第2講 採用内定はどこまで拘束力を持つのか|内定取消しが問題になる場面
第2講
採用内定はどこまで拘束力を持つのか|内定取消しが問題になる場面

採用内定は、単なる「予定」や「期待」にすぎないと軽く考えられがちですが、法的にはそう単純ではありません。採用内定の時点で、始期付・解約権留保付の労働契約が成立したと評価される場面があり、その場合、内定取消しは実質的に解雇として扱われます。厚生労働省も、新卒者について労働契約が成立したと認められる場合には、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当でない内定取消しは無効になると案内しています。
このため、会社側としては「まだ入社していないから自由に取り消せる」という発想を持つべきではありません。特に、採用通知書や内定通知書の文面が明確であり、本人も入社を前提に他社就職を断念しているような場合には、会社の拘束は相応に強くなります。経営悪化や人員計画の見直しだけで簡単に内定取消しが許されるわけではなく、まずは配置転換、入社時期繰下げの可否、採用数調整の別手段など、取消し回避の努力が現実に尽くされたかが問われます。厚生労働省も、内定取消し防止のために最大限の経営努力を行うこと、やむを得ず取消しや入職時期繰下げを行う場合には対象者への説明や支援に誠実に対応することを求めています。
また、新規学校卒業予定者について内定取消しを行おうとする事業主には、ハローワーク等への通知が必要となる場面があります。これは単なるマナーではなく、採用内定取消しが社会的影響の大きい行為として扱われていることを意味します。
実務上の重要点は、内定段階で何を留保条件としているのかを明確にしておくことです。たとえば、卒業できない場合、必要資格を取得できない場合、健康状態や経歴申告に重大な問題が判明した場合など、合理的な留保事由はあり得ます。しかし、それでも後から広く使える白紙委任のような条項にはなりません。留保事由は具体的で、採用判断と実質的に関係するものである必要があります。
使用者側の観点からみれば、採用内定管理のポイントは三つです。第一に、募集段階で安易な人数確保をしないこと。第二に、内定通知書や誓約書の文言を整えること。第三に、取消しが視野に入る場合は、法的評価が「解雇」に近づくことを前提に、早期に専門家を入れて手順を誤らないことです。採用は入口ですが、ここで雑に動くと、入社前から労働紛争が始まります。