第2回 開始決定で何が変わるか|社長の会社から破産財団へ

開始決定で何が変わるか|社長の会社から破産財団へ

法人破産でいちばん大きい転換点は、申立ての時ではなく、破産手続開始決定が出た時です。ここで会社は、単に「経営が苦しい会社」から、裁判所の監督の下で清算される対象へと性質を変えます。破産法34条は、開始時に会社が有している一切の財産を破産財団に組み入れる建付けを採っており、35条は、法人が開始決定により解散しても、破産手続による清算の目的の範囲で、手続終了までなお存続するものとみなしています。つまり開始決定後の会社は、通常営業を続ける主体ではなく、清算のために法的に残される存在になります。

この点を実務的に言い換えると、開始決定の前までは「社長の会社」だったものが、開始決定の後は「破産財団を中心に見る会社」へ変わる、ということです。売掛金、預金、在庫、設備、敷金返還請求権、保険解約返戻金、未収金などは、もはや経営判断の材料ではなく、債権者への公平な配当に向けて把握・保全・換価される対象になります。法人破産では個人破産のような自由財産の議論が前面に出ないので、34条の意味はより直截で、会社名義の財産を原則として全部、清算のテーブルに載せる条文だと理解した方が実務感覚に合います。

そして、その財産を誰が動かすのかを決めるのが78条です。開始決定があると、破産財団に属する財産の管理・処分権は、裁判所が選任した破産管財人に専属します。したがって、代表者は、開始決定後も会社の看板を背負っているように見えて、会社財産を従前どおり自由に処分できる立場ではなくなります。開始決定後の預金払戻し、売掛金回収、在庫処分、資産売却、契約処理の主導権は、原則として破産管財人側に移ります。

さらに79条は、破産管財人に対し、就職後直ちに破産財団の管理に着手すべきことを求めています。ここが重要で、開始決定は単なる形式的な節目ではありません。条文上も運用上も、決定後はすぐに財産保全と調査のフェーズへ入ることが予定されています。東京地裁の運用でも、管財事件では開始決定後の新たな債権者対応は破産管財人経由で行い、債権者集会では主として破産管財人が財産状況や管財業務の内容を報告するものとされています。開始決定により、会社の対外的な窓口と、手続の説明主体そのものが社長から管財人へ切り替わるわけです。

したがって、「開始決定で何が変わるか」という問いへの答えは、34条・35条・78条・79条を並べると非常に明快です。第一に、会社財産は破産財団として把握される。第二に、会社は消えるのではなく、清算のために法的に残される。第三に、その財産を動かす権限は社長ではなく破産管財人に移る。第四に、その移行は“そのうち”ではなく、開始決定直後から直ちに始まる。要するに、開始決定は、会社を終わらせるスイッチであると同時に、社長の管理から裁判所管理の清算へ主役を交代させるスイッチでもあるのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA