第28講 代表者貸付・役員借入・関係者資金移動の見方|どこから不自然とみるか
第28講 代表者貸付・役員借入・関係者資金移動の見方|どこから不自然とみるか

破産会社の帳簿には、「代表者貸付金」「役員借入金」「仮払金」「立替金」などの科目が現れることがある。中小企業では会社と代表者個人の資金が明確に分離されていないことも多いが、破産実務では形式的な科目名にとらわれず、その実質を確認する必要がある。
たとえば、代表者貸付金とされていても、実際には生活費、住宅ローン、保険料、家族口座への送金などに使われていることがある。その場合、単なる一時貸付ではなく、会社財産の私的流用や回収困難な流出とみるべき可能性がある。逆に、役員借入金とされていても、本当に役員個人から資金が入ったのか、帳簿上の辻褄合わせではないかを通帳等で確認しなければならない。
不自然さを判断する第一の観点は、裏付資料の有無である。契約書、返済予定、利息の定め、実際の入出金記録が存在するかを確認する。第二は返済実態である。貸付金であるにもかかわらず長年放置され、具体的返済が全くない場合には、回収可能資産としての実質が疑わしい。第三は相手方との関係性である。代表者本人だけでなく、親族、親族会社、実質支配会社への資金移動であれば、より慎重に見る必要がある。
中小企業では資金混同が珍しくないとしても、破産手続で問題となるのは、債権者に配当されるべき財産がどこへ行ったかという点である。代表者貸付や役員借入は、単なる会計科目ではなく、財産流出や責任追及の入口となる重要な論点である。