第32講 役員責任追及をどう考えるか|破綻原因と責任の距離感
第32講 役員責任追及をどう考えるか|破綻原因と責任の距離感

法人破産では、会社財産の流出や経営悪化が見られると、役員責任追及が問題となる。しかし、会社が破綻したという結果だけで直ちに役員の責任が認められるわけではない。破綻原因と法的責任原因との距離を丁寧に見極める必要がある。
役員責任の中心は、善管注意義務違反や任務懈怠である。もっとも、市況悪化や主要取引先の倒産などの外部要因による経営失敗まで、当然に役員個人の責任となるものではない。他方で、破綻が見えている段階での不自然な貸付、関係会社への資金流出、私的支出の会社負担、廉価処分、帳簿不備などは、責任追及を検討すべき事情となる。
帳簿不備も重要である。帳簿や証憑が著しく欠落し、財産の所在や流出経路の解明が困難となっている場合、それ自体が財団回復を妨げる任務懈怠と評価される余地がある。
もっとも、責任追及には、具体的行為と損害との結び付きが必要である。単に「放漫経営であった」では足りず、どの行為が、どの時点で、どの損害を生じさせたかを整理しなければならない。
役員責任追及は、破綻という結果への感情的制裁ではなく、財団回復のための法的手段である。経営失敗一般と法的責任を混同せず、具体的行為単位で責任を評価することが重要である。