第14講 介護休業の基本構造 ――対象家族、通算93日、3回分割取得の実務
第14講 介護休業の基本構造
――対象家族、通算93日、3回分割取得の実務

介護休業は、要介護状態にある家族を介護する労働者が、一定期間仕事を休むことができる制度です。育児休業と比べると、企業の現場では利用件数が少ないように見えることもありますが、実際には、介護の問題を抱えながら会社に相談できず、突然退職に至るケースも少なくありません。企業にとって介護休業制度は、単に休業を認める制度ではなく、介護離職を防ぎ、人材を職場に残すための重要な労務管理制度です。
介護休業の対象となるのは、要介護状態にある対象家族を介護する労働者です。対象家族には、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫などが含まれます。ここでいう要介護状態とは、負傷、疾病、身体上または精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。介護保険上の要介護認定と完全に同じ意味ではないため、会社としては、介護保険の認定の有無だけで機械的に判断しないよう注意が必要です。
介護休業の期間は、対象家族1人につき通算93日までです。また、この93日は一度にまとめて取得するだけでなく、3回まで分割して取得することができます。たとえば、入退院時の対応、介護施設の選定、在宅介護体制の整備、ケアマネジャーとの打合せなど、介護の局面に応じて休業を分けて利用することが想定されます。介護休業は、長期間にわたり自宅で介護し続けるためだけの制度ではなく、仕事を続けるために介護体制を整える期間として利用される面が強い制度です。
実務上、会社がまず確認すべきなのは、対象家族、要介護状態、取得希望期間、過去の介護休業取得歴です。対象家族1人につき通算93日、3回までという管理が必要になるため、誰について、いつ、何日取得したのかを記録しておかなければなりません。口頭の相談だけで処理すると、後日、取得可能日数や分割回数をめぐって混乱が生じるおそれがあります。介護休業申出書、確認書、取得管理台帳などを整備しておくことが望ましいです。
介護休業についても、育児休業と同様、有期雇用労働者が対象となる場合があります。契約社員、パート、アルバイトであることだけを理由に、一律に対象外とすることはできません。ただし、一定の要件や労使協定により対象外とできる場合もあるため、雇用形態名だけで判断せず、法律上の要件、労使協定、雇用契約の状況を確認する必要があります。
会社が注意すべきなのは、介護休業の申出に対して、安易に否定的な反応を示さないことです。「介護は家庭の問題ではないか」「施設に入れればよいのではないか」「この忙しい時期に休まれると困る」などの発言は、制度利用を妨げる言動として問題になり得ます。介護は、従業員にとって精神的にも時間的にも大きな負担となる問題です。会社としては、まず制度上の申出として受け止め、必要事項を確認し、業務調整を検討する姿勢が必要です。
また、介護休業を取得したことを理由に、不利益な取扱いをすることは許されません。復職後に責任の軽い仕事へ一方的に変更する、評価を下げる、賞与を不合理に減額する、契約更新を不利に扱うといった対応は、介護休業取得を理由とする不利益取扱いとして問題となり得ます。介護休業中に業務体制が変わった場合でも、復職後の配置や処遇については、業務上の必要性、本人の経験、説明内容、処遇への影響を慎重に検討する必要があります。
介護休業の実務で難しいのは、育児と異なり、発生時期や終期が読みにくいことです。出産予定日のような明確な起点がある育児と違い、介護は突然始まり、状態が改善するのか、長期化するのか、施設入所が可能なのかが見通しにくい場合があります。そのため、会社としては、本人の状況を確認しつつも、過度に家庭事情に踏み込みすぎない配慮が必要です。業務調整に必要な範囲で情報を確認し、介護の詳細を詮索するような対応は避けるべきです。
介護休業は、取得したらそれで終わりではありません。むしろ重要なのは、休業期間中に、従業員が介護サービス、施設、家族間の役割分担、勤務継続の方法を整理し、復職後も働き続けられる状態を作ることです。会社としても、休業前の引継ぎ、休業中の連絡方法、復職時の勤務条件、短時間勤務や所定外労働制限など他制度との組合せを検討しておく必要があります。
企業にとって、介護休業対応は今後ますます重要になります。従業員の高齢化に伴い、親の介護に直面する社員は増えていきます。特に中堅社員や管理職が介護を理由に退職すると、会社にとって大きな損失となります。介護休業制度を正しく整備し、相談しやすい環境を作ることは、企業の人材確保にも直結します。
企業としては、介護休業規程、申出書式、取得日数管理、労使協定、復職時面談シート、管理職向けマニュアルを整備しておくことが重要です。介護休業を「突然の休職」として場当たり的に扱うのではなく、介護離職を防ぐための制度として位置づけることが、これからの企業労務に求められます。