第29講 偏頗弁済とは何か|破綻前に特定債権者へ払ったお金をどう見るか

第29講 偏頗弁済とは何か|破綻前に特定債権者へ払ったお金をどう見るか

会社の資金繰りが悪化すると、限られた資金をどの債権者に回すかという選別が生じる。その結果、特定債権者にだけ支払が行われ、他の債権者には支払われないことがある。破産手続では、このような破綻前の選別的支払が一定の場合に否認の対象となる。これが偏頗弁済である。

偏頗弁済が問題となるのは、破産手続が債権者間の公平な分配を目的とするからである。破綻直前に一部の債権者だけが優先的に回収を受けることを放置すれば、破産手続の平等原則が害される。そこで、破産法は一定の時期や要件のもとで、特定の弁済を取り消して財団に戻す仕組みを設けている。

実務では、まず「いつ」「誰に」「いくら」「何の債務として」支払われたかを把握する必要がある。預金通帳、総勘定元帳、振込記録、請求書等を照合し、破綻前に集中している支払を抽出する。そのうえで、通常取引の継続として行われたものか、督促や差押え回避のために優先されたものか、関係者に対する支払かを検討する。

特に、親族借入の返済、関係会社への送金、金融機関への返済などは注意を要する。形式上通常の返済に見えても、破綻を見越した保全行動であることがある。また、相手方が支払不能状態を認識していたかどうかも重要な事情となる。

偏頗弁済の調査は、通帳上の支払を眺めるだけでは足りない。その支払が事業継続のための通常行為か、特定債権者の抜け駆けを許すものかを、破綻時期との関係で見極める必要があるのである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA