第12回 法人はどう消えるか|清算終結と“免責がない”ことの意味

法人はどう消えるか|清算終結と“免責がない”ことの意味

法人破産の終わり方を考えるとき、まず切り分けるべきなのは、**「破産手続が終わること」「法人が法的に消えること」**は、条文上まったく同じ一語ではない、という点です。破産法220条は、最後配当・簡易配当・同意配当が終わり、さらに計算報告に関する集会終結または異議期間の経過があったときに、裁判所が破産手続終結の決定をする、と定めています。つまり、まず手続としての「終結」があります。

そのうえで、法人については破産法35条が重要です。同条は、他の法令の規定により破産手続開始決定で解散する法人、または解散後に破産手続開始決定を受けた法人は、破産手続による清算の目的の範囲内で、破産手続が終了するまで存続するものとみなすとしています。つまり法人は、開始決定後も普通の事業主体として残るのではなく、清算のためだけに、期間限定で法的に残されるのです。

この構造からすると、「法人はどう消えるか」という問いへの答えは、かなり明快です。法人は、破産手続開始決定で清算局面に入り、破産法35条の存続擬制のもとで、配当・計算報告・終結まで手続の担い手として法的に残り、破産手続が終わるところで、その“清算のための仮の存続”も終わる、という流れになります。したがって、法人破産の実感としては、会社は開始決定で実質的に「通常の会社」としては終わり、終結で法的にも畳まれる、という理解がいちばん実務感覚に近いです。

ここで「免責がない」ことの意味が見えてきます。大阪地裁の案内は、個人については、破産しただけでは債務を返済する責任は免れず、免責許可決定が確定して初めて法律上の返済責任を免れると説明しています。他方で、会社(法人)は、破産手続が終了して清算が終われば法律上消滅するので、免責に関する審理は行われないと明記しています。つまり法人に免責がないのは、「法人にも債務が残るのに放置されるから」ではなく、免責を与えるべき法主体そのものが、清算終結で消えるからです。

この点は誤解しやすいところですが、破産手続それ自体は、本来「債務を法律上消す制度」ではありません。裁判所の説明資料でも、破産手続は財産の清算手続であって、債務を法律的に消滅させる制度ではなく、個人が残債務の責任を免れるには別に免責手続が必要だとされています。個人では、手続が終わっても人は残るので、免責審理が要る。法人では、手続が終わって清算も終われば主体が消えるので、免責審理を置く意味がない。この対比が、「法人に免責がない」ことの本質です。

したがって、裁判所が最後に見ているのは、「この会社を許してよいか」ではありません。見るのは、換価すべきものは換価したか、配当すべきものは配当したか、計算報告は異議に耐える形で閉じたか、そして破産法35条の存続擬制を終わらせてよい状態まで清算が進んだか、という点です。個人破産の終盤が免責許可の可否に重心を置くのに対し、法人破産の終盤は、終結と消滅をつなぐ清算の完了性に重心があります。

要するに、法人破産で会社が「消える」とは、感覚的にフェードアウトすることではありません。開始決定で清算局面へ入り、破産法35条により清算目的の範囲でだけ存続し、220条の終結段階まで処理が閉じたところで、その法的な存続も終わる。だから法人には免責がない。許されて終わるのではなく、清算し尽くされて終わる。そこが、個人破産との一番大きな違いです。

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