第9講 不貞行為とは何か|慰謝料請求と離婚原因の基本
第9講
不貞行為とは何か|慰謝料請求と離婚原因の基本

離婚問題で最も多く相談されるテーマの一つが不貞です。ただ、日常会話でいう「浮気」と、法律上の「不貞行為」は必ずしも同じではありません。法的に何が問題となるのかを正確に理解しておかないと、感情と法的評価がずれてしまうことがあります。
法律上の不貞行為とは、一般に、配偶者がその自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を持つことを指します。したがって、異性と親しく連絡を取っていた、二人で食事に行っていた、手をつないでいた、といった事情だけでは、直ちに法的な不貞行為に当たるとは限りません。もっとも、そのような事情が複数重なり、肉体関係を強く推認させる場合には、証拠全体として意味を持つことがあります。
不貞行為が認められると、主に二つの法的問題が生じます。
一つは、離婚原因になるという点です。相手が離婚に応じない場合でも、不貞行為が立証されれば、裁判で離婚が認められる重要な根拠になります。
もう一つは、慰謝料請求の対象になるという点です。不貞は、配偶者に精神的苦痛を与える不法行為と評価されるため、配偶者本人に対してだけでなく、一定の場合には不貞相手に対しても慰謝料請求が可能になります。
もっとも、不貞があれば常に高額の慰謝料が認められるわけではありません。婚姻期間、子どもの有無、不貞の期間や態様、婚姻関係がすでに破綻していたかどうかなど、さまざまな事情が金額に影響します。逆に、不貞の疑いが強くても、証拠が不十分であれば請求が難しくなることもあります。
また、注意すべきなのは、婚姻関係がすでに実質的に破綻していた場合には、不貞相手への請求が制限されることがあるという点です。つまり、「配偶者が他の人と交際した」という事実だけを切り取るのではなく、その時点で夫婦関係がどうだったのかも重要になります。
不貞問題では、感情的には「裏切られた」という思いが先に立ちます。しかし、法的には、不貞の有無、婚姻関係の状況、証拠の内容、慰謝料請求の相手と範囲などを冷静に整理する必要があります。不貞は離婚問題の中心的論点になりやすいからこそ、言葉の印象ではなく、法的な意味を踏まえて対応することが重要です。