第20講 就業規則・社内規程の見直しポイント ――令和7年改正対応と企業側リスク管理の総点検
第20講 就業規則・社内規程の見直しポイント
――令和7年改正対応と企業側リスク管理の総点検

育児・介護休業法への対応で、最終的に必ず確認すべきなのが、就業規則・育児介護休業規程・社内書式の見直しです。育児休業、産後パパ育休、子の看護等休暇、短時間勤務制度、介護休業、介護休暇、柔軟な働き方措置、個別周知・意向確認など、制度ごとの内容を理解していても、それが社内規程に正しく反映され、現場で運用できる形になっていなければ、実務上は不十分です。
特に育児・介護休業法は改正が多い分野です。過去に作成した育児介護休業規程をそのまま使い続けている会社では、現在の法令や実務と内容がずれていることがあります。たとえば、産後パパ育休の記載がない、子の看護等休暇の対象範囲が古い、介護離職防止のための個別周知・意向確認に対応していない、3歳から小学校就学前までの柔軟な働き方措置が未整備である、といった問題が生じ得ます。規程が古いままでは、従業員から申出があった際に、会社側が誤った説明をしてしまう危険があります。
まず確認すべきは、育児休業に関する規定です。対象者、申出期限、休業期間、分割取得、延長、産後パパ育休との関係、有期雇用労働者の取扱い、労使協定により対象外となる労働者の範囲などが、現在の法令に沿って整理されているかを確認する必要があります。特に、有期雇用労働者について「正社員以外は対象外」と読めるような規定が残っている場合は、早急な見直しが必要です。
次に、休暇制度の見直しも重要です。子の看護等休暇、介護休暇について、対象となる子や家族、取得可能日数、時間単位取得、有給・無給の別、賃金控除の方法、申出手続が明確に定められているかを確認します。法改正により対象となる場面が拡大している部分について、古い規程のまま「病気・けがの看護」に限定した記載になっていると、実際の制度運用とずれが生じるおそれがあります。
短時間勤務制度、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限についても、対象者、請求方法、適用期間、例外、労使協定との関係を整理しておく必要があります。特に短時間勤務制度では、勤務時間帯、賃金控除、賞与・評価への影響が曖昧なままだと、復職後のトラブルにつながります。制度利用者に対する賃金や評価の取扱いは、規程上の根拠と合理的な説明が重要です。
令和7年改正対応として特に重要なのが、柔軟な働き方措置です。3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者について、会社がどの措置を選択して整備するのかを決める必要があります。始業時刻等の変更、テレワーク、養育両立支援休暇、短時間勤務制度などのうち、自社の業務内容や人員体制に合った制度を選び、対象者、申出方法、利用期間、勤務管理、賃金、評価、利用上のルールを規程化しておくことが求められます。
また、個別周知・意向確認に関する社内フローも整備が必要です。妊娠・出産等の申出があったとき、子が3歳になる前、介護に直面した旨の申出があったときなど、会社が制度を説明し、本人の意向を確認すべき場面は複数あります。これを現場の上司任せにすると、説明漏れや不用意な発言が生じるおそれがあります。誰が、いつ、どの資料を用いて説明し、どのように記録を残すのかを、社内手続として明確にしておくべきです。
介護関係では、介護休業、介護休暇だけでなく、介護離職防止のための雇用環境整備と、40歳等における情報提供にも注意が必要です。相談窓口、社内研修、制度案内資料、管理職向けマニュアル、社内イントラネット掲載など、従業員が介護に直面する前から制度を知ることができる仕組みを整えておくことが重要です。介護は突然始まることが多いため、制度を事前に周知しておくことが、離職防止につながります。
ハラスメント防止規程との接続も見落とせません。育児休業、介護休業、短時間勤務、看護等休暇、介護休暇などの制度利用を理由とする嫌がらせや不利益取扱いを禁止する方針を明確にし、相談窓口や調査対応フローを整備しておく必要があります。制度利用者本人だけでなく、周囲の従業員に過度な負担が集中しないよう、業務配分や管理職の調整責任も明確にしておくべきです。
就業規則・社内規程を見直す際には、規程本文だけでなく、申出書式、説明資料、面談シート、勤怠システム、給与計算、評価制度との整合性も確認する必要があります。規程には制度が書かれているのに、勤怠システムで時間単位取得を処理できない、賃金控除の計算方法が給与担当者に共有されていない、管理職が制度を知らない、といった状態では、実務対応としては不十分です。
育児・介護休業法対応は、単なる法令遵守ではありません。従業員の離職を防ぎ、職場の信頼関係を維持し、採用・定着につなげるための企業労務の基盤です。他方で、誤った説明、不利益取扱い、ハラスメント、規程不備があれば、紛争や行政対応のリスクにつながります。
企業としては、令和7年改正対応を機に、就業規則、育児介護休業規程、労使協定、賃金規程、人事評価制度、在宅勤務規程、ハラスメント防止規程を総点検することが重要です。制度を「置いてある」だけでなく、従業員に説明でき、現場で運用でき、記録を残せる状態にしておくこと。それが、育児・介護休業法に対応する企業側リスク管理の最終的なポイントです。