第31講 否認権行使を実務でどう進めるか|調査・交渉・訴訟の順番

第31講 否認権行使を実務でどう進めるか|調査・交渉・訴訟の順番

否認権は財産回復の重要な手段であるが、要件を知っているだけでは足りない。実務では、どの行為を対象とし、どの証拠を集め、任意回収を試みるか、訴訟提起に進むかを段階的に判断する必要がある。

最初に行うべきは、否認対象行為の特定である。破綻前の弁済、送金、資産譲渡、担保設定などを時系列で整理し、偏頗弁済、無償行為、詐害行為などの候補を洗い出す。そのためには、通帳、総勘定元帳、契約書、請求書、固定資産台帳、メール等を横断的に確認する必要がある。

次に、証拠収集である。対象行為の存在、時期、相手方、財産減少、相手方の認識などを裏付ける資料を集める。特に関係者取引では、契約書があっても実体が伴わないことがあるため、入出金記録や物の所在まで含めて確認すべきである。

そのうえで、任意回収の可能性を検討する。資料上明白な事案では、まず通知や交渉による返還を求めることが合理的な場合がある。他方で、争う姿勢が明確である場合や財産散逸のおそれがある場合には、早期に訴訟提起を判断すべきである。

訴訟提起の要否は、法的見通しだけでなく回収可能性も踏まえて決めるべきである。否認権行使は、調査、証拠収集、交渉、訴訟の順に進めることで、財団回復の実効性を高めるのである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA