第11講 不貞した側から離婚を求められたらどうなるか|有責配偶者の離婚請求
第11講
不貞した側から離婚を求められたらどうなるか|有責配偶者の離婚請求

配偶者の一方に不貞があった場合、多くの人は「不貞をした側が離婚を言い出すことなどできるのか」と感じます。感覚としてはもっともであり、法的にも、不貞その他婚姻関係の破綻について主たる責任を負う側、いわゆる有責配偶者からの離婚請求は、原則として容易には認められません。婚姻制度を守る観点からすれば、自ら関係を壊した側が、その結果を利用して離婚を求めることには強い制約がかかるからです。
もっとも、ここで重要なのは、「原則として難しい」ということであって、「絶対に認められない」という意味ではないという点です。実務では、長期間にわたり別居が継続し、婚姻共同生活の実体がすでに失われ、未成熟子もおらず、離婚によって相手方が過酷な生活状況に置かれるわけでもないというような事情が重なれば、有責配偶者からの離婚請求であっても認められる余地があります。裁判所は、単に過去の有責性だけを見るのではなく、現在の婚姻の実体、回復可能性、離婚による不利益の程度まで含めて判断します。
そのため、不貞をされた側としては、「相手が有責だからそれだけで離婚請求は必ず排斥される」と考えるのではなく、現在までの別居期間、生活費の支払状況、子どもの年齢、婚姻関係回復の余地、自分の生活基盤などを具体的に整理する必要があります。他方で、不貞をした側からすれば、単に「もう気持ちがない」「別居しているから終わりだ」と主張するだけでは足りず、長期の経過や扶養面の手当てなど、離婚を認めてもなお著しい不公平が生じないことを示さなければなりません。
有責配偶者の離婚請求は、感情的対立が非常に強くなりやすい論点です。しかし、裁判では感情だけではなく、婚姻がどこまで実質的に終了しているか、離婚による打撃がどこにどの程度生じるかが丁寧に見られます。拒否する側も求める側も、「不貞があった」という一点だけで発想を止めず、その後の生活実態と不利益の構造まで見据えて方針を立てる必要があります。