第10回 郵便物・転居制限・協力義務|調査の実効性はどう担保されるか
郵便物・転居制限・協力義務|調査の実効性はどう担保されるか

法人破産管財で財産調査の実効性を支えているのは、破産管財人の力量だけではありません。破産法は、調査を空振りに終わらせないために、いくつかの制度を重ねています。中でも重要なのが、①郵便物の管理、②居住地移動の制限、③説明義務、④重要財産の開示、という四つです。しかも法人案件では、会社そのものが住所を離れるわけではない一方で、破産法39条により、37条の居住制限と38条の引致は、会社の理事・取締役・執行役その他これらに準ずる者にも準用されます。したがって、法人破産での「転居制限」は、会社にかかるというより、代表者等が調査の射程から離脱しないよう担保する制度として読むのが正確です。
まず郵便物です。破産法81条は、裁判所が、破産管財人の職務遂行のため必要があると認めるときは、破産者宛ての郵便物等を破産管財人に配達するよう嘱託できると定め、82条は、破産管財人がそれを開いて見ることができるとしています。大阪地裁の案内でも、破産手続が始まると郵便物は破産管財人が中身を検査することになると説明されています。法人破産管財では、ここから未申告口座、保険、リース、売掛先、未記載債権者などが見つかることがあるので、郵便物管理は単なる監視ではなく、散逸防止と財産発見のための制度的な入口です。
次に転居制限です。破産法37条は、破産者が裁判所の許可なく居住地を離れられないことを定めています。そして39条がこの規定を会社の理事・取締役・執行役等に準用しています。法人破産管財でこの規律が意味を持つのは、代表者や実質的経営者が、開始決定後に連絡不能になったり、資料の所在だけ残して姿を消したりするのを防ぐためです。さらに38条は、裁判所が必要と認めるときは破産者を裁判所その他の場所に引致できると定めており、39条により法人案件でも代表者等に準用されます。要するに、法人破産での調査実効性は、善意の協力にだけ依存しているのではなく、所在確保のための手続的裏付けを持っています。
もっとも、実務の中心は強制ではなく説明義務です。破産法40条は、破産者に加え、法人の場合の取締役、執行役、監事、監査役、清算人等が、破産管財人や債権者委員会等の請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならないと定めています。しかも、その義務は「現在の役員」だけでなく、過去にそれらの立場にあった者にも及びます。法人案件では、会社名義の財産より先に、事情を知る人が散ってしまうことがあるので、この規定は、帳簿や通帳を読む前提としての人的情報源の確保に当たります。
これと並ぶのが、41条の重要財産開示義務です。破産法41条は、破産手続開始決定後、破産者が不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならないと定めています。東京地裁の法人用「打合せ補充メモ」も、代表印、社印、預貯金通帳、保険証券、賃貸借契約書、リース契約書、帳簿類、決算書類、税務申告書控え、鍵、在庫、訴訟関係書類などを、打合せ時に持参・申告する前提で整理しています。つまり法人破産管財では、抽象的な「協力してください」ではなく、何を出すべきかが具体化された開示・引継ぎの実務が、調査の実効性を支えています。
したがって、法人破産管財において「調査の実効性はどう担保されるか」という問いへの答えは、かなり明快です。会社宛て郵便物を管財人のもとに集める仕組みがあり、代表者等が所在不明にならないよう居住制限と引致の制度があり、事情を知る役員等には説明義務があり、財産内容については重要財産開示義務がある。裁判所に受ける管財とは、これらを威圧的に使う管財ではなく、郵便物・所在・説明・資料提出の四層で、調査が空中分解しないよう制度を使い分ける管財です。なお、法人破産中心のシリーズとしては、題名の「転居制限」は、会社それ自体の話というより、39条により代表者等へ準用される制限として読むのが正確です。