拠も散逸しやすく、紛争が終わりにくくなります。遺留分制度は最低保障の制度なので、遺産分割における特別受益ほど広く昔の贈与を引っ張らず、一定期間で線を引く方向が採られたわけです。 (moj.go.jp)

もっとも、この期間制限にも例外があります。法務省の要綱案説明では、当事者双方に害意がある場合には、その時期にかかわらず遺留分算定の基礎に加え、減殺ないし侵害額算定の対象にする現行法の考え方を維持すると整理されています。したがって、「1年や10年を過ぎているから絶対に関係ない」とまでは言えません。遺留分権利者を害することを知りながらされた贈与は、古くても問題になる余地があります。 (moj.go.jp)

また、算入する額も単純ではありません。法務省の要綱案説明は、負担付贈与については目的財産の価額から負担の価額を控除した額を基礎財産に入れるとし、不相当な対価による有償行為についても、目的物の価額から対価を控除した額を算入する整理を示しています。つまり、見かけ上は大きな財産移転でも、相手方が相応の負担や対価を出していれば、その全額がそのまま遺留分計算に入るわけではありません。 (moj.go.jp)

結局のところ、遺留分で生前贈与を見るときは、
① 相手が相続人か第三者か
② 相続開始の何年前の贈与か
③ 害意のある例外に当たるか
④ 贈与の全額を入れるのか、負担や対価を差し引くのか
という順番で見ると整理しやすいです。遺産分割の特別受益と同じ感覚で全部を持ち込むと、遺留分の計算はすぐにずれます。遺留分は「最低保障」の制度なので、生前贈与の取り込み方にも、それに見合った限定がかかっているのです。 (moj.go.jp) (moj.go.jp)

第35講では、遺留分侵害額請求の期限はいつまでか|1年と10年の考え方を扱います。遺留分は計算できても、期限を落とすと権利行使自体ができなくなります。

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