第20講 労働保険・社会保険の手続|破産会社でも止めてはいけない実務

第20講 労働保険・社会保険の手続|破産会社でも止めてはいけない実務

法人破産では、財産換価や債権者対応が前面に出るため、労働保険・社会保険の届出は後回しにされがちである。しかし実務上は、ここを止めることはできない。会社が実質的に止まっていても、雇用保険、健康保険、厚生年金保険に関する資格喪失や事業所廃止の手続が放置されれば、従業員の離職後手続、失業給付、保険証利用、保険料整理に直接の支障が生じる。つまり、労働保険・社会保険の処理は、単なる役所向け事務ではなく、従業員対応と会社終息の両方を支える基盤的作業である。

雇用保険については、ハローワークの案内上、「雇用保険適用事業所廃止届」が事業所廃止時の手続として用意されており、帳票一覧にも明示されている。また、届出様式の案内では、廃止日の翌日から起算して10日以内の提出が求められている。加えて、被保険者資格喪失や離職票交付の手続とも連動するため、従業員の退職時期と整合的に進める必要がある。会社側の資料が散逸していると被保険者番号や離職理由の整理自体が難航することがあるが、だからこそ、破産開始後早い段階で賃金台帳、出勤簿、雇用契約書等を確保しておくことが重要になる。

社会保険については、日本年金機構が、事業廃止や解散等により適用事業所に該当しなくなった場合に「適用事業所全喪届」を提出すること、提出時期は事実発生から5日以内であることを案内している。さらに、届書の案内では、被保険者全員分の資格喪失届を併せて提出すること、添付資料として解散登記の記載がある登記事項証明書や雇用保険適用事業所廃止届の写し等が例示されている。つまり、雇用保険と社会保険は別々の制度でありながら、実務上は相互に参照関係を持ち、どちらか一方だけ進めても完結しない。破産会社においては、まさにこの“連動する事務”を誰が担うのかが曖昧になりやすく、管財人が全体を見通して整理する必要がある。

さらに、これらの手続は、従業員保護だけでなく、会社側の未払保険料や公租公課整理にも関わる。事業所廃止や資格喪失の時点が曖昧だと、不要な保険料が積み上がったり、逆に従業員側が給付を受ける際に障害になったりする。法人破産における労働保険・社会保険の実務は、財産換価のように目立つ作業ではないが、放置の不利益が大きく、しかもやり直しが煩雑であるという意味で、極めて重要である。第20講では、「会社が終わるからこそ届出が要る」という視点を明確にし、破産実務における地味だが外せない工程として位置づけるべきである。

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