第17講 現金管理はどうするか|小口現金・レジ残高・社内保管金の確認

第17講 現金管理はどうするか|小口現金・レジ残高・社内保管金の確認

現金は最も単純な財産のように見えるが、法人破産の初動においては、むしろ最も散逸しやすく、かつ後から検証しにくい財産の一つである。預金であれば通帳や残高証明によって追跡可能であるのに対し、現金は、金庫、小口現金、レジ、釣銭準備金、営業担当者の手持金、仮受金、日々の売上回収金など、会社内部のさまざまな場所に分散して存在しうる。しかも、帳簿上の現金残高と実際残高が一致していないことは珍しくなく、管理が杜撰な会社ほど、破産直前における出金、持ち帰り、私的流用、帳簿未記載の回収金の滞留などが起こりやすい。したがって、管財人としては、現金を「どうせ大した額ではない」と軽視するのではなく、破産開始直後の時点で、できる限り迅速に所在と残高を把握し、証拠化する必要がある。

この点、破産法上、破産財団に属する財産については破産管財人が専属的に管理処分権を有するから、会社名義の現金はもちろん、代表者や従業員が「預かっているだけ」と説明する資金についても、その性質を精査しなければならない。現場実査に当たっては、単に金額を確認するだけでなく、いつ、どこで、誰の立会いのもとに、どの場所から、どのような名目の金銭が発見されたかを記録し、可能であれば金種内訳、封筒や保管容器の表示、帳簿残高との差異も併せて残しておくことが重要である。現金については、後から「本当はもっとあった」「それは個人資金だった」「その日動かした」などの説明が出やすいため、初動時の記録がそのまま紛争予防になる。

また、小売業や飲食業等では、レジ残高や売上金の扱いが問題となりやすい。閉店時点の売上金、クレジット売上未精算分、釣銭準備金、従業員立替分などが混在していると、何が純粋な現金残高で、何が後日精算されるべき項目なのかが不明確になりやすい。さらに、営業現場を持つ会社では、外勤者や店舗責任者が現金を保管していることもあり、本社だけを見ていては全体像を把握できない。したがって、管財人は、帳簿担当者や現場責任者から聴取し、日々の現金移動の仕組み自体を理解した上で、実地確認を進める必要がある。

現金管理の問題は、金額の多寡だけではない。むしろ、会社の資金管理体制の粗さや、破綻前の不自然な資金移動の兆候が、現金勘定の乱れとして現れることが多い。その意味で、現金確認は単なる残高把握ではなく、破綻直前の会社運営の状態を映す鏡でもある。法人破産の初動において現金管理を丁寧に行うことは、財団保全のためだけでなく、その後の代表者説明や否認検討の土台を築く意味でも重要である。破産財団は法的には管財人が専属的に管理処分する対象であり、その前提として、まず現金の所在と性質を動かぬ形で押さえることが必要になる。

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